婚約破棄のおかげで魔法研究者になれます、ありがとう皇子様!

アミ100

第1話 突然の婚約破棄

「私はお前よりもお前の義妹いもうとのことを愛しているのだ。だから婚約を破棄する!」


舞踏会の会場中に金髪翠眼すいがんの男の声が響き渡った。


シュバルツ侯爵家の令嬢である私、シェルシェーレ・シュバルツは、今日この国の第五皇子であり私の婚約者でもあるオスカル・アンベシルと共に舞踏会へと来ていた。しかし、彼は今私の義妹であるリナ・シュバルツを抱きしめ、目線だけこちらに向けている。リナの方は抱きしめられたままオスカル殿下の胸に顔をうずめている。


その時点で色々とおかしいのに、さらに彼はずいぶんとおかしなことを口走った。婚約破棄…?


「婚約を破棄…ですか?わたくし、オスカル殿下の仰っている意味が分かりませんわ」

「意味も何も、そのままの意味だ。私はリナと結婚する。だからお前はもう必要ないのだ。」


やっぱり聞き間違いじゃなかったらしい。確かに私みたいな暗めの銀髪に蒼眼そうがんで愛想がない女よりも、リナのような見事なプラチナブロンドの髪にピンク色の瞳を持ち、小柄で非常に可愛らしい性格をしている娘の方が気に入るのも無理はない。


「そんな…わたくしがなにか悪いことをしてしまったのでしょうか…」

「そうでは無い。ただ私はリナ以外と結婚する気は無いのだ。」

「…そういうことならわかりましたわ。それではわたくしはお邪魔なようですので失礼致しますわ。」


こうして私はまわりの貴族たちにジロジロ見られながら、舞踏会を後にした。


しかし、こんなことになるとは。


私たちの国、アンベシル帝国は2000年以上の長い歴史を持ち、大陸一の大国だ。そんな帝国で、我がシュバルツ侯爵家は元々の身分の高さに加えて、この国の宰相でもある現シュバルツ侯爵、つまり私の父親の類まれなる才覚によってさらにその立場を強くしていた。皇族はそのことを踏まえて、侯爵家を取り込むために私とオスカル殿下を政略結婚させようと考えていた。


政略結婚でありながらも、それなりにオスカル殿下とは友好関係を築いてきたつもりだったのに、その結果はこのザマだ。


私はこの状況にあまりにも驚きを隠せないでいた。


ドンッ!!


廊下を走っていると、誰かに思いっきりぶつかってしまった。幸い受け止めてくれたから転ばないで済んだが、お偉い人でキレられたらどうしよう。と思いながら顔を見上げると、そこには高身長で黒髪に金色の瞳を持つ美青年が立っていた。


「おっと、大丈夫か?」


怒ってはない…かな?


「は、はい申し訳ございません!えっと、急いでいるので失礼します!」


こうして私はその場を立ち去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る