第6話 魔術学院の授業①

「カナ、最初の授業って魔法工業理論よね?何するかよくわからないけど楽しみだわ!」


「そうだねマリー、難しすぎないといいんだけど。」


入学してから数日、オリエンテーションや学校探検などを経て、今日から授業の開始である。他のクラスメイトの自己紹介などは聞いたはずだが、40人近くいるので正直よく覚えていない。それもあって私は、私を除き唯一の女子クラスメイトのスオーロさん、もといマリーと特に仲良くしていた。マリー・スオーロはスオーロ男爵の娘で、魔力160、属性土、傾向強光である。髪も目も茶色で、身長157cm、小柄で可愛らしい見た目をしている。ちなみにジークはロバン伯爵家の息子で、ロバン伯爵は騎士団長も務めている。2人とも貴族だから敬語を使うべきかと思ったが、この学院自体割とその辺は適当らしい。


この間ジークともマリーを交えて時々話していたが、彼は自身のコミュ力を最大限発揮し常にクラスメイトに囲まれていたためほどほどにして、あとはそっとしておくことにした。


「では、魔法工業理論の授業を始める。」


さて、魔法工業理論の授業が始まった。いきなり前世の物理法則ガン無視の魔法ありきの世界観に飛んできて内容が理解できるか心配だったが、多少予習したのもあり問題なくついていけそうだ。


ちなみに私は元々勉強は嫌いでも苦手でもない。一応前世では日本で5番以内には入る大学の理工学部所属だった。最もまだ2年生だったので専門的なことはあまりやっていないし、成績もさほどいい方ではなかったが。


「…このように、約100年前まではこのアルファ魔力機構が主流だったが、欠点が発覚したことにより今はもう使われていない。ではこの魔力機構の欠点を発表できる人は?」


シーン……


「いないなら指名しよう。ベルナール君、どうだい?」


「はい。……そうですね、恐らく光極と闇極、それぞれの反応に必要な2種類の魔素をひとつの容器にまとめて入れているので、互いが互いの魔素を阻害し、反応速度を遅らせると考えられます。」


「ではその解決方法は?」


「空間そのものは遮断せず、魔素だけを分割できる素材があれば、魔素を2つの場所に分けられて阻害が防げると思います。」


「正解だ、さすがだねベルナール君。そう、ベルナール君が言ったようにアルファ機構を改良したのがベータ機構だ。これは……」


急に当てられてびびったが、名前と動力源が違うだけでほぼボルタ電池とダニエル電池(知らない人は調べてみるといい)の話と同じだったのでどうにか答えられた。このように前世の知識と被る部分があるのも私がやっていけている理由だ。しかしまたこのように授業を受けることになるとはなんだか感慨深い。

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