妖香さんとのコラボ
『それでは改めまして。……皆さん、こんにちは。まきチャンネルです』
「……皆さん、こんにちはですわ。アニマリ二期生、狐野妖香と申します」
僕達は再び挨拶をする。視聴者数はほんの少しだけ減ってしまったけれど、気にせず始めることにする。
コメント
・ティー姉妹キタァーッ
・ユニット名『二次会ティータイム』(ハーブティー)
・↑さすがに草しか生えないw
・二人共可愛い
・声綺麗だなぁ……
・やっぱりてぇてぇ
・まきたん、妖香ちゃん、よろしく!
「えっと……まずは何をします?」
「そうですわねぇ……あっ、このゲームをやってみたいのですけど、よろしいでしょうか?」
妖香さんが選んだゲームは……無料のフリーゲームだった。アニマリのファンが作ったアニマリの格闘ゲームらしい。
「いいですよ。じゃあ、やっちゃいます?」
「お願いいたしますわ」
早速、妖香さんが送ってくれたURLからゲームをダウンロードして、二人プレイの準備を整える。
「妖香さんは何のキャラクターを使うんですか?」
「もちろん私ですわよ。操作方法は存じ上げませんが、アニマリの中では設定的に最強でしょう。何せ、狐神ですから」
妖香さんが自信満々に答える。確かに彼女の言う通り、妖香さんは設定的に強キャラかもしれない。
コメント
・狐神って強いのか?
・↑凄い力があっても戦いとは関係なさそうな気がする
・↑そもそも妖香ちゃんに凄い力なんてなさそう
・妖香ちゃんが戦う姿か。……見てみたいな
・まきたん、ファイト!
「それじゃ、僕は小春さんを使うね。えっと、キャラクター選択画面でいいんですよね?」
「そうみたいですわ。……どうやら、まきちゃんは格闘タイプを選ぶようですわね」
僕達が操作するキャラクターは、それぞれ違うタイプのものだった。……これなら、バランスが取れるかも。
「よしっ、準備完了しました。いつでも大丈夫です」
「こちらもOKですわよ、まきちゃん」
……いよいよ始まる。妖香さんと一緒にプレイするのは初めてだけど、緊張してきた。
「それでは始めましょうか」
「はい、行きますわっ!」
妖香さんはこちらにダッシュで向かってくる。なので、僕はそれを攻撃ボタンで返り討ちにする。激しいパンチが、妖香さんを吹っ飛ばした
コメント
・始まったw
・小春ちゃんの攻撃速すぎない?
・小春ちゃんの先制パンチ炸裂!
・これはいい勝負になりそうだぞ
・まきたん、いけー
「うふふ、やりますわね。でも、まだまだこれからですわ!」
妖香さんは立ち上がって構える。僕の追撃をガードで防ぎ、チャンスを作る。
「ふっふっふ。どうやらガードがうまくいったようね。その隙を見逃しませんわ」
「……妖香さん、なかなかやりますね」
隙を見せた僕の小春さんに、妖香さんの拳が襲い掛かり…………
『ペコッ』
情けない効果音が流れた。小春さんはほとんどダメージを受けておらず、怯みもせず、吹っ飛びもしない。
コメント
・ん?
・あれれぇ〜(困惑)
・えぇ……
・今の音はなんだ?
・なんか可愛い音したな
・今の効果音、何?
・↑なんだろうな。……てぇてぇ
・てぇてぇの音かな?
「あら、上手くいきませんでしたわね……」
妖香さんは悔しそうに呟き、もう一度攻撃する。……しかし。
『ペコッ』
再び情けない効果音が流れた。小春さんはほとんどダメージを受けず、怯みもせず、吹っ飛びもせず。
コメント
・またてぇてぇ音がwww
・今度はちゃんと俺の腹筋にダメージ入ったな
・やっぱりてぇてぇ音だったか
・今のは何の音だろ?
「ちょっと、何なのです? このパンチは。クソ雑魚パンチやめてくださいよ。ほら、なんかこう、神力みたいなのを拳に込めて殴るとかそういう感じにできませんこと?」
「えぇ……」
妖香さんが無茶振りしてくる。確かに、格闘ゲームによくある演出だろうけど……
コメント
・おいw
・流石にそれは無理だろw
・まぁ、てぇてぇ音鳴ったから許してやろうぜ!
・妖香ちゃんのノリの良さ好き
・妖香ちゃん、ピンチ!
・妖香ちゃん、体力が減っているよ。狐野妖香の特殊コマンド『睡眠』で体力を回復させるんだ
コメント欄の指摘通り、妖香さんの体力ゲージが少しずつ減っている。このままだと彼女は負けてしまうかもしれない。
「仕方ありません。ここは一旦、回復を挟むことにしますわ」
妖香さんは僕から離れ、少し距離を取るとその場で寝始めた。その間どんどん彼女の体力が回復していく。……これは、つぶさないとまずい。
「えいっ」
僕は攻撃するが、小春さんが与えるダメージを妖香さんの回復力が上回って、ほとんど意味がない。
「どうやら、私の勝ちのようですね。このまま攻撃しても……あれ、ですわ? 回復が止まってしまったの。どうしてかしら? 起きてください、私」
妖香さんが目を覚まさないまま彼女の回復が止まってしまった。その為、僕の攻撃のダメージを受け続けている。一方で、小春さんは未だに無傷のままだ。
「あ、あの……。妖香さん? そろそろ、起きる時間ですわよ」
「これはチャンスのようですね。えいっ!」
僕は容赦なく攻撃し続ける。
コメント
・まきちゃんの鬼畜プレイw
・容赦ねぇな
・まきちゃんはSなのかな?
・妖香ちゃん、死んじゃダメだよ
・これは酷い
・妖香ちゃん、早く目覚めるんだ!!
・狐野妖香の特殊コマンド『睡眠』は強力な回復効果がある代わりに高確率で狐野妖香が『寝坊』してしまうんだ。だから、迂闊に使うと眠っている間に攻撃され続けて負けちゃうよ。
・↑それ先に言えw
・↑寝坊は草w
・↑ゲームの中でも寝坊するのか……
・これぞ真のてぇてぇ
・てぇてぇ(物理)ってか?
「あ、やっと起きましたわ。……でも、私のクソ雑魚攻撃では勝ち目がありません。何とかなりませんの?」
ようやく目を覚ました妖香さんが困り顔で訴えている
・妖香ちゃん、頑張って!
・そもそも、このゲームの妖香ちゃんはハーブを吸って攻撃を強化するのが基本の動き
・ハーブを吸わなきゃまともに攻撃できないよ
・ハーブを吸うんだ
・妖香ちゃん、頑張れー
・狐野妖香の場合ハーブを吸って攻撃強化、ハーブティーを堪能して『寝坊』の確率を下げる。これを意識するだけで勝てるようになるぞ
・↑+LRでハーブを吸う 下+LRでハーブティーを飲む 上下+LRで寝る 寝る+高確率で寝坊
「えっと、このボタンを押せばいいのかしら?」
「あっ……」
コメントで教えられたとおりに妖香さんがボタンを押すと、ゲームの中の妖香さんが葉っぱを取り出し口に加える。どうやらハーブを吸ったようだ
「ふぅ。どうやら、上手くいったみたいね…………って、何なんですの、私の能力は! これではまるで、私が芸人キャラみたいじゃないですか!? もっとこう、狐神であることを活かした必殺技とか、そういうのはないんですか!?」
コメント
・あるわけないだろw
・何言ってんだこいつ
・自分でも薄々気づいていたんかい
・妖香ちゃんはもう立派な芸人だよ。自信を持って
・妖香ちゃんのネタ見せて欲しい
その後、僕が勝利した。ゲームの得意な僕が強いキャラを使っていて、それに対して妖香さんは初見プレイでトリッキーなキャラを使っていたのだから当然の結果のように思える。
「ぐぬぬ……! まさか、こんなことになるなんて……!」
悔しそうに歯ぎしりする妖香さん。……正直、ちょっとやりすぎてしまったかな。
「妖香さん。次はもう少し優しくします」
「手加減は結構ですわ。さあ、行きますわよ」
この後も何度か戦い、妖香さんが僕に勝つことはなかった。ただ、その度に妖香さんは上達し、僕に向かって笑顔を見せてくれるようになった気がした。
「いやぁ、楽しかったのですわ」
「僕も、妖香さんと遊べてよかったですよ」
「……また、一緒に遊びましょうね」
「……はい」
妖香さんが少し頬を赤くしながら、そんなことを言ってくる。
コメント
・妖香ちゃん、可愛かったよ
・まきちゃんもなかなか良かったぜ
・まきちゃん、可愛いよ
・二人とも仲良しだった
・妖香ちゃんがデレてる
・これはてぇてぇ
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