第38話 ボスとの戦闘

「おい坊主! 本当にこっちなのか?」


 ボスは少しイラついている様子だ。


「ここを抜けた先に居るよ!」

 

 そう言って、狭い道の丁度中央辺りに来た時、岩壁に対してネビアは[アイススパイク]を発動した。


「なんだ!?」

「ボス、上から岩が!」


 ネビアのアイススパイクによって岩壁が破壊され、突起している岩や大小さまざまなが落石が山賊とネビアを襲った。


 そして、ボスが頭上を見る為にネビアから視線を外した瞬間、一瞬で[閃光脚]で後退しながら、

 [ファイヤエクスプロージョン]も複数回発動し、更に崩落させた。

 山賊の居た場所は砂埃が舞い状況がしっかりと見えないが、ゴロゴロと大岩が落ちてきており、大惨事になっているように見える。


「全員やりましたか……?」


 ネビアは確認する為に、[ライトウイスプ]を描き、砂煙の方へ近づいた。


 すると……


――ブオン!


 と風の音が響き、砂煙が上空へと飛んでいった。

 そして、その中心には人影が見えた。


(ネビア)――アイススピア!


 ネビアはそれを視認した瞬間、即座に[アイススピア]を放った。

 しかし、それは人影の前でパリンと音を立て砕けてしまった。


「まさかこんなガキが魔法を使えるなんてな……」


 そういうボスは背負っていた斧を手に持っていた。

 それは全長1メートル程あり、柄は70メートルはある。

 そして、刃は大きめの三日月型の刃が片側に1枚、反対側にもう1枚あり両刃になっている。


 柄と両刃の部分には淡い緑色の光を放つ石が埋め込まれており、

 一目でそれが特別な武器だと分かる。


「まだ生きていましたか……」


 ネビアはまた即座に[アイススピア]を放った。

 その瞬間、ボスは斧を扇のように下から上に仰いだ。


「な……!」


 斧を仰いだ場所から、風中級魔法[ウインドウォール]が発生し、[アイススピア]を打ち消した。


 風中級魔法[ウインドウォール]

 ウィンドに形状変化を追加

 下から上に登る風の壁を作る。矢や弱い火・水魔法等無効化できる。


「お前も魔装具使いか? だが、その程度の[アイススピア]じゃ俺の[風魔の斧]はとめられねえ!」


 ネビアは魔装具という言葉は初めて聞いたが、ボスの持つ[風魔の斧]のような特別な武器がそうなのだろうと瞬時に理解していた。


「厄介ですね……」


 ネビアは対人で戦士とまともにやり合うのはこれが初めてである。

 気を引き締め直し、目の前の敵に集中した。


「落石の件、どうやったかはわからねえが、お前は生かしては帰さねえ。残念だが、ここで死んでもらう」

「ただではやられませんよ……!」

「はっ! 盾一枚で何が出来る!」


 ボスはそう言って[閃光脚]で詰め寄り、ネビアに向かって斧を上から振り下ろした。

 ネビアはそれをしっかりと回避した。


「今のを避けるとは……な!」


 ボスはそのまま垂直に斧を振ってきたが、盾でいなしながら回避し――


「盾を持ってて命拾いしたなあ!!」


 再びボスが真っ直ぐに斧を振り下ろそうとしてきたが……


(ネビア)――ファイヤエクスプロージョン!


 振り下ろす動作の時、ボスの腹ががら空きだった為、ネビアはそこへ[ファイヤエクスプロージョン]を放った。


――ボンッ


 その音と共にボスは後方へと吹き飛んだ。


「は……?」


 ボスは一撃で既に立ち上がれない程のダメージを負っていた。


「最後に一つ聞きたいんですが……いっぱい居た中で貴方が一番強いんですか?」

「ごふ……当たり前だ。俺がここ一帯を縄張りにしている山賊の頭だからな……!」

「そうですか……僕たちは少し、怯え過ぎていたのかもしれません」


 ネビアはそう言いながら[風魔の斧]を手に取り、ボスに再び[ファイヤエクスプロージョン]を放った。

 そして、ボスは魂片へと還っていった……。


「戦士としては、フィアンの百分の一の強さでしたね……」


 そうしてネビアはフィアン達の元へと戻っていった。


 トゥーカには山賊三大勢力という迷惑な連中が存在し、治安を悪くしている。

 先程倒したボスがその三大勢力の一つだった事を、ネビア達はまだ知らない……。


・・・

・・


~デバシーmemo~


魔装具[風魔の斧]

全長:約1メートル

重量:約5キログラム


刃の部分

大きめの三日月型の刃が片側に1枚、反対側にもう1枚の両刃

刃の表面には風のような模様や符号が刻まれており、使うたびに淡い光を放つ。

淡い緑色の光を放つ石が刃に埋め込まれている。


柄の部分

金属で出来ており70センチメートルほどの長さ。

刃と同じく柄の先端部分に緑色の石が埋め込まれている。


下から上に扇のように振る事で[ウインドウォール]を発動できる。

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