間話2 アルネの軌跡
――フィアンとネビアと別れてから約1年後……
―― 中央都市 剣と魔の学園
剣と魔の学園は高い石の城壁に囲まれており、入場できる門は二カ所しかない。
城壁を通り抜けると広大なグラウンドが広がっており、その先には30階建てくらいあるであろう大きな建物が3棟そびえ立つ。
また、それぞれの建物の前には10m程の巨大な石像が建っており、
刀剣を構えた男性の石像、魔女の帽子を被った女性の石像、
中央には大剣を持った男性の石像が設置されている。
アルネはその石像を懐かしむような目で見つつ、そのまま中央の建物へと足を運んだ。
「理事長のドゥーノなら師匠の場所をしっているじゃろう。聞いてみるとしよう」
そうして進んでいくと、入口には一人の男性が受付として待っていた。
「どちら様でしょうか? ご用件は?」
「私はアルネじゃ。理事長のドゥーノに会いに来たんじゃが……アルネが来たと言えば伝わるはずじゃ」
そう言うと、受付の男性は少し困り顔をしながら、
「ドゥーノさんは5年前に事故で亡くなりました。今は副理事長だったレッド様が理事長です」
「ドゥーノが死んだ!?」
アルネは驚きを隠せなかった。
と言うのも、ドゥーノはドワーフ族で元上級守型剣士だった。
丈夫が取り柄の男だったのだ。
「事故って何じゃ? あいつがそんなので死ぬわけないじゃろ!」
アルネは受付の男性に食って掛かったが、男性は詳しくは知らないの一点張りだった。
「やめてくださいアルネさん。レッド様なら知っているかも知れません……丁度理事長室に居ますので取り次いでみます」
そう言って受付の男性は奥へと引っ込んだ。
「ドゥーノ……お主が死んだなんて信じられんよ……それにレッドなど聞いたことがないぞ」
しばらく待っていると、先ほどの受付の男性が戻り、
「今ならお会いできるそうです。どうぞ」
とアルネを昇降機へと案内した。
――最上階 理事長室
「貴方がアルネ殿ですか?」
「そうじゃ。お主がレッドか」
その姿は若い青年だった。
エルフ族特有の長い耳と白い肌で、華奢な身体つきだ。
髪型は左右非対称の前髪でアシメバング。
まるで血のような紅色の髪色が妖艶な雰囲気を出していた。
「そうです。ドゥーノさんの死は残念でした……ですが心配ありません。この私、レッドが全ての業務を引き継いでおります。何なりとご用件を……」
アルネは直感ではあるが、レッドを信用する事が出来なかった。
「いや、大丈夫じゃ。久しぶりに元気にしているか様子を見に来ただけじゃ。亡くなっていたのは残念じゃ」
アルネはそう言い残し、部屋をでた。
・・・
・・
・
――瘴気の山の麓 魔物の抜け道
アルネは中央都市を後にし、とある場所に来ていた。
「家に居ればいいんじゃが……」
しばらく進むと、家が二軒建っていた。
一つは立派な2階建ての家だが、もう一つは土で出来たただの小屋だった。
「小屋が増えとるな……」
アルネは自分の記憶にある立派な建物の前に立ち、ノックをした。
「師匠ー! いますかー!」
しばらくノックをすると、ガチャリと扉が開いた。
「おやアルネ! 戻ってきたのか」
扉から顔を出したのは、白髪ロングヘアの初老の女性だった。
「おお、エレーナ様! お久しぶりです!」
「50年……ヒト族からすればお久しぶりか。しかし、ヒト族なのに姿が変わってないな?」
「ええ! 実は覚醒天族になる事が出来たんじゃ! 師匠はおりますか?」
アルネは自慢げにエレーナに言った。
「エルダンか。あっちの小屋で住んでる」
そう言って、エレーナは土小屋を指差した。
「あれ、何であの小屋に……」
アルネがそう言うと、
「別居中さ。ノックして出なければ扉をぶち破ると良い。私が作った小屋だ、いつでも直せる」
と言いながら扉を閉めて戻っていった。
50年振りだと言うのに、つい最近あったかのような態度だが、
天族の寿命は長い……これが普通だとアルネは理解していた。
アルネは小屋の方へ向かって、扉をノックした。
すると、扉は水で固めた土程度の硬さで非常に脆く扉をそのまま壊してしまった。
「こんな力で壊れてしもた……エルダン師匠ー! アルネが戻りました!」
気を取り直して、アルネはその場で声を上げた。
「おおアルネ! 戻ったか」
白髪のオールバックで顎と口ひげを生やした初老の男性が家の奥からやってきた。
「師匠! ついに天族になりました! 50年前の約束……覚えてますよね」
「ふっ……もちろんだ。アルネ、やはりお前は根性があるな! 早速修行をつけてやる」
「有難うございます師匠!」
アルネはそういってエルダンに感謝した。
そして、
「師匠……ドゥーノが死んだこと……ご存じですか?」
と問うた。
エルダンは少し険しい表情となり、
「聞いてねえな。まずはその話をしてくれ。さぁ中に入りな」
とアルネを招き入れた。
・・・
・・
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