第42話、酒吞童子・・・
そうして自分は寝てしまったのであろう、夢を見ていたのである。いや、夢を見ているという自覚はかなり危険だった気がするけど確実に夢を見ていると思っていた。そんな時に背後からとても嫌な空気が漂ってきたので自分は何が待ち受けても夢だから何でもありだなと思いで化け物でもかかってこいと思いで振り返った。
そこにいたのはもう一人の自分であった。最初は鏡かなと思っていたが自分と全く同じで鏡を見ている気分であったが急に鏡だと思っていた自分が自分に対して話を始めてきたのである。
「どうも初めましてと言うべきかな、真里谷信政。まさかこうして会えるとは夢にも思わなかったよ」
「それは別にどうもでいい、お前は何者なのだ。名前ぐらいは名乗るがいい、それとも名前でもないのか」
そう自分が言うともう一人の自分が笑いながらそこまで知りたいのであれば教えてあげることにしようと言って名乗ってきた。
「俺は酒吞童子、前世のお前と思ってくれ。それにしても今世の俺は何とも言えないほどに情けないな。それでも俺の来世かよ・・・そしてその見た目は男らしくならなくて本当に残念だ。生まれ変わったらそこぐらいはなんとかしてほしかったのだけどな」
自分はこれを聞いて驚きはしなかった、ある程度は予測できていたからそれでも自分の前世が人ではなく鬼だったとは少し残念であるがな。それはともかくなんで自分の前に現れたのかと思いで聞いてみた。
「それは簡単なことだ、情けないお前に変わって俺が見本を見せてやろうと思ってな。しばらくの間、体の主導権をこちらに頂こうと考えてな。別に俺はお前でありお前は俺であるから問題はない」
それを聞いた自分はとても嫌な感じになった、少なくても良い展開にならない事だけは間違にない。そう思いながら待っていると自分に対して攻撃をしてきたのである。まさか、持っている刀を抜いて攻撃をしてきたので自分も抜いて応戦をした。
しかし、必死に勝負をしてもぜんぜん勝てずに押される一方であった、そうして自分は斬られて打ち倒された。自分はそれでもこの者に主導権を譲ったらどうなるかわかった者ではないと思いながら戦おうとした。
けれども刀を完全に壊されて酒吞童子がこちらに迫ってきて自分に対して
「まあ、良い結果になるようにしてやるから安心して眠ってくれ。起きた時には今よりも完全に良い感じにしてやるからよ。それがお前が望む結果かどうかは別として・・な」
そう言われながら自分は刀を振り下ろされてそのまま意識が無くなるのであった。この後どうなったのかは自分は知る由もなかった。
久しぶりに現世に戻ってこれたけど本当にひどいな、この男が俺の来世だと思うと悲しくなるな。もう少しは風格があったら嬉しいだけどな、でもこれから少しは風格が出るようにさせてやるかと思いで自分は周りの様子を感じていたが、いきなり戦闘が出来るとはこれほど嬉しいことはない。
そうゆう思いで外に出てみるとそこには見知った顔がいたので俺は声をかけたのである。俺よりは弱いがそれでも名前が残るほどの物の怪がいたので楽しそうな表情で二人に向かって
「久しぶりだな、土蜘蛛、牛鬼。二人ともそろって俺様の首が欲しいのか。そんな軍勢を連れてきて俺様を倒せると思っていたのか・・・その甘さを恨むことにするのだな」
それを聞いた土蜘蛛と牛鬼は驚きながら俺に対して声をかけてきたのである。
「どうしてだ信政、もしかして前世の記憶でも蘇ったのか」
「すみません、酒吞童子様。そろそろ我はお暇させていただいても良いですか」
「おいおい、せっかくの再開だ。楽しい宴(殺し合い)を始めようぜ、土蜘蛛。ついでに牛鬼よ、不甲斐ない俺様の来世に変わって体を少し貸してもらっているだけだ」
そう言うと土蜘蛛がものすごい勢いで逃げ出したが俺は逃がすわけないだろうとの思いで先回りして「さあ、宴を始めようか」と言うと二人とも泣いていたがそんなことはお構いなしで攻撃を始めるのだった。
もちろん牛鬼と土蜘蛛に従っている物の怪たちも壊滅させた。そこそこ楽しめたからまあいいかと思いでこの来世の俺が何を考えていたのかを見ているとなるほどなと思いながらそれでは諏訪大社にでも向かうことにするかと思いで歩き出した。
それにしても来世の俺はこんな鈍感なのかと思いで歩いて信濃の国に入った。ミシャグジに何を仕返しをしてやろうかな。あの女は血を分けた者だが嫌いだ。まあ、そんなことを言ったら親父もお袋も大嫌いだが。
さて、信政のふりをして親たちも地獄に落としてやろうかな。そして信政に害する者たちもすべてに仕返しをしてこの俺様に対して舐めたことをしたことを後悔をさせてやるよ。
特に親どもは生まれてきたことを後悔させるぐらいに地獄に落とさないと気が済まない、本当に地獄に落としてやりたいものが多すぎるぜ。幸いなことに神々がほとんど死んで動けない以上は最高の展開だ。
残りの神々も倒せばこの国は俺様の思いのままだ、この国に俺様に勝てる奴はいない。その後は俺様のしたいことを終えたら来世の俺に体を返してやるかな。
さあ、神々に日ノ本で俺を害をなした者たちよ・・・復讐の時間だ。どれだけ泣いても俺様はやめるつもりはないからなと誓いをした。泣いても無表情しながら笑って地獄に落としてやるよ、鬼の総大将として・・・な。
その後にどうなるか考えるだけでも笑いが止まらずに俺は月夜の森の中で一人笑い続けているのであった。
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