第30話 絶対に、渡せない②(葵視点)
それからは、辛いことがあると、あたしは夜の公園へ行くようになった。
五号棟の夕真くんは、あたしが行くといつも居た。
そんなにお父さんとお母さんが嫌いなのだろうか。ちょっと心配になっちゃうくらいだ。
夕真くんと会うのが楽しみになるまで、そんなに時間は掛からなかった。
ってか、二回目くらいからもう完全にウキウキしていた。
あたしは別に鈍くない。もうとっくに自分の気持ちに気づいていた。
間違いなく、あたしは夕真くんのことが男の子として好きだ。
と、わかった時点で「ゆうちゃんって呼んでいい?」って言って、あたしは強引に彼のことをこう呼び始める。
同時に、夜だけじゃ物足りなくなって、昼も、あたしはゆうちゃんと遊ぶようになっていった。
これは「恋」で間違いないと思う。
でも、一体彼のどこが好きなんだろう、って何度も考えた。
いっぱいいっぱいだったあたしを優しくギュッとしてくれたこととか。
あたしのことを考えて、息抜きができるように誘ってくれたところとか。
うん。あんなことされたから、あたし、あっさり落とされちゃったな。今考えても簡単な女子すぎる。
でも、もしかするとあいつ、とんでもないスケコマシなのかもしれない。気をつけないと。
それに、あの可愛い顔は間違いなくあたしのツボを突いている。
ストライク中のストライク。見ているだけで頬が熱くなる。
じゃれてますよー、って装って、何度も触って、ほっぺをグニグニして、両手であいつの頬を弄っているうちにキスしてしまいたい衝動に何度も襲われた。
これってダメなことなのかな、と罪悪感がずっとあって抑えていたんだけど、小学校五年生くらいになった頃、ついに気持ちが止められなくなった。
「ねえ、ゆうちゃん。キスってしたことある? 大人の人たちがするんだって」
「キス? 何、それ」
「こうするの」
あたしは、身をもってキスを教えてあげた。
って言っても、やり方なんてよくわからない。
行き当たりばったりでゆうちゃんの唇をはむはむしたり、舐めたりしてみる。ばくんばくんとうるさい心臓のせいでどんどん頭が真っ白になって、もう自分がなにをしているのか訳がわからなくなった。
キスしたまま舌をぐーっと伸ばせば、ゆうちゃんの口の中に入るなあ、なんて思いついて、試しに入れてみる。あたしの舌とゆうちゃんの舌がねちょっと当たって……。
これはヤバかった。まるで体に電気が走ったみたいになる。ゆうちゃんは動揺して放心状態で、あたしにされるがままになっていた。それがまた癖になりそうで……。
それからしばらく、あたしは狂ったようにゆうちゃんとのキスごっこに夢中になった。
その他では……あの被虐的な態度だろうか。
小学校も六年生になった頃。二人で遊んでいたある日、取っ組み合いから、ふとゆうちゃんに馬乗りになった。
なんか無性にウズウズッとして、何の気なしに、くすぐってみる。
そしたら、虐めれば虐めるほど、「もっとやってほしい」と言っているかのような顔をする。それがまた、あたしの頭を狂わせていって……。
気がついたら何十分間も続けていた。
それからは、くすぐることを目的に取っ組み合いをするようになった。高学年になるとあたしのほうが完全に体格は大きかったから、ゆうちゃんからマウントをとるのは簡単だ。
そんなことをしているうち、ゆうちゃんの股間のあたりで何か固いものがあって、あたしのお股を突き上げているのに気づく。
ジーンズとかの時には気付きにくかったけど、あたしがスカートで、ゆうちゃんが柔らかい布地のスウェットみたいなのを履いている時には、それがダイレクトに当たってきて、よくわかった。
小学校高学年だったから恋愛には俄然興味があったし、ネットなんかで調べたりもしていたから、あたしはそれが何かわかってた。
子供ができちゃうやつだ。私自身が子供なのに。
これ以上は越えてはならない一線な気がする。今のままだとその一線を軽く飛び越えてしまいそうだ。そんなことになったらお父さんとお母さんから決定的に見捨てられそうだったので、さすがのあたしも少し怖くなった。
でも、ゆうちゃんとじゃれるのは、楽しくて止められない。
反応が良くて、なんかビビッと来るというか。深みにハマると抜け出せなくなるような、もっともっと虐めたくなるような、ヤバいとしか言いようのない逆らい難い中毒性が体も心も蝕んでいく。
あたしはこの可愛い幼馴染に、完全にどハマりしていた。
そんなあたしのお気に入りになったゆうちゃんは、たまに弟の晴翔を連れてくることがある。
晴翔はすごくカッコいい感じになりそうな素質があるんだけど、あたし的にはなんか違う。
晴翔はことあるごとにあたしのことを見つめてきて、だから、あー、間違いなくこいつはあたしのこと好きだな、とすぐにわかった。
でも、あんまり虐めたくならない。あたしはもっともっと虐めたいのに。とことん虐めて、壊れちゃったらどうしよう、ってくらいに虐めたいのに。
きっとあたしは、その気持ちを満足させてくれる、されるがままになっちゃう可愛い感じの男の子が好きなんだろうな、と思った。そんな趣味になっちゃったのは、もしかするとゆうちゃんのせいかもしれないけど。
なのに、当のゆうちゃんはあんましあたしのことを見ない。見てくれない。
いや、見てるのだけど。あたしのことが好き、って思えるような見方をしない。あたしはそれが癪に触ったし、不満だった。
あたし、学校ではすげーモテるんだぞ!
それから、あたしの「絶対にゆうちゃんを振り向かせる!作戦」が始まる。
まず手始めに、あたしはゆうちゃんに「大好きだ」って伝えた。
告白だ。告っちゃったのだ。オーソドックスでありながら一番効果的なはず。小学校六年生だし、早い子だともっと早くに告白してる。あたしも、そろそろ告白もいいんじゃないかなぁ、なんて思ったんだ。
大人たちがやるように、付き合ってくれたりしないかな、と思ってドキドキワクワクした。
答えが返ってくるまでの間、あたしは高鳴った胸が破裂しそうになるのを必死で耐えた。
だけど、ゆうちゃんは「うん」とだけ言って、正直、無反応に近かった。
家に帰ってから、ベッドに突っ伏して泣いた。
勇気を出したのに。
どれだけ勇気が要ったか、君はわかってるの?
あたしは、それからも、めげずに何度も何度もゆうちゃんに「好き」を伝えた。
でも、相変わらずゆうちゃんの反応は薄い。
何これ? 好きじゃないってこと?
こんだけ言ったんだから、あたしの気持ちは伝わってるよね? その上でこの反応って、やっぱ好きじゃないってことなのかな。
どうして? あたしはクラスどころか学年でも人気の女子だよ? その女子から好きだって告白されてるのに、君は何なの!?
もしかして、カッコいいイケメンタイプの晴翔のことをあたしが好きじゃないように、ゆうちゃんも、もしかしたら好みのタイプが私ではないのか。
やば。マジでショック。フラれるなんて。
どうでもいい男子には死ぬほどモテるのに、本命にあっさりフラれるなんて。勉強がうまくいかないなんてもはや比じゃない。
なんか泣いちゃいそう。つらたん……
どうする? 諦める?
諦められる……?
嫌だ──────っっっっ!!
どうにかしないと。なんとかして、ゆうちゃんを振り向かせないと!
真正面から好きだと伝えてダメだったんだ。なら、正攻法では厳しいのかな……
……そうか。そうだ。
なら。あたしらしく、ゆうちゃんを虐め抜いてやる。
どうしようもなく引き止めたくなるくらいに。
あたしという女の子を、ゆうちゃんの心に刻みつける。ゆうちゃんが、あたしを放っておけないようにする。強制的に!
あたしがとった手段は、別の男子に気があるふりをして、ゆうちゃんを嫉妬させまくることだった。
あたしはゆうちゃんの前で他の男の子とよく話したり、あえて体の距離感を近くしたり、スキンシップしたりしたんだ。
そんなことをしながら、あたしはゆうちゃんの顔色をこっそり窺う。
なんと、ゆうちゃんは辛そうな顔をしていた。その顔を見ると、あたしはなぜか体がフワフワして気持ちよくなった。
へへ。成功成功! ほらほら、やっぱあたしのこと好きなんじゃん!
……そのくせ、なかなか好きだって言ってこないな。
くそぅ。見てろ!
成功体験が、あたしをどんどん調子に乗らせた。
あたしは、つい勢いで、中学校に上がってすぐ、別の男の子と付き合ってしまった。
ここまでするつもりじゃなかったんだけどな。
でも……そうだ。このくらいしないと。
誓ったじゃないか、徹底的に虐め抜くって。きっと、これでゆうちゃんは居ても立っても居られなくなるはず!
どう? あたし、別の男子と手を繋いで歩いてるんだよ?
ほら。早くあたしのことを連れ去らないと、手遅れになっちゃうよ??
ゆうちゃんの視線が、あたしの体中に突き刺さる。
やっぱりそれが気持ちよくて、あたしはすごく満足した。
あの表情。きっと、すごく傷ついてる。
ごめんね。でも、君が悪いんだ。どうすればいいか、簡単なんだよ?
が、思わせぶりな態度をしているうち、現に付き合ってる彼氏からキスをされた。
……あれ?
あたし、ゆうちゃんのことが好きなのに。
どうしてこの子とキスをしてるの?
……でも、まあ。
付き合ってるんだし、しょうがないか……。ファーストキスはゆうちゃんに捧げたんだし。
心はゆうちゃんに向いたままだから、大丈夫だ、きっと。
あたしは、持て余した現状を自分自身に納得させるため、こう思うことにした。
ゆうちゃんには、「イケメンでカッコいい人が好き」だって伝えた。
ゆうちゃんから離れて別の人と付き合ったのはカッコいい人が好きだからで、あたしの趣味はゆうちゃんみたいな可愛い系じゃないんだよ、断じてあたしは可愛くてショタっ子でされるがままになっちゃうドMなゆうちゃんに心の奥の奥までぐりぐりされてズキュンってなっちゃってるわけじゃないんだよ、と暗にアピールするためだ。
今の彼氏と付き合ったとき、友達にめちゃくちゃ羨ましがられた。彼は女の子に人気の男子だったからね。
最近、ゆうちゃんのせいで傷心続きだったから、優越感が全身に染み渡っていく。
ああ、気持ちいいなぁ……
あたしは、ゆうちゃんが振り向いてくれなくて傷ついた心を、優越感で癒すようになった。
その彼氏と別れても、次の彼氏はすぐにできた。その次も、その次も。
でも、大丈夫。あたしの心は、ゆうちゃんのままだから。大丈夫……。
男子たちといい雰囲気になると、すぐに唇を奪われた。まあ、これはあたしが誘っていると言っても過言ではないか。
例えばこの男の子。ちょっとこっちから体を引っ付けていくと、すぐに気があると勘違いするんだよね。それから、間近くでじっと見つめてやると……。
キスしてくるはず。んっ……ほら、こんなふうにね。
とかやってるうちに、一生の不覚は訪れる。
彼氏の部屋に、不用意にも行ってしまったのだ。それに、自分の性欲のことも侮っていた。
いろんな流れの影響に全く抗えず、初体験は終わった。
気持ち良かったといえば良かったし、してる最中はムラムラしていた。
だけど、終わったあとベッドに寝転がって見上げた天井。頭の中に浮かんだのは、ゆうちゃんの顔。
大丈夫。大丈夫……。
あたしの心は、ゆうちゃんに。
ゆうちゃん……
ああ。やっぱり初めては、ゆうちゃんがよかったな。
ゆうちゃんなら、どう愛してくれただろう?
こいつみたいに、ガッツいて終わりだっただろうか。
ゆうちゃんが相手なら、あたし、どれだけ欲情したかなぁ。
きっと、ゆうちゃんのことを壊しちゃうくらいに興奮して理性を飛ばしたに違いないよね。
そして、ずっと恋焦がれた、大好きで大切なあたしのゆうちゃんと、精一杯愛し合って、心がたっぷり愛で満たされて……
どうして……こうなっちゃったんだろう。
仰向けになって天井を見つめるうち、目頭が熱くなっていることに気づく。
あたし、泣いてたんだ。全然気づかなかったや。
「どうしたの? 感動するくらい気持ち良かった?」
バカみたいなことをほざく彼氏に、あたしは指の甲で涙を拭ってニコッとしてやった。
どうせこんな奴、あたしの気持ちなんて一生わかることはない。
やっぱり、ゆうちゃんだ。あたしには、ゆうちゃんしかいないんだ。
もう悠長にやってる場合じゃない。
しかしやり方はそんなに間違っていないように思う。あたしが他の男子と付き合ったら、その度にゆうちゃんはひどく傷ついた顔をするから。
心にかなりのダメージを受けているのは間違いない。
もう少しのはず。一度も好きだと言ってくれないけど、ゆうちゃんは、絶対にあたしのことが気になってる。きっと好きでいてくれているはずなんだ。
あと、もうひと押しで。
トドメが必要だ。
あたしは、晴翔と付き合うことにした。
ってか、これからアプローチするんだけどね。まあ、いけるっしょ。
晴翔も、ずっとあたしのことが好きだったクチだからね。
一つ心配なのは、ゆうちゃんが晴翔を嫌いなこと。理由はよくわからないけど……どうやらかなり嫌ってるみたいだ。
だから、もし仮にゆうちゃんがあたしのことをすごく好きでいてくれたとすると。
それは飛び上がるくらいに嬉しいんだけど、晴翔とあたしが付き合ったって知ったら、さすがに刺激が強すぎないかな。
まさかとは思うけど、自殺……とか。
…………………
まあ、大丈夫でしょ。
うん。きっと。
……でも。
もし、仮に。万が一、だけど。
そうなったら?
あたしは、一生後悔すると思う。
後悔すると思うけど。
あたしのせいで、死にたくなるほど悶え苦しむゆうちゃんを想像すると。
ああ。
見たい。
自分から死を選ぶ一歩手前のゆうちゃんが、見たい。
行為が終わったベッドの上で、両腕で自分の体をキツく抱きしめるようにする。爪が腕に食い込んで、血が出ていた。
あたしはすぐさま行動した。
晴翔は、一瞬で落とせた。ちょっと深めに接した感じ、どうやらこいつはゆうちゃんへのコンプレックスの塊らしいことがわかった。ま、それはあたしのせいみたいだけど。
だから、あたしと付き合うのは、ゆうちゃんへの当てつけでもあるようだ。あたしたちは、互いを利用し合ってるというわけだね。
「空のまち」から出たところで、晴翔と待ち合わせをした。
晴翔は、我慢できなさそうな感じでキスをしてくる。
どいつもこいつも、ガッツいてくるよなぁ。
そうじゃないんだよ。
あたしに襲わせろ、って言ってんの。
それができるのは、ゆうちゃんだけなんだよ……
「葵。兄ちゃんが見てる」
キスを終えた晴翔が、あたしの耳元で囁く。
誰が呼び捨てしていいっつった? 殺すぞ。
それにね、言われなくても知っている。ゆうちゃんが大体いつも何時頃に登校してるかなんて、当然の如く把握してるから。
あたしは、振り向いてゆうちゃんの顔を確認した。
「────っっ!!」
無意識に、息を呑んだ。
涙を落とした彼の表情は、あたしの想像よりも遥かに、絶望の底に沈んでいた。
死ぬ。これは死ぬ。きっと死んじゃう。
背中を押しすぎた。力加減を間違えたか。
でも……もう手遅れだ。それに、あたしだって、もう……
ここまで強いのは初めての感覚だった。
虐めれば虐めるほどに高まる快感でイってしまいそうな体を必死で抑えつけ、あたしは晴翔と学校へ向かった。
トイレに行きたいと晴翔へ言って、学校へ着く前に公衆トイレへ入る。
別にトイレなんてしたくはなかったが、今すぐに発散しないと、発狂して何かが勝手に暴発してしまいそうだったからだ。
そうだろうとは常々思っていたが、あたしは虐め抜かないと気持ちよくなれないことが完璧に証明された。脳が隅々まで開くようなこの感覚は、彼でしか味わえない。
やっぱり、あたしにはゆうちゃんがピッタリくるんだよな……。
あたしを思いやる心も、あの可愛い顔も、あたしを気持ち良くさせるMっ気も。どれをとっても完璧だ。絶対に、ゆうちゃんのことは手放せない!
家に帰ってからも、絶望に沈むゆうちゃんの顔を思い出すとついムラムラしてしまう。あたしはゆうちゃんが自ら命を絶ったりしないことを祈りながら、布団に潜って罪悪感に悶えつつ、異常に高まる快感を貪りながら何度も何度も慰める。
あの可愛い顔が絶望に歪むところを思い出すだけで下腹部が熱くなって、これいつになったら収まるのか、ってフワフワした意識で考えながら先の見えない無限ループに堕ちていく。
ほとんど拷問だ。全く、人を悶えさせるのはいいが、自分が悶えさせられるのはホント嫌だ。
悶々としながら過ごしていると、学校にいるときに、クラスの友達──玲奈から奇妙な噂を耳にした。
ゆうちゃんが、ものすごく可愛い女の子と相合傘をしていたというのだ。
その話を聞いた瞬間、体中の血が逆流した。
たとえじゃなく。
たぶん、本当にそうなったんじゃないか?
あたしは、反射的に教室の机を思いっきり蹴っ飛ばした。
ガシャンガシャンと大きな音を立てて散らばる机や椅子に、周りのクラスメイトも、玲奈さえもが恐怖におののいた表情であたしを見つめて距離をとる。
誰…………?
初めて、人を殺したいと思った。
泥棒猫が。あたしが一体、いつからゆうちゃんを追いかけてると思ってんの?
どれだけ苦労してきたと思ってんの……?
先生の話によると、ゆうちゃんは何やら大怪我したらしい。入院していると聞いた。
話を聞いた瞬間、あたしはきっと青ざめていたと思う。血の気が引いて、息苦しくなった。
まさか、自殺を失敗したとか……?
いや、可愛い女と歩いていたなら、そうではないか。
お見舞いに行こうかな……。
他の女に盗られてしまったら元も子もないし、そろそろゆうちゃんのことを抱きしめたい。あの頃みたいに毎日毎日、一日中キスごっこしたいな。
ガス欠だ。愛を補給しないと。もうしばらくゆうちゃんと引っ付いていないのだから。ゆうちゃん以外から、一滴すら愛を受け取っていない。
でも……今更あたしが行ってしまうと、今までの
グッと我慢した。
そうこうしているうちに、ゆうちゃんが登校してきた。
どうやら今日は転校生も来るらしい……。
先生が、転校生を紹介する。
癪に触るほど可愛いその転校生の女子は、紹介されるや否や、ゆうちゃんに
その様子を見た瞬間。
全力で叩き潰さなければならない、と即座に自覚した。
こいつだ。
相合傘をした美少女。
ゆうちゃんをつけ狙う、泥棒猫……。
ゆうちゃんは、あたしの全て。
ずっと大好きだった、あたしの大切な宝物。それを掻っ攫おうとするコソ泥など……
いや、これはもはやコソ泥じゃない。強盗の域だ。強盗は、死刑。
そうだ……強盗には死刑がふさわしい。
もし、あの子のことをゆうちゃんが自ら受け入れたなら……
ゆうちゃんのことも死刑にして、絶対に、絶対に誰にも渡さない。
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