大好きな先輩を作ったので、色んな事をやってもいいですか。
水都suito5656
魔法で作られた先輩
やった!ついに完成だ。
私は魔法で先輩を作ったんだ。
夏休み返上してまで生徒会室に来ていた私は、念願の先輩を作成することに成功した。
こんなにうまくいくなんて思ってなかった。
その外見は先輩そのものだ。
サラサラの髪は腰までの銀色に輝く。
その瞳は優しいダークブラウン。
少し意地悪そうに微笑む口元も、先輩そのものだ。
ん、微笑む?
私はそんな高等なものは作れない。
それなのに眼の前の先輩は、静かに微笑んでいた。
*
ことの発端は先輩の帰省にある。
いくら実家の用事とは言え、夏休みの初日から帰省するなんてひどい。
私は後輩として一緒に遊びたかったのに。
今まで毎日のように顔を合わせていた。
それが休みに入った途端いなくなった。
もう先輩、私淋しくて死にそうだよ
うう、先輩に会いたい
そんな私に悪魔が囁いた。
いないなら、作ればいい
こうして私は魔法で先輩を作る決意をした。
でも私の実力では外見を真似るのが精一杯。
それでもいい
先輩に会えるなら私は禁断の道を歩もう
*
「なんか生き生きしてるよこの子。 ホントに私が魔法で生み出したゴーレムだよね?」
目の前には、出来立てほやほやの先輩が、キョロキョロあたりを見わたしている。
「おまけに、好奇心旺盛みたい」
そんな能力を持たせるなんて。私には絶対不可能なはず。
あくまで外見だけが先輩という、フィギュアのような存在だった。
そんな私の困惑とは別に、先輩は大きく欠伸をした。
可愛い
理由なんてわからない。
たしかに先輩はそこにいたのだ。
*
色々考察したけど原因は不明だった。
やっぱりモデルが先輩だから。
それしか考えられなかった。
*
だから私は悪くない。
悪いのは後輩のことを放っておいた先輩だ。
そしてこの先輩を思いっきり好きにできるんだ。
・・・していいよね。私が作ったんだし。
私はソファーに座りぼんやりしている先輩を、後ろから思いっきり抱きしめた。
「先輩大好き!」
「ひゃー!」先輩は驚いて飛び上がる。
「わああ!」
先輩を背中から抱きしめた途端、大声を上げて飛び跳ねた。
そしてソファーの上で丸まって、こちらを威嚇する。
「あの、驚かせてごめんなさい」
「はぁはぁ、だ、大丈夫よ。でも急に触られてびっくりした」
「はい、すみませんでした!」 うう、怒られた。
でも・・・喋るなんて想定外だ。
てっきり魔法で作った先輩に、意思はないと思ってのに。
真っ赤になって、こちらを軽く睨む先輩
少し涙ぐんでる。
もう!どんな事をしても許される筈だったのに!
私の目論見は崩れた。完膚なきまでに。
最初から邪な自分が悪いんだ。
先輩はどんな物であろうと、やっぱり先輩なんだから。
「先輩お茶にしましょう」
「ああ、頼むよ」
「はい!」まあいいか これでも。
そして穏やかに日常が戻ってきた。
先輩のいる日常が。
*
なんだろう、この生き物は
私の側に座り、テレビを夢中になってみている。
時々眠そうにあくびをしてた。
「もう、大好き!」
*
それからこのかわいらしい日々先輩は、良く知っている先輩へと進化した。
「なるほど校内でユーレイが出るのか。よし、私が払ってやろう!」
先輩はオカルトの専門家だった
「彼氏が冷たい? まあお互い若いんだ、色々あるさ。少し距離を置いてみたらうまくいくはずだ」
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「勉強がわからない? 何だ赤点ではないか。よし私が勉強を見てやろう」
学年トップは伊達じゃなかった。教えるのも上手い
困った時、助けに来てくれる先輩
辛い時、慰めてくれる先輩
難事件に巻き込まれた時、さっそうと解決へと導く、名探偵な先輩
夏休みにも関わらず、その存在に校内は歓喜した。
もちろん私も。
「大丈夫、私が全部解決してやろう」
その姿は先輩そのものだった。
ただ、私が作ったのが原因なのか、たまにポンコツになるけど。
それもふくめて、それは私が求めていた先輩そのものだった。
*
*
「ただいまー」
生徒会室のドアを身体で押すようにして、先輩が帰ってきた。
ものの見事に日焼けしたお陰で、先輩との区別がつきやすい。
「おかえりなさい」
「おかえりー」
「・・おや、誰だいこの子は?」
「何言ってるんですか先輩ですよ」
「はて、わたしだと?」
先輩は首を傾げて先輩を見る。
そんな先輩に、私は7代目先輩を手に取って見せた。
「もう少し丁寧に扱わぬか」
折り紙で作った簡易型先輩7号はブツブツ文句を言いながらも、夏休みの宿題を解いていた。
その能力のほぼすべてを学力に特化にしたせいで、この先輩はただの折り紙の容姿だ。
「でもな、やっぱり宿題は自分でやるべきだと思うぞ」
自分の身体より大きな鉛筆を振り回して、折り紙先輩は偉そうに説教する。
「ほう、この可愛いのが私か。うん、中々興味深い」
微笑みながら、テーブルの上で宿題を解く先輩を見つめていた。
その隣では初代先輩か8代目先輩を折っていた。
今回はピンク色の折り紙で折るらしい。
生徒会室は先輩で溢れている。
まさに私の欲望そのものだった。
「さあ、先輩も一緒に折りましょう」
「ふふ、そうだな」
先輩はどこか楽しげに微笑んでる。
その笑顔を見て、
「やっぱり本物にはかなわないな」としみじみ思った。
おしまい
大好きな先輩を作ったので、色んな事をやってもいいですか。 水都suito5656 @suito5656
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