モラトリアム

「ごめんね!今日も塾なの」

 知っていた。でも、仕方ないねと君を許したくて意地悪をした。

 目標を見つけた君と、諦観を気取る僕。

「はは、ダッサ……」


 去年までは気づかなかった。

 独りで帰る通学路がこんなに広かった事。

 金木犀がこんなに淋しい香りだった事。

 僕がこんなに弱かった事を。

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