『深海食堂マリン』

やましん(テンパー)

『深海食堂マリン』


 マリンは、水深500メートルから、2000メートルあたりにある、深い海の生き物専門の移動型食堂、雑貨店です。


 経営しているのは、おんでんさめの、マチルダさんでした。


 いつも、ちょっと、にたっとしていて、つかみ所がないさめさんですが、海のなかでは、人間以外はなんでも取りあえず食べてしまいます。


 人間は、めったに現れないので、まだ、食べる機会がありません。


 深海食堂マリンの決まりは、食堂のなかでは、勝手な食べ合いはしないこと。です。


 注文したものしか食べてはならないのです。


 また、食堂のお客さんを食べてはなりません。


 そこで、補食魚などに追いかけられたときには、ここに逃げ込めば、取りあえずは助かる、という、ことになります。


 なので、周囲には、沢山のお魚さんたちが集まってきていて、ある意味食べ放題にもなっていたのです。


 また、食品の仕入れも簡単でした。

 

 しかし、この仕組みには、問題があって、もし、食事代を払えなければ、最悪、食べられてしまいます。入って、なにも食べたり、買ったりしなくても、最悪、食べられてしまいます。


 つまり、支払い方法を持たないと、意味がないのです。見るだけ、は、ダメでした。


 支払いには、様々なものが、使えます。


 自分の獲物でも構いませんし、生き物ではなくても、最終的には、オーナーの、おんでんさめさんが気に入れば、なんでも、オッケーとなりますから、いちかばちか、というところもありました。遠い岸からやってきた、人間の作ったものとかも、店内にはたくさん展示してありました。ラジオや、CDもあります。


 あるひ、ふくろうなぎのマー・ヤシンは、なにか、正体不明の怪物に襲われていたのです。


 しかし、食欲なら負けないと、大口を開いて対抗しようとしたのですが、それは、お門違いでありました。あまりに、巨大な化物だったのですから。


 マー・ヤシンは、そのまま、マリンに駆け込んでしまったのです。


 『わあ。ふくろうなぎだあ。』


 『マクロファリンクスだあ。』


 『ユーリファリンクスだあ。』


 『食われるぞお。あいつは、底無しだあ。』


 ふくろうなぎは、見たものは、大概食べてしまいますからね。


 すると、マチルダさんが、マー・ヤシンの前に、立ちはだかりました。


 『お客さん。なにを、食べますか?』


 『あ、え? あらあ。』


 マー・ヤシンは、自分が、マリンに逃げ込んだことを知りました。


 マリンでは、ふくろうなぎは、嫌われています。


 すぐに、規則を破るからです。


 しかし、逃げ回ってくたくたのマー・ヤシンには、もはや、対抗する元気もありませんでした。


 といって、なにも、持ってはいないし、おなかは、ペコペコです。


 マー・ヤシンは、もう天に昇るつもりで、言いました。


 『あの、ふくろうなぎを持ってきました。どうぞ、お納めください。』


 外には、まだ、あの怪物がいました。


 『あやあ。メガロドンだあ。まさか!』


 だれかが、叫んだのです。


 『そりゃ、まずいな。店ごと食われるぞお。』


 すると、おんでんさめのマチルダさんが言います。


 『なんの、あたしのほうが、大きいね。』


 たしかに、マチルダさんは、8メートルはありましたが、そのメガロドンは10メートルくらいのようでした。


 『あまり、変わらないよ。』


 しかし、そのメガロドンさんは、ゆうゆうと入り口にやってきたのです。


 みなは、息をのみました。


 すると、メガロドンさんは、意外にお行儀よく入ってきて、こう、言ったのです。


 『こんにちは。あ、ふくろうなぎくらさい。』


 『あ………… 』


 マー・ヤシンは、呟きました。


 『ふくろうなぎね。なにで、はらう?』


 『えと、この、子供のダイオウイカさんで。』


 メガロドンさんは、袋にいれてきた、こぶりの大いかを見せました。


 子供のいかは、巨大な目で、泣いてるようにも見えたのです。


 ダイオウイカさんは、大人になると、クジラさんと闘うことがあります。


 『ふくろうなぎ、ね。』


 マー・ヤシンは、覚悟しました。


 海の掟なのですから。


 『あいよ。在庫あるよ。あんた、中にはいったら、食わないよ。』


 マチルダさんは、大いかを連れて、厨房に消えました。



 で、あたりは、普通の状態に戻ったのです。


 マー・ヤシンは、どうすべきか、考えていました。


 

      🐠🐙🦈


 

     🙇🙇🙇🙇🙇

 


 


 


 

 


 


 

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