第29話

 倒し終わると、見向きもせずに檻がある方向へ向かった。

幸い、檻までは敵もおらずすぐに辿り着いた。

 檻を見ると、中には少女が倒れ込んでいた。

檻の側面には南京錠がついていた。

 黎慈はブラムを南京錠に向かって使った。

「、、、開かないか」

ブラムは何かの力によって当たる前にかき消されてしまった。

 とりあえず、景佑を助けに行くことにした。

周りを見渡すと、奥の方で複数を相手する景佑を見つけた。

 かなり苦しそうである。

すぐに走っていくことにした。

 足に力を入れ、走り出した。

数秒すると、すぐについた。

 景佑が相手している兵士に体当たりした。

黎慈は兵士とともに倒れ込んだ。

 景佑が黎慈に手を差し出した。

その手をしっかりと掴み、立ち上がった。

「っく、遅いじゃねえか。黎慈」

 景佑の息が荒くなっていた。

「すまん。遅くなった」

「何話してんだお前ら!」

 先ほど体当たりした兵士が起き上がり、黎慈に対して突っ込んできた。

 それを難なく躱し、ガラ空きの後ろを蹴飛ばした。

かなり疲弊していたのか、勢いよく倒れ込みそれだけで灰になった。

「まだくるぞ。気を抜くなよ」

「お互いにな」

 二人はやってくる兵士を次々と薙ぎ倒した。

しばらくすると、部屋には兵士はいなくなっていた。

 景佑の方を見ると、下を向いていた。

息も上がっているようだった。

「流石に疲れたな、、、」

「、、っは、だな」

「でも、まだやることがあるぞ」

 二人は呼吸を整え、檻がある方向へと歩いて行った。

「鍵が必要なわけか、、、」

「RPGとかだったら敵を倒すと落とすとかあるが、、、」

 そんなものはない。

だとすると、探さなければいけないわけだが。

 んー、どこにあるか見当もつかないな。

黎慈がそう考えていると、景佑が何か考えがあるらしく、話し始めた。

「もしかすると、、、」

「何か考えがあるのか?」

「いや、あくまで可能性としてで、、、」

「、、、何もないよりは」

 景佑が上を指差した。

「あそこの窓。実は現実の体育教官室なんだ。もしかしたら、あそこに鍵が、、、」

「行ってみるか」

 二人は庭に続く扉をあけ、檻を後にした。

外に出ると、壁に階段がついていた。

「ここから、体育教官室へ行ける」

「急ごう、あの子を助けるためにも」

 二人は階段を登り、体育教官室の扉をあけて中に入って行った。

黎慈が先行して入っていった。

 だが、中には特に誰もいなかった。

「?誰もいないぞ?」

「じゃあ望み薄かなあ〜」

 そう思っていると、物陰から人が出てきた。

「なっ、お前!」

 顔をよくみると、なんと和寿だった。

 ただ、現実の和寿と雰囲気が違って見えた。

黎慈もよく見たことはないが、明らかに人ではない感じがした。

「黒幕が早くもお出ましってか、、、」

「ふんっ、我が居城にいることを自覚した方が良いぞ?ククっ」

「我が居城?ふざけたこと言ってんじゃねえよ!」

 景佑が珍しく怒号を露わにした。

「その生意気な余裕、すぐに地獄へ叩き落として見せようぞ!」

 そう言うと、ホログラムのように和寿が消えていった。

消えた後を見ると、鍵が落ちていた。

 黎慈はそれを拾った。

「これか、、、」

「っくそ、和寿、、、」

 景佑はすぐそこにあった椅子を蹴り飛ばした。

「今は落ち着け、とりあえず檻までいくぞ」

「すまん…」

 二人は階段を降り、先ほどの部屋へと戻っていった。

檻の鍵穴に鍵を刺すと、見事に回った。

 鍵を開けると、少女が目を覚ました。

「あなた方が私を、、、」

黎慈が少女の方に手を伸ばした。

 少女は手を掴み、立ち上がった。

「歩けるかい?」

「はい、、、」

 景佑が周りを見ていた。

「ここは危険すぎる。一旦引こう」

 三人はこの部屋を後にした。

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