第28話

 恐る恐る扉を開けると、大きな空間に出た。

 中は大きい机に無数の椅子が置いてあった。

まるでダイニングのようになっていた。

大きさ的に、現実世界の体育館だろうか。

 中には先ほどと同じような兵士がいた。

ただ、ぱっと見数十人ほどいるように見えた。

その兵士の中に、明らかに風貌が違う人がいるのが見えた。

 檻の中に入っており、おそらく女性が言っていた人はあの人だろう。

 二人は一旦、物陰に隠れた。

「いるな」

「ああ」

 黎慈は景佑の方を見た。

「どうする?今すぐ行くか?」

「いや、一度戻ろう。あの数と相手するのは危険すぎる」

「、、、それもそうだな」

 二人は仕切り直すためにも、ゆっくりと部屋を出た。

そして、扉の近くの壁に寄りかかった。

「さて、どうするか」

「早く助けに行かないとだしな、、、」

 にしても、思いつかない。

正直、あんな量の敵と戦闘したことないし、、、

 数秒間の沈黙が流れると、景佑が壁の下にある排気口ダクトを指差した。

「これじゃね?」

「え?まじ?」

「でも、これぐらいしか、、、」

 だよな〜。

確かに、これを使って別の場所から奇襲を仕掛けるしか方法は無さそうだ。

二人は早速、ダクトの中に入って行った。

 中は薄暗く、埃も溜まっていた。

 目を細くしながら、道に従い進んでいった。

「景佑、大丈夫か?」

「なんとかな。とりあえず、進もうぜ」

 二人は先を急いだ。

数分這いずって進んでいると、光が見えてきた。

 そこからダクトの外を見た。

外には兵士がいた。

 黎慈は勢い良く上から飛び降り、兵士の後頭部らしきところを思いっきり殴った。

「、、、」

 兵士はこちらに気づくこともなく、灰となって消えて行った。

兵士が消えたことを確認し、続けて景佑が降りてきた。

「ここは?」

「構造的に、現実の体育倉庫に当たる場所だろうな」

「ってことは、すぐそこにいるのか」

 二人はすぐにその部屋から出た。

扉を開けると、そこは先ほどの大きな空間だった。

 二人は物陰に隠れた。

「さて、どうゆう風に攻略してく?」

景佑が先に話し始めた。

 黎慈は、一人づつ確実に行くしかないと考えていた。

「一体づつ確実に、だな」

「了解」

 二人は呼吸を整えた。

「行くぞ」

 黎慈の掛け声と共に、二人は物陰から別れながら勢い良く出ていった。

黎慈はまず、檻がある方向に走り出していった。

「なんか居たぞ!殺せ!」

 早速見つかったようだ。

黎慈の方に、前から兵士が二体飛びかかってくる。

 右側の兵士が手に持った武器を振り下ろしてくるが、体を受け流して難なく回避。

その隙に、右の兵士の体に直接ブラムを発動させた。 

 その瞬間、灰となっていった。

それを見向きもせず、左側から飛びかかってくる兵士に集中した。

 そいつは槍を持って突っ込んでくるが、黎慈はスライディングで槍を躱した。

その勢いのまま、兵士の足元をすり抜けていった。

 すり抜けると、その勢いを殺し、ジャンプして兵士の頭にブラムを使った。

頭の兜が砕け散った。

 倒し終わって走りながら景佑の方を見た。

あっちはこっちの兵士の数よりも倍ほど多かった。

「耐えてくれよ、、、」

 そう思い、檻がある地点まで急いだ。

数秒走り、檻の近くまで行くと、上から普通の兵士より一回り大きいやつが降ってきた。

 地響きがなるくらい大きい。

「尉官スペード。今ここで貴様の生を断絶させていただく!」

 その瞬間、黎慈に向かって飛びかかってきた。

幸い動きは遅かった。

「行ける…!」

 そう思い、思い切り足を踏み込んで行った。

手の平をその兵士の身体につけ、ブラムを使った。

 安全のため、その場からすぐに離れた。

「汝、出来るな…」

「何?」

 よく見ると、ブラムを使った箇所がみるみる再生していく。

「こいつ…!」

 一人では倒せないと感じたが、景佑がこちらにくるまで耐えることにした。

改めて、距離を取りつつ動きを観察することにした。

「もう一度行くぞ、少年!」

 また飛びかかってきた。

 後ろに下がった…

動きは遅いが、なんにせよ防御が硬すぎる。

何か急所があればいいが…

 探すために、その兵士の体を見た。

よく見ると、脇腹のあたりに鎧がはだけている箇所があった。

 だが、すぐに隠されてしまう。

どうにかして隙を探したいが…

 黎慈は一度、そこにあった大きな机の下に隠れた。

 兵士には見られていなかったらしい。

そこで、チャンスを伺うことにした。

「もう逃げたか?腰抜けの若造めが!」

 その言葉を放った瞬間、はだけている場所が見えた。

チャンスは一瞬。

 すぐに机の下から飛び出して行った。

「なっ!」

 すぐにブラムを使い、身体に流した。

「うぐぐ…」

「こんな若造に負けるのか…」

そう言い、灰になって消えていった。

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