第26話

夢に入ると、やはりあの女性がいた。

「少し、面倒なことになっているようです」

「面倒?」

 目の前にいる女性が複雑そうな表情をしていた。

「どうやら、あなた方二人以外にこの世界に立ち入った者が、、、」

「しかも、たった今、、」

「!」

 黎慈は座っていた椅子から即座に立ち上がり、大きな声をあげた。

「どこにだ!教えてくれ!」

「一旦冷静にお願いします。先程、お連れ様にも話をしておきました」

「私の話も聞かずに飛び出して行きましたけど、、、」

 黎慈はゆっくりと椅子に再び座った。

「ただ、、、」

「ただ?」

 女性がワンテンポ置き、再び話始めた。

「この話、我々にとって悪い話って訳でもないようです」

「どういうことだ?」

「どうやら、我々以外の部外者がこの世界に立ち入ると、何故だか夢の力が収まるようです」

「弱まるとどうなるんだ?」

 女性は考え込んだ後、自分の見解を話し始めた。

「おそらくですが、ご自身のブラムの限界を超えて使用できるようになるかと」

「ただ、それなりのリスクもあるようですが、、、」

「リスク?」

「ブラムは、自身の精神を削って発動させているんです」

「そういう経験、最近ありませんでしたか?」

 言われてみれば、最近疲れやすくなった気がする。

衣百合からも隈があると言われていた。

「その精神をさらに削り、人知を超えた力を発揮できる」

「もしかしたら、この世界を丸ごと消滅させられるような力も、、、」

「そんな力が、、、」

 黎慈は自分の手の平を見た。

「ただ、物凄い代償が付いてきます。最悪、夢から目覚めることができなくなる可能性も否定できません」

「、、、」

 二人は黙り込んだ。

そんな中、黎慈が女性に質問を投げかけた。

「ところで、なんで弱まるんだ?」

 女性はすぐに説明を始めた。

「この世界は、誰もが持っている第二の世界なんです」

「所謂、パラレルワールドのような類として考えてもらって構わないです」

 パラレルワールド。

現実では都市伝説のような話である。

 並行世界、とは少し違うような気もするが。

「現実に実際に生きている人は、ここもでも等しく生きています」

「意識しているかどうかの問題です」

 黎慈は俯いて考え始めた。

「、、、理解し難い話だな」

「重々承知の上でお話ししています」

 二人の間には重たい雰囲気が流れ始めた。 

「誰かがこの世界を“現実“として認識する」

「つまり、認知されると、夢全体の力が弱まるようです」

「認知されると、あの化け物に襲われるんじゃないか」

「、、、おそらく」

黎慈はその話を聞いた瞬間、即座に立ち上がった。

「助けに行くのですか?」

「ブラムを以ってないやつがこんな不可解な場所にいたら、どうなるか分かったもんじゃないからな」

「わかりました」

 女性は一呼吸置いた。

「その方はおそらく、あの夢の核にいるでしょう」

「、、、行くしかないのか」

 女性も椅子から立ち上がり、手で円を空中に書いた。

数秒後、その円から光が溢れんばかり漏れ出してきた。

「お連れの方の場所まで繋ぎました。では、ご武運を」

 黎慈はその円の中に飛び込んだ。


目を開けると、景佑が立っていた。

 目の前には化け物が突っ込んできていた。

黎慈はすぐに手を前に突き出し、手の平に意識を集中させた。

 その瞬間、電撃のような雷が化け物の体を貫通した。

化け物は塵と共に消え失せていった。

「黎慈。遅いじゃあねえか」

「悪い、遅れた」

二人は顔を見合わせ、再会を喜んだ。

 冷静になり改めて周りを見ると、どうやら建物の中の廊下のようだった。

壁には窓はなく、絵画のような絵が無数に飾ってあった。

 中世ヨーロッパのような雰囲気の屋敷だ。

「ここは?」

「夢の核さ」

「ここが、、、」

 外の世界とは明らかに違う異様な雰囲気が流れていた。

「そういえば、ここにどうやって入ったんだ?」

「城壁の奥まで行くと、この建物があってな。その中がここだ」

「どこに行くか検討ついてるのか?」

「この場所、少し探索して気付いたことがあってだな」

「なんだ?」

 景佑は少し勿体ぶっていながらも、話し始めた。

「ここの構造、うちの学校と同じなんだ」

「同じ?」

「ああ」

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