6 「ちゃーらいおん」


他の部下とはライン交換をしていない。


仕事の連絡は、基本メールだ。


俺のラインを知れるなんて光栄に思って欲しい。



「じゃ、俺は帰るから」



聖奈と連絡先を交換して、俺は立ち上がる。


今日はこの後、愛猫メンマを実家に返さなければいけない。


父さんが出張から帰ってきている。


メンマを返さないと、鬼電が来るから面倒だ。



「残業ガンバ」



聖奈のパソコンの画面を見た感じ、あと1時間あれば終わりそうに見えた。



「...そのぬいぐるみ、ライオン?」



パソコンの横に置いてある、手の平サイズのぬいぐるみに、俺は気付く。


白い体に、紫色のたてがみ。


たてがみはオールバックヘアのように後ろになで上げている。


ライオンにも見えるが、耳が三角だから、髪の毛が生えている猫にも見えた。


さっきライン交換した時に、聖奈のアイコンを見たが、確かこのキャラクターの画像だったはずだ。


好きなキャラクターなのだろう。



「ちゃーらいおんです」


「ちゃーらいおん?」


「チャラそうに見えて、チャラくないライオン、ちゃーらいおん。知らないんですか?」



知らない。


キャラものには全く興味がない俺は、それが流行っているのかもわからない。



「にーや...じゃなくて、兄に似てると思って」


「にーやでいい。いちいち訂正しなくていいよ」



聖奈は昔から、聖也のことを「にーや」と呼んでいる。


聖也(せいや)+お兄ちゃん=にーや、ということらしい。



「お守りなんです。にーやがいなくても、泣かないお守り」



聖奈...相変わらずのブラコンっぷりだ。


ちっちゃい頃から口を開けば「にーや」、聖也にくっついて離れない。

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