11 「ペット飼ったら終わる」


一旦家に帰ってスーツからジャージに着替えた。


毛玉だらけの高校のジャージ。


裾はボロボロだが、まだ着れると思って捨てられない。



「ただいま、メンマ」



俺の足元をずっとうろついている愛猫、シャルトリューのメンマ。


実家で飼っている猫だが、父さんが出張で東京にいない間は俺の家にいる。


両親は俺が小学生の頃に離婚していて、兄は母親の元に、俺は父親に引き取られた。


東京出身の俺は、家賃の高い東京で無理して一人暮らしする必要はないと思っていて、二十五までは実家に住んでいた。


引っ越したのは、マリアが小杉にいると知ってから。


口には出さないが、父さんが寂しがり屋な性格なのはわかっていた。


家を出る時に父さんのことを思って勝手に猫を買い、実家に置いて行った。


何も言わずに猫を購入したことを、最初はこっぴどく怒られたが、今では実家に早く返さないと鬼電が鳴るくらいにはメンマのことを可愛がっている。


メンマにおやつをあげた。


猫のいる暮らしは良い、癒しだ。


俺もメンマと離れたくないが、たまに面倒みるくらいがちょうどいいのかもしれない。


猫が可愛すぎて、彼女がいなくても幸せだと思ってしまう。


ずっとメンマと暮らしていたら、一生独身になってしまいそうだ。



「メンマ、食べ過ぎはダメだぞ」



これ以上おやつがもう貰えないとわかると、メンマは俺から離れて、猫トンネルの中に入って行った。


興味があるのは食べ物だけで、俺には無関心。


どんなに呼んでも出てこない。


俺はふと、聖也の妹のことを思い出した。


どんなに呼んでも無視する子だった。


話すことはあったが、いつも素っ気ない。


俺は仲良くしたかったのに。

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