10 「友達もいない」
時刻はまだ13時12分。
早退したせいで暇だ。
家に帰って仕事することも出来るが、今日はもうやる気がない。
どうすればマリアと付き合えるのか作戦でも練ろう。
誰かに相談したい気分だったが、聖也は仕事中。
定時まであと4時間もあるし、早退した身で同じ会社の聖也は誘いづらい。
かといって他に連絡出来る友達もいない。
彼女もいなければ、友達も俺にはいなかった。
上辺だけの友達なんていらない。
不要な人付き合いは、お金も時間も無駄になる。
そう思って生きてきたが、こういう時不便だ。
生きている世界が狭いから、視野も狭くなる。
誰かにアドバイスをもらいたいのに。
行きつけのバーに行って話したい気分だが、まだ開店前だ。
こうなったら最終手段。
俺は兄に電話をかけた。
兄は今年29歳。
俺と一つしか年齢変わらないのに、バツ2で、それぞれの前妻に子供がいる。
はっきり言って、クズだ。
離婚の理由は両方とも兄の浮気。
しかしどういうわけか、クズに限ってモテる。
今も女と二人で暮らしてるのだから、俺よりは確実に恋愛上級者だ。
好きなことを仕事にして、自分の会社を持って成功している。
俺と双子に間違えられるくらいだから、顔も良い。
悔しいが、何もかもが勝ち組。
どうしたら俺は彼女を作れるのか!
相談しようと思ったが、いくら待っても兄は電話に出なかった。
「つかえねーな」
心の声が思わず漏れてしまった。
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