8 「青春を取り戻したい」

会社は日比谷だが、俺は武蔵小杉に住んでいる。


三田線日比谷駅から直通で目黒線武蔵小杉駅。


電車での通勤ルートは乗り換えが無く楽だが、人混みがとにかく嫌いな俺は、満員電車を避ける為に車通勤している。


俺は家に帰る前に、小杉のショッピングモールに寄った。


昔は下町だった小杉も、今はタワマンや大型商業施設が建てられてオシャレタウンと化していた。


武蔵小杉を「ムサコ」と略す人もいるが、「ムサコ」というと武蔵小杉なのか武蔵小山なのか武蔵小金井なのか論争が始まるので、俺は「小杉」と略す。


小杉の商業施設の中にある、女性向けの洋服屋にマリアは働いていた。


フェイスブックの勤務先の欄に会社名が記入されていたこと、そして彼女がよく小杉にいることで職場を特定出来た。


ちなみに俺が小杉に住んでいる理由は、マリアをいつでも好きな時に見たいから。


我ながらとんでもないストーカーである。


俺みたいな男が少ないことを願いたい。


マリアは接客中だった。


今日もオシャレで可愛い。


高校時代白ギャルだったマリアは、今も派手で、モデルみたいに綺麗だ。


俺は時々こうやって、物陰から彼女を覗きに来ている。


もっと近くに寄りたいが、売っているものが女性モノしかないので、男は入りづらい。


が、今日はそうも言ってられない。


マリアは黒髪スーツのイケメン...つまり俺を待っている!


自己紹介するとまた昔みたいに自爆しかねないから、連絡先が書いてある名刺を渡そう!


失敗はもうしない!


マリアと付き合って、オシャレな蝶の箱を買ってやる!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る