4 「家族より家族」
「童貞! 昼メシ食いに行こーぜ!」
いつも同じ時間に必ず来る失礼な男。
社長の息子、雷門聖也(らいもんせいや)だ。
聖也とは幼稚園の頃からの幼馴染。
明るい髪で襟足は長め。
黒シャツに白スーツ。
ホストみたいな姿で毎日出社しているが、社長の息子だから許されている。
社長に甘やかされたバカ息子に見えるが、学生時代から俺の次に成績が良かった。
任された仕事はきちんとこなすし、持ち前のコミュニケーション能力で人に好かれやすく、俺が苦手な接待や営業も得意で、期待の次期社長として社員からの信頼は厚い。
顔だけで女性社員に好かれている、給料泥棒の俺とは訳が違う。
「童貞って呼ぶな」
「うっせぇ童貞!」
この童貞いじりは腹立つが、聖也のことは嫌いではない。
性格は真逆だが、凹凸がぴたりとはまったように、一緒にいると心地がいい。
俺には兄が一人いるが、兄よりは兄弟のように思える。
聖也は俺にとって家族より家族だ。
「お前、エロ動画サイトのURL、仕事中にメールで送るのやめろ」
俺は他の人に聞かれないように、聖也に耳打ちした。
「サイト開いて、間違えて大音量で再生して、会社で恥かいてくんねーかなって」
「なんの恨みがあってやるんだ?」
こんなふざけ合いが出来る聖也が同じ会社にいるというだけで、退屈な毎日が救われる。
同時に、会社を辞められない理由の一つにもなっている。
「まあ、でも帰ったらお前が送ってきた動画見とくわ」
「見るんだ...」
今日もいつも通り、二人で昼食をとりに外に出る。
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