第9話 待ち望んだ時間

俺は意を決して話しかける


「ね、ねぇ、みやさん。

実は、俺……君の事を前から……その……いいなぁと思ってて、出来れば付き合って欲しいな……と」


言えた!!言えたぞ!!

しかし俺が多少しどろもどろではあるが必死に言葉を絞り出して告白した時、みやさんは予想外の反応をする。


「ちょっと、どういうつもりよ?」


…………!?


「あなたから話があると聞いたからお詫びなのかと思ったけど、そうじゃないみたいね」


「何の話?」

全く身に覚えがない。


「はぁッ?よくそんな事言えるわね」

明らかにみやさんを怒らせてしまった様だがさっぱり分からない。


「ごめん。本当に何の話か分からないんだ。悪いけど教えてくれる?」


「ユカの事よ!!いつも対戦会に来てたでしょ!

彼女何も悪い事して無いって言ってたのにいつの間にかブロックされ出禁になってたって私に泣きついて来たわ!」

普段大人しいみやさんが怒っている。そもそもこんなに話をしているみやさんも初めてだ。初めての事に俺もかなり戸惑う。


「ユカ……誰だっけ」


「……!!

最低ね!

いつもフレンド第一とか言いながら自分がブロックした人の名前も覚えてないの?ユカは私の大切な友達で、一緒に対戦会に誘われたから入ったのに何でブロックしたの!?」

みやさんは更に怒り、怒鳴る。


「あ……あぁ」

漸く思い出した、この前の対戦会でデザイナーの話をしていた女の子の名前が確かユカだった。


「ユカと一緒だからこの会に入ったのに、彼女が出禁になってる今、私ももう来るつもりも無かったけど、どうしても今日出てくれと頼まれたから出て来たのに説明もお詫びも無いの?」


「う、うぅ……」

本当の事を言うと収拾つかなくなりそうだと思い何も言わずに様子を見る。


「そう言えばさっき変な事いいかけてたよね?

もしかして私を口説こうとしてたの?

まさか、その為にユカが邪魔だったから出禁にしたの?

……つくづく最低な男ね。私はユカを含めて皆と仲良くゲームがやりたかっただけなのに……」

みやさんの怒りが失望に変わり始めている。


何とか場を取り繕うと頭をフル回転させた。

「ち、違う!!あ、あれは俺を無視して皆で話をしてたから……」

本当の事を思わず口に出してしまった。


「……ネットで皆対戦会で仲良くしようなんて言いながら、結局自分が話題の中心に居たいだけじゃない。自分の取り巻きを作りたかっただけなのね。もういいわ、失望した。私にもユカにも二度と関わらないで」

みやさんは音声チャットを切り部屋から退出して行った。


俺は頭の中が真っ白になり、何も考えられず誰も居ないゲーム画面をただ見ているだけだった。

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