新たなる世界に降り立った神の道
神功
第1話 三度目の始まりの時
「会社員というのは本当に疲れるな…」
私の名前は…まあ今はそんなことはどうでもいいだろう。毎日毎日続く残業に上司からの叱責、なにか熱中できるようなものもなくつまらない毎日。
「こんな状態でかつて世界を救ったことがありますなんて言っても、誰も信じてくれることはないだろうな」
そう、私は所謂人生二回目というやつだ。二回目のこの世界では小説やアニメなんかでもよくある設定の、たいして珍しい言葉でもない異世界転生、というものの経験者なのだ。だが別に魔法だとかそういったものがある世界ではなかった。まあ非常に近しい、いや逆に全然異なる?ものはありはしたがな。加えて、世界を救ったと先ほど言ったが、勇者だとかそういったファンタジー世界の主人公的な存在ではなかった。前世ではなかなかに忙しい人生を送ったからか、今世では静かにしようという考えが頭の大半を占めていて、生まれてから前世の修行や勉強の踏襲といったことはしなかった。
「だがこんな世の中と知っていれば、こんな何もせずに生きる道を選んだりはしなかったのだが…、まあ今更悔やんでも仕方がないか。それにまた死を迎えて生まれ変わっても記憶を保持し続ければいいだけだしな。」
私はある手段によって前世の記憶を保持している。そしてこれはおそらく何回生まれ変わっても変わることないだろう。だがこの前世の記憶を持っている、ということで弊害のようなものも存在している。天罰とでもいえばいいのか、前回の記憶を持っているという輪廻の道に反することをしているからなのか。昔から工事現場の落ちてきた鉄骨に当たりそうになったり、私は覚えていないが色々な病気の合併症を引き起こしたりなど、なにかと命にかわるようなことが多い。まあ全部切り抜けて生き残っているわけだし、それに昔といってもまだ私は27なのでそんなに長い期間というわけでもない。
「にしても本当にうちの会社の上司は…はぁ、こんな上司を持ったのも世の摂理に逆らっているが故なのではと思えてきたな…。?、あれは…こんな時間に子供が何をしているんだ?」
もう日が落ちて夜の街の灯がともっているというのに、そこに似つかわしくない子供が歩いていた。おそらく9…いや10ぐらいの年齢ではないだろうか。ふむ…放置子というやつか?それとも家出か、それとも単にものすごく若く見えて(これはありえないだろうが)大学生なり社会人だったりするのか?
「私が気にするようなことでもないか…。…!おい!きみ!早くよけろ!」
その子供は運悪く、踏切を渡っているタイミングで踏切がおり始め、どうすればよく分かっていないのか混乱しているように見えた。しかも電車は両方からくると矢印は示している。
「仕方ない…!」
走って踏切内に入り、その子供を抱えようとしたがさすがにかかえて走れるほど自分は鍛えていなかった。それを悟った私はその子供を投げ飛ばし、いや突き飛ばして線路からはじき出した。そして私はひかれた。
「ゲホッ、ハアハア…前世では世界を救って死に、今世では子供か、ハハ…スケールが小さくなったな…。いや未来ある子供を救ったんだ、ゲホッゲホッ、ある意味世界を救ったといってもいいだろう。」
周りから救急車や悲鳴が聞こえる。視界もぼやけてきた…。決めた、来世では絶対に前世の力を取り戻そう。一度絶対強者として生きたものとして、力がない生活はやはり性に合ってない。生まれ変わってもこの決断を忘れることもないしな…。そう考えると心なしか楽しみになってきた気もする。
「ハア…」
そうして私は最後の一息を吐き、命を落とした。
なんだかまぶしいな、私はあまり明るいのが得意というわけではないのだが…、もう生まれ変わったのか?
『気づきましたか?』
「?あなたは…?しゃべれる…?まだ生まれ変わっていない…?」
『フム、あなたは生まれ変わりという事象について抵抗感がないように見えますね。』
先ほどから話しかけてくる存在を見ると、なんともまあきれいな女性が立っていた。神々しく、気高く、威厳がある。女神という存在はこのような存在なのだろうと思案していると…。
『はい、私は女神ですよ。先ほどまであなたが生きていた世界の神です。』
「そうですか…、こん…ばんわ?』
『フフ、こんばんは。さて挨拶もほどほどに今のあなたの説明をさせていただきます。貴方は先ほどの電車の事故によって死にました。そしてあなたが助けた子供は今回の事件がきっかけで警察に調べられることとなり、警察に保護されました。あの子は私が特に目をかけている子でして、あなたのおかげで死ぬこともなく、さらに虐待をしている親とは離れられそうです。普通なら死んでしまったらそのまま魂の洗浄をし、生まれ変わりを行うのですが、今回はあの子を助けてくれたお返しにあなたの世界ではやっている異世界転生というものをさせていただきます。』
「はあ…。ありがとうございます。」
『お返しといったのですが、転生させてあげられる世界が一つしかなくて…その世界では男のあなただと生きづらい世界となっているのです…。すみません。』
「男だと生きづらい…?」
『はい…。あ、あ、ですが!魔法が存在する世界なのです!!』
「はあ…」
『は、反応が悪いですね…、ゴホン!それに加えてあなたの魂を視て、あなたにとって有利に働く加護なんかを授けさせていただきます!早速あなたの魂を視ていきますね…。』
なんか勝手に加護をもらう事が決まったな。まあ悪いことではないか…、…待てよ、魂を視る?
「あ、あの!やめておいたほうが!」
『いえ!あなたに必要な加護を授けるには必要なことなの、で…?うっ!?こ、これは?!』
私の魂を視たであろう瞬間に女神は一瞬にして地に伏した。
『こ、この魂は!わ、私よりも?!?!』
それをみた私は軽く手を振り、女神は楽になったように見えた。
『ハアハア…、あ、あなたは一体…?あなたの魂は神にも等しい、いえそこらの神々よりも強いのでは…?』
私は何とも言えずに軽く微笑み、
「今見た通りなので、加護とかは特に必要ありませんよ。女神さまは納得しないかもしれませんが、魔法があるという世界に生まれ変わらせてくれるだけで十分すぎるお返しです。」
『しかし、男の方にとっては生きづらい…いえ、迫害されるかもしれませんよ?』
「大丈夫ですよ。んー、では参考までにそうして迫害されるのかをお聞きしても?」
『…この理由を教えただけでは不十分なのですが…、わかりました。まず男が迫害される理由は、男性の少なさです。』
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