第23話 異世界ほのぼのゴブリンLIFE②

「――ゲプッ!」


 お腹いっぱいなったことで、意図せずゲップが出る。

 その臭いは、涎と同じく自分にもわかるほどの激臭。


 いうなれば、下水道。


 いや、田舎にある汲み取り式の公衆トイレだ。


 我ながら、女子としては、もう死んでる気がするよね。


 だって、臭い、下品、キモい、緑、ゴブリン+おしゃぶりだよ?


 一体、私がなにをしたっていうんだよぉぉぉー。


 私は、ただ唯一無二の存在に転生して異世界LIFEを満喫しようとしただけなのに。


 こうなるとスライムだった頃に戻りたいかも。


 不自由ではあったけれど、可愛さは完璧だったし。


 有名になれそうだし、色んな可能性あるだろうし。


 前例も、実績もあるしねー。


 とはいえ、この体のおかげで面白いことをわかったりもした。


 それは、不思議なことなんだけど、この私《おしゃぶり》が……なんと!


 なぁぁぁーんと! 何を食べても取れないし、落ちないし、離れないのだ。


 そう! It's a fantasyー!


 ご都合主義ー!




 ☆☆☆




 晴れ渡る青い空に、ゆっくりと流れる雲、太陽の近くで浮かぶ幻想的な2つの月。


 ○○○○姫に出てくるような自然豊かな森の一角。


 木々はざわめき、落ち着くような香りが私を包む。


 お父さん、お母さん、ルーミー、そして……最推し加琉羅ルイ君。


 私、加藤和世は色々とありましたが、異世界を満喫しています。


「グハハ! タノシンデルヨー」


 そう、本当に自分でもびっくりするくらいに、この世界に馴染み満喫していた。


 朝日が昇ると同時に起き、森林浴を行い。


 そこから体をほぐし目が覚めてきたら、額に一本角を生やしたウサギっぽい魔物を狩りに草原へと向かう。


 数匹ほど狩れたら、住居兼キッチンに戻っていく。


 そして、夕飯の支度→目の前の命に感謝して最後まで頂いて一日を終えるといった感じに。


 まぁ、厳密にはおしゃぶりに睡眠は必要ないので、このゴブおじが寝るって感じなんだけども。


 あと、面白いことも発見した。


 それはスキル【寄生】について。


 レベルが5に達した影響なのか、宿主を変更しないまま、寄生をできるようになったりした。


 ただ、スキル【寄生】の全容は未だに把握できていない。


 というか、余計にわからなくなった。


 宿主を変えずに寄生するって、いうのは重宝する能力だし、いいじゃんって思っていたけど。


 何故かおしゃぶりが光り輝くことはなかったし、あかりんのアナウンスは一度のみ。


 そこからゴブおじの攻撃を受け動きが鈍った額に一本角を生やした魔物モフィットへと万能触手ちゃんが勝手に伸びていったのだ。


 あ、寄生したことで、美味しく頂いていた魔物の名前を知ることができました。モフィットっていう名前です。


 そこからもいつもと違った。


 伸びた万能触手ちゃん触れたと思ったら、万能触手ちゃんを介してモフィットへとおしゃぶりが口元に移動してしまうし。


 その後、あかりんからの声が響いてセミオートでスキル【寄生】を発動し、ゴブおじの攻撃を受けて弱ったモフィットの口から口へと移動していったしね。


 傍から見たら、なかなかにドン引き映像が流れていたことだろうけど、私自身も置いてけぼりとなっていた。


 なんせ私がしたことは、ゴブおじに刻まれている記憶を頼りに、モフィットへと攻撃を仕掛けてめかりんからの声に《発動します》って答えるだけだったからね。


 けど、おかげで複数のスキルをゲットできた。


 まぁ、同じ魔物ばかり【寄生】していたので、保有スキルはそこまで代わり映えはしなかった。


 取得したスキルは【仲間呼びレベル5】と【格闘術レベル5】の2つ。


 けど、どちらもおしゃぶりである私には使えなかった。


 いや、スキル【格闘術】に関しては、それなりに使えた。


 きっと常時発動型ということもあるのかもだけど。


 私が何も念じなくとも、攻撃を点や線で見えたり、相手の呼吸に合わせて攻撃を捌いたり、繰り出したりもできたしね。


 それにこのゴブおじの記憶も相まっていい感じだった。


 けど、小回りの効くサイズであるモフィット相手となるとゴブおじの図体が少しデカい分、大振りになったり、反応が遅れ後手になったりなど、まだまだ実戦に使うには試行錯誤が必要といったところだ。


 ま、これは今後の課題だね。


 問題はスキル【仲間呼び】。


 この異世界に私以外の誰かがおしゃぶりへと転生している可能性は限りなく0に等しいわけで。


 って、使っても、私以外のおしゃぶりが現れなかったので、0なんですけどねー。


 ……あはは。


 と、とにかく!


 なにはともあれ、それなりには充実したスローライフを過ごしていたというわけです。

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