第19話 おしゃぶりスライムVSゴブおじ①


 ということで、お待ちかねのスライムに寄生中おしゃぶり探検隊のスタートしたわけなんだけど。


 私の体力はもう底を尽きそうになっていた。


 そう、ご察しの通り。


 またまた魔物とエンカウントしてしまいましてですね。


 一方的にボコボコされたわけです。


 目の前で、棍棒を振り上げている目つき悪い緑色の魔物に。


 たぶん、見た目からしてゴブリンだと思う。


 そう思うのは、なんかデカいからだ。


 というか、どの特徴も私の知っているゴブリンと少しずつ違う。


 しかも腹出てるし、腰に布を巻いているし、想像していた小人で悪役面というよりは、風呂上がりのおじさん……そう! ゴブリンおじさんっていう感じだね。


 いちいちゴブリンおじさんって言うのはめんどいので、短縮してゴブおじで。


 そう言えば、さっきのスライムも氷魔法を使えてたし、最弱とはかけ離れているような……。


「マズイケド、シカタナイ、スライムヨリニンゲンガイイ。デモ、シカタナイ。ハラヘッタアブナイ。デモ、モウクエル」


 ゴブリンおじさん、改めてゴブおじは、カタコトの言葉を発して棍棒を振り下ろす。


《プキュュー!》


 スライムの口? 穴? おしゃぶりを咥えた口から声が出る。


 おぉん! くそがぁぁぁぁー!


 今、考え事しとったんじゃー!


 ちょっと喋れて二足歩行で、なおかつ、武器を持っているからってよぉ! 調子に乗るなよぉぉー!


 くせぇ口塞げや、この野郎がぁぁぁー!


 と、まぁ、なんでこうなったかというとですね……ラブコメ的なあれです。あれ!




 ☆☆☆




 あれは、ちょこっと前。



 私はスライムの体に宿っていたスキル【捕食】とスキル【酸攻撃】&スキル【氷魔法】を試していた。


 とはいっても、【捕食】も【酸攻撃】も予想していた通りな感じだった。


 草を口に含んで【捕食】を使うと消化するって感じになるし、テキトーに転がっている石に向けて【酸攻撃】を使うと、口から? 硫酸? が出て当たると煙を立てて表面がやや溶けるといった感じに。


【氷魔法】については、発動するには条件か、もしくは魔力が足りないのか(あくまでも私の仮説)、何度念じようとも発動する兆しはなかった。


 そこは、おいおい魔力が増えた時とかに試していこうということにした。


 とはいえ、発動できた2つのスキルも、まだまだレベルが低いからか、直接的な攻撃手段とはならなかった。


 スキル【補食】これに関しては特に。


 けど、【酸攻撃】には、応用がきいた。


 口から吐くと万能触手ちゃんより、威力が高い近距離攻撃になるし、吐かずに分泌して石に塗って投げると遠距離攻撃にもなるのだ。


 だって、酸だしね。


 まぁ、遠距離攻撃っていっても私にはこんな攻撃もあるんだぞー! みたいな威嚇とかに近い部類となる感じだけど。


 そんなことを考え試し、森の中をルンルン気分で探索していたら、少し開けた大きな木がそびえ立つ場所で、ゴブおじを遭遇したのだ。


 ラブコメみたいに、主人公とヒロインが出会い頭にパン咥えてごっつんこ、キュン! じゃなくて、出会い頭にスライムがおしゃぶり咥えてグハッ! エンカウントですね!


「ウゴガガァァー! エモノミッケ」


 ゴブおじは、私を見た瞬間に棍棒で振りかざす。


 私は突然の攻撃に反応できず、一撃ももらってしまい草むらまで吹き飛ばされてしまう。


 けど、草がクッションなってくれたおかげか、ダメージは35ポイント。


 そして、残りの【体力】は315ポイント。


 総体力10%のダメージを負ったはずなのに、なぜか【対生物用スキル 寄生】は発動しなかった。


 予想外の出来事に慌てる私。


 そこにゴブおじは不敵な笑みを浮かべながら、近付いて、もう一度棍棒を振り上げて勢いよく下ろす。


 でも、運良く覆い被さった茂みのおかげで、直撃は免れて攻撃を躱すことに成功した。


 そこから、私の反撃のターン。


 茂みに棍棒が絡まり慌てているゴブリンに、私はスライムに寄生したことでゲットしたスキル【酸攻撃】をおみまいしてやった。


 それが見事、ゴブおじの左目に命中してジュウゥゥゥと音を鳴らしながら煙を上げていく。


「ウギャウギャギャガァァー!」


 ゴブおじは悶え苦しむ。


 その間にも、私は一発、二発、三発と酸を飛ばす。


 上半身に二発、左足に一発命中した。


 けど、その反撃のせいで、ゴブおじに火が点いてしまい潰れて無くなった目や爛れた皮膚を気にすることなく、棍棒を振り回し暴れ始めたのだ。


 私はそれでもめげず、万能触手ちゃんを伸ばし触れようとしたり、もう一度スキル【酸攻撃】を飛ばしたりした。


 とはいえ、相手はこんな日々を日常的に繰り返してきた野生の魔物で、私は争いなんて知らない日本育ちの女子。


 ド素人&スキル頼りの付け焼き刃の攻撃が、そう何度も当たるわけもなく、徐々にスキルを発動するタイミングを読まれ躱されたり、棍棒で軽くいなされたりしてしまった。


 私は一向に当たらない攻撃、初めての戦闘、初めて命を奪われるかも知れないという事態に恐怖と焦燥感覚え、知らぬ間に精神と体力をすり減らしていったのだ。


 そして、満身創痍となった私をゴブおじの一方的な棍棒ボカスカ滅多打ち攻撃が襲い今に至る。

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