第4話 これぞ転生の醍醐味、スキル選び
それにしても、数が多過ぎて見きれない。
「あの……女神さん、ちょっと教えてほしいんですけど、これって何秒以内に選ばないと適当な物に選択されて異世界に飛ばされるなんてことはありませんか?」
もしここで期限があるなら、早く選ばないとあり得ないスキルを付与されて、ハロー異世界してしまう可能性もあるし、物語のプロローグでご退場させられてしまうという何とも悲しい結末を迎えてしまうんだよね。
いわゆる、モブ中のモブってやつの流れ。
《ふふっ、大丈夫ですよ! 制限時間はありません。ご自分がいいと思ったものを探して下さい》
笑われた。恥ずかしい。
そうだった。
頭で考えていることは女神さんに筒抜けだった。
でも、良かったおかげで機嫌は元通りだ。
しかし、数が多いのは困ったものだなー。
見る限り画面の下部に表示されている件数は、1万を超えているしさ。
いくら時間があるとしても、こんなの全部目を通していたら、廃人コース決定だよね。
《加藤さん、加藤さん、画面右上の虫眼鏡のマークを頭に浮かべて下さい。そうしたら、条件なんかも絞り込めますよ》
あはは、やっぱり聞こえていますよね。
《はい、しっかりと聞こえています》
なんか楽しんでいるような……。
《楽しんでなんかいませんよ! ふふっ》
あ、また笑った。
《気にしないで下さい! さ、それよりもお早く》
「は、はい! では、想像してみますね」
おお、脳内で想像した瞬間にどこか見慣れたようなカラフルな文字表示された検索画面が出てきた。
OKー! ○○○○って、指示で動くAIもびっくりだ。
じゃなくて、この後どうするかだな。
「女神さん、ここに入力すればいいんですか?」
《はい、そちらに魔法なら「魔法 〇〇」、スキルなら「スキル 〇〇」というように想像して下さい》
これも想像か……想像……。
「で、では」
まずは魔法っと。
条件はそうだな【スキル 生きるのに特化】かな。
せっかく転生するというのに、車に轢かれて死ぬなんてこと起きてほしくないからね。
って、異世界に車なんてないだろうけど。
えーっと、ここからは……。
また想像するのかな?
なんて想像すればいいかな?
ケンサクシステムヨー! ワレノネガイヲカナエタマエー! って、7つの星印ボールを集めた時みたいにするとか?
いや、それとも画面を3回擦ってから唱えるとか?
《あ、決定って念じて下さい!》
は、恥ずかしぃぃぃー!
ダハッ、やっぱり心の声が聞こえるなんて慣れてないから、分かってはいても変なこと想像してしまう。
「ごめんなさい、女神さん」
《あはは……大丈夫ですよ……》
あーあ、絶対に引かれた。
顔は見えないけど、お手本のような苦笑いだった。
《あのぅ……加藤さん、制限時間はないですが、そんな卑屈な発言ばかりしていると、制限時間付けちゃいますよ?》
「えっ!? そ、それは困ります! もう卑屈なこと言いませんから!」
《はーい、お願いしますね!》
「わかりました!」
えーっと、念じてっと。
決定……決定っと。
あ、画面が変わった。
画面には、”該当スキル一覧”が表示されている。
その下部を見る限り、該当のスキルは百件だ。
なんか気になるものはないかなー。
画面に念じてスクロールっと。
うん?
気になるスキルが見ぃーっけ!
【寄生】
なるほど、寄生ね。
生きていくには、良くも、悪くも人と繋がりが必要だからなー。
働かないのが、勝ちって言うし。
って、ストレート過ぎないかな。
寄生して生きていきたいけどさー。
でも、どういう意味の寄生かな?
もしかして、グロテスクな触覚とか出ちゃうやつだったりして……。
お、また画面が切り替わった!
なになに、今度はスキルの詳細かー。
【寄生】――他者の力を糧にして生きていくスキル。
なるほど、ナイススキル!
触手じゃないということでしょ!
やっぱり憧れるは”寄生型異世界ほのぼのライフ”だよね。ビバ非課税不労所得ー!
「1つ目は寄生っと」
またまた念じてスクロールしてっと。
おお、これは有名スキルだ。
【継承】
でも、継承って解釈が多過ぎていまいち想像しにくいんだよねー。なんか詳細とか見られないのかな。
また、切り替わった!
てかさ、さっきから、念じたり、考えただけで応じてくれるなんて便利な能力だよね。
生きていた頃に欲しかったかも。
そうしたら、意のまま自動販売機を操り、休憩時間のドリンクタイムに飲み放題だし。
って、それは犯罪者か良くないかな。
というか、私ってまだ内定を貰っただけで休憩時間を味わったことはなかったんだった。
《コホン!》
この女神さんの咳払い。
タイミング的に悪巧みは良くないってことと、早くしてほしいという意味だよね。
よし、真面目にやろう。
詳細が見たいと念じてっと。
お、出てきた。
えーっと、なになに。
【継承】――能力を継承できるスキル。
そうだねー、これが継承だよねー。
って、どういう意味ですか?! 言葉が足りなくてどう捉えていいか、わからないですけど!
いや、待てよ……これはもしかして転生先によっては化ける可能性があるのかもしれない。
何かあったよね。
魔物に生まれ変わって吸収して強くなっていく物語。
うーん……他はないかなー。
私は念じてスクロールする。
【鑑定】
おお! これはめっちゃ重宝するやつじゃん!
詳細を確認する為、再度念じる。
【鑑定】――他者のステータス、能力を見ることが出来る。
だよね……いや、でもありきたり過ぎるかなー。
今って、大体、転生したら鑑定して、なんか色々順序よく知識を得ていくじゃん?
いや、目的が強くなるとかなら、あるかもだけど。
私の場合、そういうのじゃないしなー。
どっちかというと、異世界を満喫するっていうのがしっくりくるし。
もちろん、【鑑定】は捨て難いよ?
けど、やっぱり異世界に転生するなら、自分で見聞きして楽しまないとだよね!
よし!
「【継承】でいこう!」
このスキル一覧に載っているということは、無駄なスキルだということもないだろうしね。
《素敵なお考えですね! それに仰る通り、特におかしなスキルではないです!》
あはは、やっぱり聞いていますよね。
《ふふっ、もちろんです! あと、どんな”ふう”な存在に転生するかですが――》
「あ、はい! それは決めていますので、問題なしです」
そう、もう決めてあるのだ。
妄想に妄想抜いていたオタク人生で。
それをここで遺憾なく発揮する所存です。
ポジティブオタクのイマジネーションよ!
今こそパージされろぉぉぉぉー!
《ふふっ、なんですか? その変な言い回しは》
「あはは……聞こえてますよね」
《うふっ……はい》
女神さんは口元に手をやる。
また、笑われた。
けど、楽しいからいっか。
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