エピソード5, アイデア募集企画 1
梅雨☔さん→ ホラー、逃亡系で書いてほしいとアイデアを頂いたので書かせていただきました。
梅雨さんありがとうございますm(_ _)m
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『新月の日、西の森にある湖へは行ってはいけません。こわ~いおばけに食べられてしまうからです』
とある地域に伝わる昔話の冒頭はこうして始まる。
そこに住む子供たちは皆、この話を聞かされて育つのだ。
作者はヌーデルという老いた男。
現実味のある描写と、分かりやすくそれでいて読みやすい文章は多くのものに親しまれてきた。
ヌーデルは言った。
「この話は悪夢だったのかもしれない。でも、ワシには夢だとは思えなかった。恐ろしかった、ワシの人生の中で最も恐ろしい恐怖体験であったんだ」
そういったヌーデルの表情は青ざめており、怯えるように手が震えていたらしい。
◇◆◇
「西の森に行こう?」
「そうさ!あのオッサンが聞かせてくれた話が嘘だったって事を俺達で証明するんだよ!」
そばかすが特徴的な牧師の少年ナローは隣に住む学者の息子のヌーデルにそう声をかけたのだった。
馬鹿な事を、ナローは先程村の広場に訪れた詩人の話を真に受けているのだろう。
その話とは西の森に出る人食いの化け物の話だ。
ヌーデルは馬鹿ではない、どちらかと言うとそこらにいる同い年の子供たちよりも頭の良い少年であった。だからこそそんなおかしな話を信じていなかったのだが……。
「今日は新月の日なんだ!それに他のやつに先を越されるわけには行かないだろう??」
「……わかったよ。お前一人じゃ不安だからなぁ」
ナローは行動力のある少年だ放って置くと何処かに行ってしまう。
ナローはヌーデルが初めてできた友達でもあり、どうしても見捨てきれなかったのだ。
「ありがとうヌーデル!じゃあ夜の九時、西の森の入口で集合な!」
◇◆◇
「こない……」
ヌーデルはかれこれ二時間近く西の森の入口でナローが訪れるのを待っていた。
(あれほど楽しみにしていたのに……)
ぶつくさと呟きながらヌーデルは背後に存在する深い森へと目を向ける。
木々のざわめきが広がりヌーデルは心なしか寒気を感じた。……恐らくただ秋の夜は寒いだけであろう。
「ぬ、……ーで……る」
「……誰か呼んだか?」
「ぬで……ル」
「ナローかな?」
もしかしたら先に森に入っていたのかもしれない。そう考えナローは森の中へと入っていった。
◆◆◆
「ナロー…ナローどこだー?」
「こっち……湖に、来てよ」
どこに隠れているのだろうか?
声のした方へと耳を傾け、言われたとおりに湖へと向かう。
……夜の湖は闇色に染まり、月明かりの無さがより一層闇を深くさせていた。
「ヌーで、ル」
「よくキたネェ」
声が二つ聞こえた。何故だろう喋り方に違和感があった。
「ヌー、…し、で、」
「に、……逃ゲ、デ」
ここまで来て冷やかしているのか、ヌーデルは呆れた思いで振り返る。……振り返ってしまった。
暗闇でも分かった。そこにいたのは恐らくナロー……だろう。
目玉のくり抜かれ、歪に歪んだ笑みを浮べながら樹木に身体を取り込まれていたのだ。
ヌーデルは身動きが取れなくなっていた。
あの話が本当であったという驚きと全身を取り巻く恐怖と、友人を失った悲しみ。
様々な感情が混ざり合い混乱し、足は考える前にその場から走り出した。
ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハ――
ギチッ゙
樹木には口があった。
恐ろしい牙を見せつけ、滴る血を唾液と一緒に垂らしていた。
「――あぁあぁああああああぁあぁ」
『ここに゙は……キちゃ駄目ダって言っだダろう?』
◆◇◆
「今思うと、あの人食いの化け物はきっとあの詩人だったのだろう」
ヌーデルは遠い過去のそれでいて鮮明なその恐ろしい記憶に思いを馳せる。
新月の日、西の森へは行ってはいけない。ヌーデルの親友のように人食いの化け物にきっと食べられてしまうから。
物語はそう締めくくられている。
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