短編小説 心情

菊叉 眠子

人偽間

にん 間。

人間とは難しい生き物である。

同じ種族でありながら、いま隣座っている人すら気持ちを読むことはできない。

他人はおろか、家族や恋人。我が子ですら自身の考えていることは自分しかわからないのである。

それなのに、人は互いに理解し合って生きなければいけないという。

見えない存在をどう認識すればいいというのだろう。

そして見えないものほど恐ろしい。

先程からきゃっきゃっと騒がしい女子高生達だって一人いなくなった途端にさっきまでいたあの友達であろう女の子の悪口を言い合っている。

そんな中で人を100%信頼してよいものなのか。

中には本当に心根が美しく、清く正しい人間もいるのだろうが、そんな高潔な存在は宝くじが当たる確率ほどしか存在していないだろう。

いるとしても子どもくらいではないのだろうか。

皆仮面をつけている。

人を欺く。それは私にとって何か人間としての大罪のような気がしていた。

嘘偽りない人間。自分としていきたいと思う。


人が互いを信じあい、助け合い。

心から通じ合う。

それはとても心地よくいいものであると。



なんてそんなものは夢物語のような綺麗事だ。私は。人間でありながら、人間を理解することができないのである。

その本性を暴いてみろ。

恐ろしかった。

頭からつま先まで隠しているその下には、見てはいけない禍々しい何かが隠されている。



しかし、私という人間は。独りでは生きられない。寂しい生物なんだ。

怖いなら近づかなければいいじゃないか

人と一線引いてつきあえばいいじゃないか

その通り、ごもっとも。

諦めきれないのです。人間との繋がりを。

どんなに人間に裏切られても。

貶されても。

嵌められても。

人間に。


愛されたいと思います。

愛したいと願います。

必要として欲しいと思います。

抱きしめて欲しいと心が叫びます。



ではどうすればいいのか。

人(偽)間。

結局これが真理にして答え。


勉強がお嫌いでも人(偽)間。

頭が良くなるよう努力する。

意地悪をするあの人が嫌でも、人(偽)間。

いつか天誅が下るその日まで愛し続けろ。

仕事が苦しくても人(偽)間。

仕事も直向きに頑張る。きっとそれを見ている人が必ずいると信じて。


人(偽)間。


間はあいと読む。

人とあいの間は?

偽物。




自分の理想とする人間ににせる。魅せる。

そうすれば全てを手に入れることができる。

自分という個性。人間性を潰すんだ。

何者か分からなくなって狂うだろう。

大丈夫。狂っていることすら仮面の内側に覆い隠してしまえばいい。


人間は、自分が悪になることを毛嫌いする。そして悪いことから目を背け、見えないフリをする。

もうすでにドス黒い悪だというのに。


これが正常。これが普通なんだ。

むしろ偽りを嫌悪し、いつも正直で、正義を掲げながら自分を見失わない者こそ異常とみなされるのだ。そして、排除する。

出る杭は打たれるとは上手いこと言ったもんだなと。

さて。


君はどうなんだい?





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