クッキーと拳銃① / 分割Ver.
曇り空の昼下がり、ティータイムの紅茶を淹れるために湯を沸かした。3枚のクッキーをテーブルに置き、ティーバッグとカップを準備して、ケトルを手にキッチンから戻ると、もうクッキーは無くなっていった。かわりに、1人の、6歳くらいの少女が椅子の上に立っていた。
「え?クッキー、、、誰?クッキー、、、」
特徴のないパーカーとズボンの少女は、祭りのお面をつけて顔が見えない。
ただ、モゴモゴと繰り返しお面が動くのみである。
「クッキーおいひい!もうないの?」
「あ、もうない、ちょうど切らしてしまったよ、申し訳ない。それより―――」
「軍人さん?戦うの?」
「え?いや、もう軍人じゃないんだ。でも、軍服しか持っていなくて―――」
「見て!このお面!なんだかわかる?」
「ん?あ、それh―――」
「オルターマン!オルターマンだよ!強いんだよ」
「え、うん強いね。それより、お嬢ちゃんはどこから来たのかな?」
「クッキー食べたいなァ、もうクッキーないの?」
青年期を戦争に費やしたエトウにとって、少女との会話は難しい。21歳のエトウと、6歳の少女。2人の会話は、停車駅の無い電車のように終わりが見えない。
「軍人さん!カッコいいね!強いんでしょう?」
「んー、いいや。弱かった、心がね」
「敗北者は誰だ!我が国は終戦から2年が経つ。連合国として参戦、5年間、食料や高い税金を費やして、ついに連合国は勝利を収めた!だが、我々は何を得た?租借地、賠償金、国際社会での立ち位置、、、そんなもの我々、国民にとって何の価値がある?食料は今日も戦時下の価格であり、日用品の一部は未だに配給制だ!2年も経って、これが戦勝国の在る姿というのか?我が国は勝った!だが我々、国民は敗北した!」
雑居ビルが立ちならぶ街の、細い道を抜けると小さな平屋が1つある。その中では、武装した数名が、リーダーらしき人物の演説を聞く。一方、公安偵察隊の2人は窓から、その演説を聞いていた。
「ケイさん、これ、、、」
「あぁ、これは情報と違う。テロは今日、実行される、、、」
「腐敗した政府に、裁きの時が来た!!我々は残念ながら『テロリスト』として悪名を残す。しかし、国民を苦しめる政府、悪に対する悪だ!悪に対する悪は神聖なのだ!奴らは意表を突かれ、何もできぬまま今日、国民は解放される!」
「密偵の情報なら、武器の到着は1ヶ月後だったじゃないですか?」
「今まさに!我々が国民を助け出す!」
「密偵が裏切った、、2重スパイだった、、ボスに連絡はしたが、公安の手では負い切れない。陸軍に―――」
「そう、もう遅いよ」
公安の2人の前に、2重スパイとなっていた、その密偵は現れた。
「キムラッッ!」
2発の銃弾は正確に放たれ、公安の2人が命を落とした。テロが始まる。
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