第2話
私は昔、その内気な性格とあまり整えてもいない容姿から周りから馬鹿にされていた。
ボサボサの髪を長く伸ばし、嫌がらせで泥だらけになった服を着ていた醜い私をある男の子が救い出してくれた。そして私はその男の子と一緒に何回も遊ぶようになった。男の子は私といても嫌な顔一つせずにいつも優しく接してくれた。しかし、その日は何日も続かなかった。彼は急に転校が決まり、その場所も告げづに離れていってしまった。私はその日からその男の子にまた会いたいと言う一心しか無かった。
また馬鹿にされないように身だしなみを整えて周りの人とちゃんと受け答えできるようになり、小さい頃見たあの眩しい少年の隣に立てることができるように努力した。
そうして私は学校で人気者として地位を獲得した。何回も告白を受け、男子女子関係なく皆が話しかけてくる毎日、それでも何かが足らなかった。その時から私はあの少年に恋していたと気づくのはそう遅く無かった。
ある日、私の両親が仕事の都合上、引越しをすることが決まった。私は本当は離れたく無かった。ここはあの少年との決して忘れることのない思い出の地。いつかまた来てくれると信じて待っていたのだが、少年は未だに来ていない。
もしかしたらあの少年は私のことを忘れているのかもしれない。そんな不安を払拭したいが、不安は消えなかった。そして私は結局、両親に申し訳なくなって引越しと同時に転校することになった。
転校した学校は元の学校とそう変わらない、普通の学校。私は転校生として紹介された後、他の生徒達が一斉に騒いでいる。しかし、その中で私に興味があまり無さそうな男子がいた。携帯を手に持った傍ら、皆が騒いでるからみたいな感じで私を見ている。
私はその男子に何か既視感を感じた。しかし、それは確信に至らないまま私はその男子の隣に座ることになった。しかし、私の既視感はすぐにあっていたと分かったのであった。
「俺は北田浩樹です。よろしく。」
『俺は浩樹!友達からはヒロ君って呼ばれてる』
私の思い出と現実はそうして会合することになったのだ。
◇◆◇
「あの……ナナ?そろそろ離れてくれると嬉しいんだけど…」
「嫌です。もう離れたくありませんし、離すわけがありません。」
「ナナ…ちゃんと喋れたんだ。」
「ええ。ちゃんと努力したんですよ。いつかまたヒロ君に会えたら相応しい人になれるように。」
「ああ、むしろ俺が相応しくなくなったな。」
「そんなことはありません。ずっと私の隣にはヒロ君だけが相応しいんです。」
「あの……ところでナナ。そろそろ人の目もあるし、離れてくれない?」
そう言って俺は教室を見渡すと、そこには皆驚愕した様子で俺達を見ていた。それはそうだろう。いきなり転校したきた美少女がいつも特に目立つこともない俺に何故か抱きついているのだ。
男子からは恨みと殺意の目線が、女子からは好奇心に溢れた目線が俺達に放たれていた。
「あ……そういえば、そうでしたね。ついテンションが上がってきてしまって。」
「勘弁してくれよ…」
「嫌…でしたか?」
「別に嫌じゃないよ。ただびっくりしただけ。」
「なら、良かったです。」
そう言って南那は俺に微笑んだ。その純粋さを感じる微笑みは子供の頃から変わってないだな。と思いながら見ていると、不意に誰かから肩を叩かれた。
「あの……お二人さん。なんか感動の再会っぽい雰囲気を出してるけど、流石にいちゃつきすぎですよ。」
声をかけてきたのはクラスの学級委員の沢山さんだった。沢山さんは誰にでも優しくて空気の読める人だ。今も、俺と南那が生み出した甘い空気を変えてくれようとしてくれているのだろう。他人から直接指摘されたことによって俺と南那の両方とも顔が赤くなりながら、
「「すみませんでした…」」
と、頭を下げたのであった。
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