戦略家、病人を看護する
同志書記長
序章
有史以来、人類は慢性的な戦争状態であったともいえる。ありきたりであるが、文明の進歩とは即ち戦争の進歩であった。それを一万年にわたり、我々人類は続けてきたというのだから、自身らの知性を疑いたくなることはおかしくない。
我々は戦いを収める方法ではなく、戦いに勝つ方法しか思案しなかったためだ。
故に、俺は国家総力戦こそ愚の骨頂とみる。
民意という、制御できない物を使って始めた戦争は死ぬまで終わらないのだから。
ここに一つ、また道を踏み外しそうな国がある。名を我が祖国「エナトリア」といい、前近代的な専制体制を維持しながら、その実は宦官による寡頭政治なのだ。これだけ聞いても既に危うい雰囲気があるが、西方で発生した産業革命を導入するのも遅れ、いよいよ亡国が目前となって来た。
自覚無き衰退とは恐ろしいもので、宦官共は「全マスリア教徒の保護者」を名目として西方の世界大国と戦争を画策しているというのだから失笑ものである。だが、一国民として、失笑だけでは終われない。この政府は救えなくとも、タルキリの民を救うため、西方と戦いながらエナトリアを残す策が、いよいよ必要になって来たのだ。
「俺の名が、教科書に載ることがありませんように……!!」
そう願うことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます