第19話サロンで兄達と話をしました
「そういえば毎日クラブの見学をしているんだって? どこに入るか考えているの?」
「どこも良いところが多くて困っているのですが、研究開発クラブにでも入ろうかなと思っていますわ」
「あぁ、あそこは研究オタクで他人に興味がないやつばかりだからいいんじゃないか? エディット、お前から見てどうだ?」
兄は護衛のエディットに意見を求めた。ブルーノもエディットも毎日護衛をしているので状況を一番知っているからね。
「私見を述べますと、研究開発クラブがブランシュ様にとても合っていると思います。
その理由は、部員は爵位を持ち、王宮の就職を目指しているため問題を起こしにくい。
各人研究に没頭しているため、ブランシュ様を必要以上に構うような事はなさそうです」
「うん、そっか。エディットがそう言うなら大丈夫だろうね」
「そうよね。ブランシュは可愛くて賢いから皆が放っておかないけど、研究開発ならあまり表にでないから良さそうよね」
どうやら三人とも反対はないらしい。
「他に良いところはあるの?」
「そうですね、刺繍クラブも気になっていますわ」
「あぁ、あそこは独特だものね。あそこも良いといえばいいクラブよね」
淑女の嗜みとして覚える刺繍。婚約者に刺繍のハンカチを送るのは一般的よね。でも刺繍クラブはもっと刺繍を楽しみたいという人達の集まり。
先生は男なのだけれど、とても素晴らしい刺繍をしている。刺繍は芸術ではないだろうかと考えてしまうもの。
各々下絵を描き、それを元に刺繍を刺していく。地味だけれどとても根気のいる作業ね。
「そういえば、学園に入ってからブランシュへの釣書がひっきりなしに届いているんでしょう?大丈夫?」
モニカ姉様が心配そうに聞いてきた。私はその話に驚いた。だって誰も私にそんな話をしなかったから。きっと今までもそうだったけれど、家族も従者達も私を心配して私が好きに動けるように雑音を減らしていたのだろう。
「お兄様、本当?」
「あぁ、まぁそうだな。特にブランシュが助けたコーウィンさんは学園卒業後、辺境伯領に帰ってブランシュを嫁に迎えるため、死に物狂いで修行しながら領地改革を行っているらしいぞ?手紙がよく届く」
「そうなのですね。私には一通も手紙はありませんが?」
「あぁ、だってブランシュ宛の手紙は全て管理されているからね」
兄の言葉に納得した。
そうね、そうよね。昔から脅迫や呪いの手紙など様々なものが送られてきていたので父達が検閲した後、私宛の手紙が渡されていたわね。
知り合いもいないしと開封せずに手紙が束になっていくのを放置している私も悪いよね……。
これからはちゃんと読まないといけないわね。ちょっと反省する。
「でも、コーウィン様は何故お兄様に手紙を?」
「あぁ、学園で上級生だったし、交流があったからね」
「学園でのコーウィン様はどのような方だったのですか?」
「彼はブランシュと会った頃はヒョロヒョロで辺境伯子息という感じでは無かっただろう?襲撃の後、彼は学園を半年休学し、修行に明け暮れ学園に戻って来た頃は別人のようになっていたらしい。俺が見たときには熊のような大きさで驚いたよ」
「……熊、ですか?」
「そうなのよ。私達も驚いたわよねー」
モニカ姉様達もコーウィン様の変わりように驚いたようだ。どれくらい変わったのか見てみたい気もする。
「コーウィンさんは真面目だからな。成人し、父上に正式な婚約の書類を出したらしい。
ブランシュに会いたいと言っていたが、父上はのらりくらりと躱している。ブランシュも彼が変わった姿をみたいだろう?」
「まぁ、あの時の彼がどうなったかは気になりますね。でも私が会えばお父様達の今後に影響があるのではないですか?」
「心配しなくても大丈夫だよ。会うとすれば今度の王宮の舞踏会がいいんじゃないかな?ブランシュも十五歳。
そろそろ舞踏会に出てもいい歳だろう?ブランシュを一目見ようと舞踏会は大盛況だろうな。
コーウィンさんもきっと参加するだろうから挨拶程度なら会えると思うよ」
「そうなのですね。でも公の場に出るのは少し怖く感じます。また皆に追い掛け回されるのではないかと」
私のチキンハートは考えるだけでもプルップルよ!
王宮の舞踏会なんてどれだけの人数が集まるのか皆目見当も付かないわ。
この美貌よ?
怖いわー。
人前に出る恐怖。
美人は美人で辛いものがある。
「心配しなくても大丈夫。私達も片時も側から離れないし、ヴェルナーもいるからね。せっかくの舞踏会デビューなんですもの。私達がプロデュースしたドレスを着てもらいたいわ」
「姉様達がドレスをデザインするなら間違いないですね!」
「そうよ? ロラが装飾品、私がドレスをデザインするって決めているんだから。おじ様達にも既に話をしてあるし、大まかなデザイン画を見せて許可を貰ったのよね。今から楽しみでしかないわ」
「お姉様達が一緒ならなんとか乗り越えられそうな気がします」
「ブランシュ、もちろんファーストダンスは父上だろう?」
「もちろんですわ!二番目はお兄様なの」
家族揃っての舞踏会はなんだか楽しそうな気もしてきた。兄様達と楽しく話をしているとそろそろ就寝時間だとマリルが告げる。
「明日はクラブを決めますし、今日はそろそろ寝ますわ。お兄様、お姉様、おやすみなさいませ」
「「「おやすみ、ブランシュ」」」
お兄様達と話をしてクラブを決めた私。
学園生活が楽しくて仕方がないの。
だって今まで外も人も怖くて出ることが無かったけれど、こうして皆に守られて勉強が出来る。
なんて素晴らしい世界なのだろう。
以前の私なら外が怖くて出たくない、世界は自分の家族だけで回れば良いと思っていた。
こうして少し前向きになったのはきっとクラスのみんなのおかげだわ。
感謝しなくては! そう思い眠りについた。
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