第14話 学院に入ります!
そんなこんながありつつ、ようやく私は十五歳となりました。
この五年間は特に変わったこともなく、のんびりと恙なく暮らしておりました。刺繍の腕はちょっと上がったけれど、相変わらず上位層に食い込めるわけでもない。
そうそう、自宅筋トレについてはコツコツと頑張った結果、引き締まったボディを手に入れました。美の完全無欠の究極体ですね。残念ながらムキムキマッチョとはほど遠い。
やはり負荷が大事なのか!?
マリルやエディットは分厚い本を持ちながら筋トレしようとするとすぐに止めてきた。でも護身術(体術)については最低限の事だけ教えて貰えました。
私はもっと教えて貰いたかったのだけれど、マリルは駄目だっていうんだもの。
その代わりといっては何だけど、掌よりも小さなサイズのナイフは最近扱い方を教えてくれたわ。無いよりはマシよね。投擲と縄を切るためのナイフ。太ももに落ちないように常に付けておくものらしい。
痺れ薬も塗ってあるらしいので取り扱い要注意よ!!
そして十五歳と言う事は私が学院に入る歳。こんなに狙われている状態で学院に入るのは怖い。けれど、貴族の殆どは入る事になっているのでご多分に洩れず私も入学する事になった。
学院は全寮制でもあるのよね。
父は私と離れる事を大泣きしてどうにか邸から通えないかとか病弱なので入学させないとか色々と考えていたみたい。母に叱られて渋々入学の手続きをしていたわ。兄は一足先に男子寮に入っているの。
私はというと、どうやら王家から特別許可を頂いて王族の寮に入寮する事になったみたい。特別扱いよね。
警備の観点からそうせざるを得なかったらしい。
学院内で誘拐事件なんて起こったらそれこそ国の恥だしね。
ちなみに現在寮住まいになっているのはカインゼル殿下のみ。今年十八歳で兄と同じ年なの。最上級生ね。
カインゼル殿下も弟のウェイン殿下も婚約者は居ない。カインゼル殿下が十二歳のお茶会の後に本当は婚約者を決める予定だったみたい。
当初、私との婚約が一番有力とされていたらしいけれど、私と話す前に私が帰ったことで選べなかった、と。将来の王妃としての資質も加味されるのだけれど、私は未知数。
家庭教師がことごとく辞めさせられているからね。
王族になれば警備は最高だけれど、私が将来外交やお茶会を開く?
無理無理!
絶対むりぽ。
王家側から『美しいブランシュ嬢を王家に迎えたいが、頭が悪くて顔だけとなると厳しい。愛妾として考えたが、それには爵位が高すぎるので難しい』と言ってきたらしい。
いやいや、私の気持ちは二の次かよ!って思ったね。
私は側妃にも妾にもなりたくないわ。
だからって王妃もやだよ?
こんなにもインドアの私が突然外に出るなんて無理ゲーだわ。
そうか、あの時断らずに辺境伯へ嫁げば良かったのか。でもなー。私弱いし、無理ぽ。
一撃で即アウト!
かといって爵位の低い人との婚姻は財力や権力で私が連れ去られる危険もあるとかで駄目らしい。
……中々に難しいんだね。
結婚できないかもしれないよ、今世も! 前世はお先真っ暗って思ってたけれど、今世は結婚できなくても家族と暮らせるから明るいわ。お外で仕事が出来る気がしないし。
よし、当面の将来の夢はお家で内職しながら生涯を過ごす!
よし、それでいこう。
そうしている間に入寮の日が来た。
「エディット、ブルーノ、準備はいいかしら?マリルも」
「もちろんですよ、お嬢様」
これからの寮生活に護衛のエディットとブルーノ、侍女はマリルが付いてくれることになった。
この人選は水面下で激しい戦いがあったらしい。
侯爵家で一番腕の立つエディットとブルーノ。護衛騎士達の中で戦い、強かった者二名が選ばれた。エディットは群を抜いて強かったのだとか。マリルも戦闘侍女としてより厳しい戦いを潜り抜けたって聞いたわ。
ごめんね、ぽんこつな主人を守るために。
護衛を引きつれた侯爵家の馬車は寮へと入っていく。
私の生活の拠点となる王族寮は思ったほどではなかったわ。王族も他の貴族と同じような生活をするのが目的なのかもしれない。とはいっても他の貴族の部屋に比べると格段に広いらしい。
自室にお風呂、トイレはもちろん、小さめのキッチンや侍女と護衛の部屋も用意されている。寮内にはサロンがある。
ここ数年は他国の王族が留学してくる事もなかったらしくカインゼル殿下だけの寮とされ、サロンは使われる事がなかったらしい。もちろん食事も寮で用意される。
しっかりと選別された料理人や毒見係が殿下の安全を守っている。私がそれに便乗する形を取ってくれるらしい。ありがたや。
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