皆の溺愛は信じたくないから調べあげます!
アサルダ
第一話 見た目に溺れるな
とある街にある大きなマンションの屋上で一人の女性が命を絶とうとしていた。
「あんなくそみたいな人間…助けなきゃ良かった…」
かつてこの女性はとある仕事であるカップルの親友が助けを求めて来たときあった。
「玲、助けて!」
その時に玲は彼女を近くのレストランで待ち合わせて事情を聞くことにした。
それで聞いてから玲は得意の調査を始めた。
井川 玲の職業は普通の会社に勤めるOLで、副業として探偵みたいなことをしていた。
隣人トラブルや友人の問題もいろいろと解決してきた。
今回もそんな簡単な事件かとも思った。
話によると、助けを求めて来た女性は実は彼氏が浮気してるのではとのことで、刑事に引っ掛からない程度の調査で彼らが浮気をしていたことが判明し、さらに浮気相手である女性も調べたらある大企業の秘書だということが分かったこと、さらにさらにあったのはもっと酷いものだった。
自分が働いてる会社で横領していたのだ。
どうやら、社長と経理部の偉い人を篭絡して番号を聞き出したという最低なこともしたという。
それらの証拠もかき集めて大事なものは彼らと依頼人に知られてはいけないと何重にもかけた場所に仕舞い込んだ。
先ほどのレストランに呼び出し、浮気の情報を彼女に流し、証拠であるその写真も見せてあげた。
「そ…そ…そんな、あの人が浮気してたなんて……」と依頼人はそのショックに受け止められず泣き出してしまった。
「後はアナタが解決して」と言ってからその場から離れた。
彼女が泣き止むまで傍にいてやりたかったけどこれ以上は懐に刺激してしまうことになるだろうから彼女の分も一緒に代金を支払ってレストランを後にした。
それから、家に戻って合間に遊んでいるスマホで遊べる乙女ゲーム“深遠なる幻想”というR15内容のゲームだった。
一人のヒロインがある幻想の夢の中にある男性が現れる。
その男性は最初光のモヤに包まれていた。
その時目の前に選択肢が現れる。
“この人は…”という問いかけに一番上から“優しい感じがする”真ん中は“厳しい感じがする”最後に“臆病な感じがする”と出てくる。
この時に選んだ選択で攻略する相手が決まる。
本当だったらこのタイプのゲームは玲はやらなかった。
でも、友人が“仕事や趣味の間で良いから気分転換にこれ遊んでみたら”とおすすめしてきたのがこのゲームだった。
それで遊んでみたところ頭を使わないでプレイできたことは褒めても良いが、キャラクターが気に食わなかった。
三人の特徴として一番上から皇子×おとなしめ×略奪愛の金髪男性。
真ん中は騎士団長×生真面目×パワハラの青髪の眼鏡男性。
最後に魔塔の人間×臆病×ヤンデレの長髪黒髪の男性。
こんな何の変手もない男性で協力しながら切磋琢磨して恋愛成就するという話なのだが、話を進んでいくうちにエピローグである言葉が三人から溢すのだ。
“君の(お前の)(貴方の)お陰で事がスムーズに進んだよ”と。
その後に起きるのは言及していなかった。
これらを踏まえて彼らは悪い人間の部類に入るではないかと玲は得意の推測で決めつけていた。
それからは何かの陰謀を肌に感じてそのゲームから離れたその翌日だった。
突然、彼女が働いてる会社の社長に呼び出されたのだ。
社長室に行くと先ほどの依頼人と社長が不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「井川、何て事をしてくれたんだ!!」
話を聞くと玲が相手先のお金をハッキングして盗んだと変な濡れ衣を着せられてしまったのだ。
「そんなことはしてない!何を根拠に!」と返したら、依頼人の調査に行ったときに相手の会社について調べていたときの彼女の背中向で撮られてる写真を見せつけられた。
「お前が会社の人間を誑かしてセキュリティを聴いているのだってその会社から聴いたのだぞ」
どうやら、依頼人は“玲”という出来た人間を疎ましく思っていたのか、このような事をして来たのだ。
これを見て玲は呆れてため息を漏らした。
「私、嵌められたのですね…」
出来る人間より外見を見て選んだ人間に吐き気を催す邪悪を感じた。
「なら、こんな会社辞めてやります!そして裁判で会いましょう!」と捨て台詞を吐いてからそのまま自分のデスクに戻り、そして鞄に自分の不利益になるもの証拠になるものを逆に利用されないようにいっぱいいっぱいに詰め込んだ。
(相手がそうくるなら私も只じゃ置かない)とやり返したいと考え、玲は一度家に戻り反抗するために一番強い弁護士に依頼することにした。
しかしそんなことは上手く行かなかった。
弁護士の方は会社の圧力によって寝返り、彼女が持ってきた数々の証拠を消されてしまった。
おかげで向こうの思惑通りに裁判に持ち込まれ、有罪とされそのまま刑務所に入れられてしまった。
程なくして仮釈放されて、それで自分を追い込んだどうなったか様子を見に行ったら、別の会社が入っていた。
噂を聴いてみれば彼女がすぐいなくなった後、今までの業績が上手く行かなくなりそのまま倒産したという。
けれど、追い込んだ張本人は罰は受けていないという。
これらを聞いて、この
それが、今に至る。
「もうちょっとマシな世界で生きてみたいな…」と呟いてから玲は疲れた体を思い起こすように瞳を閉じてそして、ゆっくりとその身を下に向けて倒れていく。
マンションから飛び降りてる時に不意に何処からか声が聴こえてきた。
《なら、その御身我が預けて良いか?》
(何処でも良いからマシな世界に……)っていう心の声が了承と捉え、玲の身に変化が起きた。
彼女の体に小さな光が包み込みそして、全身にまで包み込んだ瞬間、この世界にいた井川玲の体が神隠しのごとく消えてしまった瞬間でもあった。
次に目を覚ましたとき何処か新鮮な空気を感じるような場所だった。
けれど、感覚は無に近かった。
見渡すほど白い空間、足を動かせばモワッと動く何かの
「ここは…」と声を出してみたら何か壁でもあるのか反響してるような感覚があった。
そんな不思議な空間で呆然と立っていると、不意に声が聞こえてきた。
「待たせてすまないね」
その声の場所は上から聞こえてきて、玲はそっちに顔を向けるとそこにいたのは悠々と浮かんでる白布一枚を全身で覆ったような男性が浮かんでいた。
髪はヒラヒラと舞うような綺麗な金髪だった。
「神様?」と目の前で起こっていることが事実と判断してるのに思わず疑問符を付けてしまうのは何処の神様か分からないからだ。
「ちょっと、地球の神を叱っていて来るのに時間がかかってしまってね」って言いながら彼女の目線まで合わせてくれた。
「地球の神を叱る?」
「終わったから教えておくけど、君が相手していた人間達なんだけど、勝運が異常に上がっていてね。規定の値以上の運が付けられていたんだ。」
詳しく説明するとこうだ。
元々、人間には生まれたときのステータスがあって、それをある程度のステータスになるのだけど本来そこで神様が弄れるのはほんのちょびっとだけ何だけど、その神様がどういうわけか贔屓して勝運だけをガンぶりに上げてしまったらしい。
(だから、私が勝てる裁判が何故か敗北したのはそういうことだったのか…)
そんなに運が良かったら、その所有者は調子乗るのは当たり前だ。
それで、個人の運はどうやって決まるかというと年を取ったり行動の良し悪しで決まるらしい。
例えば、良いことをすれば勝運と奇跡運が徐々に上がっていき、悪いことすればそれらが落ちるみたいになるらしい。
もっと悪いのがその神様が仕組みさえも変えたらしく。良いことも悪いことも関係もなくそれらの運が上がり続けるという。
(まるでチートだな)
「君の場合は、かなり良いことしてたから本来だったら君が勝つんだ」
「でも、あのチート野郎に負けるしかなかった」という言葉は何処か投げやりなモノだった。
「じゃあ、会社が倒産したのは?それと横領されてた会社は?」
それは、自分が刑務所に行っていた際にいつの間にか起きていたこと、そのチート野郎がいたのにも関わらず潰れたのはどうも怪しい。
チート野郎が影響していないのは頷けるが。
「君が刑務所に入った後ありったけの金を盗んで何食わぬ顔で辞表してきたんだ」
「だからか」という言葉が玲の口から漏れた。
辞表したということは会社が立ち行かなくなるのはチート野郎が去ったからその恩恵が切れたからだった。
「今は元の設定にしておいたから今頃、人間の警察に捕まってると思うよ、ほら」と言って彼は左手を出して二人の間に何かの空間が開いてそこから、彼女が住んでいたであろう地球の世界が映し出された。
そして先ほどの玲を陥れた依頼人でありチート野郎の自宅が映し出された。
その時、複数台のパトカーが押し寄せていた。
そして、何人かが家に押し込みインターホンを何度も鳴らしていた。
しかし、あちらの音声と環境音が聞こえてこなかった。
「あちゃ、地球め…」
どうやら、向こうで何らかの規制みたいなものがかかってるみたいだ。
「大丈夫ですよ。あれだけやれば短くない刑罰を受けるだろうから」
「なるほど、地球の法律は我らには干渉出来ないからな」とだけ言うと、神様は映像を消した。
「それに死んだ後の転生先選べられないからな」
「普通なら死んだ後、人間は肉体から魂が解放された後転生先選ぶことが出来る。さらに魂かなり綺麗なものであれば別の世界に転生先に選ぶことが出来る。君のようなね」と言ってから、神様は話題を切り替えるために一瞬で真剣な表情に変わった。
その表情に気づいた玲は、やっと本題に移れると思って、彼女も真剣な表情に切り替わった。
「そう言えば私の世界のこと“地球の”って言ってたよね。何処の世界の神様なの?」
「やっぱり、頭がいい人はそこに感づくよな」と言いながら、別の映像を出した。
その映像は何処か見たことのあるような雰囲気だった。
ファンタジーと洋風を混ぜたような物だったけど何処か懐かしみがあった。
すると、神様が映像に何かを加えるのか左手でフワッと揺らいだ。
その時、そこに映ったのはあのゲームの攻略キャラクターだった。
これを見てゲームの世界の神様だと、でも何処か妙である。
もし、神様が存在してるのならばあのゲームを創ったあの人間達はどう関係してくるのだろう。
「どちらかと言うと我が存在するようになったのは、地球の人間が創造すれば必然的に神が創造されるのだ。全ての神は創造神から創られるのだ」
「なる程ね。そういう仕組みなのね。じゃあ、こうしてる今も世界が産まれてるの?」と質問したら神様は一度頷いてから、ポツポツと本題を話してくれた。
「それで、頼みたいと言うことはこの三人を更正して欲しいんだ。ゲームのせいで彼らはずっと操られぱなしで元々の性格が歪んでしまった」
“歪んだ”という抽象的な言葉に玲は首をかしげた。
(確かに彼らに対する“違和感”は気づいていたが、“歪み”と何か関係するのだろうか)
あのゲームではヒロインのことを都合のいい女として存在してるような感覚があった。
そこについて推測を立てようとした時に死んでしまった。
「今回の場合、物語の強制力がかなり強くてヒロインだけは外すことが出来た」
それだけ聞くと大層いいことだとは理解できるが玲は不思議でしかなかった。
「普通、こういうのは悪役令嬢が役目になるのがセオリーじゃ…」と人間では当たり前である事象を言ってみるけど、神様首を横に振った。
「あまり、効果がないからだ。」
(そうでした)
そう、このゲームの悪役令嬢は対して悪役っぽいことをしてないからだ。どちらかという攻略対象者が 異常なだけである。
「ということでお主をヒロインにするのだが何か必要なことはあるか?出来るだけのことはしてあげる」
そう言われて欲しい能力を考えようとしたけどすぐに思い付いた。
「鑑定能力+心が読める能力、証拠となるヒントを見つける能力」
それはもう、犯人特定のためのチート能力だ。
でも、これぐらいしないといけない相手だから、チートに頼りたくなる。
「魔法とか良いの?」
あの世界では魔法とか使えるのは、心踊るが彼女にとってそこまで引かれない。
何故なら必要以上の魔力や属性を手に入れたら変に目立つからだ。
「穏便に事を進ませたいけど出来ないだろう、無駄に目立ちたくないから」と答えたら、「ふうん」と言いながら何かのパネルを彼の前に出して何かを操作していた。
そして、全て終えたのかフゥンという音を立てて消えた。
「よし、これで転生の手続きこれで終了。お疲れさま」と言ったとき彼女の足元に白く光る術式が浮かび上がった。
「ちょっと、いきなり!?せめて神様の名前教えてくれませんか!産まれたときに知らないなんて恥ずかしいことしたくないんですけど!」
「忘れてた…大丈夫後で分かると思うよ」
最後に不穏みたいな言葉を小さくて聞こえてしまったけど、今は突如現れた術式に集中していた。
これに慌てる内に彼女の意識がぼぉーっとしてきた。
そして、完全に意識を失う直前にあの神様の声が微かだけどこれだけは聴こえた。
「玲」
(どうして……私の……名前を……)と疑問に思ったまま真っ白な意識の中に落ちていった。
「おぎゃあ!!おぎゃあ!!」
とある世界に、とある国に、とある屋敷に。
この日一人の産声を響いた。
「奥様!お産まれましたよ!!元気な女の子が!」と出産を手伝ってくれている一人の乳母がそう言うと、一生懸命出産してくれた母親が力を出しきったのか少し弱々しい声でこう言った。
「ああ、やっと……会いに来てくれたのね……愛する我が子……貴女の名前はミレイナよ」
そんな朧気ながら“ミレイナ”と呼ばれた赤ん坊はこの日、運命という戦場に舞い降りたのだった。
続
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