037-シトリン

「ふー」


私は溜息を吐く。

アンドロイドのガワ以外をすべて交換するという荒業に出た私は、パーツをすべて購入して作業に臨んだ。

作業用機械を使い、艦内工場でパーツ交換を行う。


「まずはメモリーを外してっと」


内部の記憶メモリーなどは、古すぎて代替ができない。

だからこそ最初に取り外して、作業中に邪魔にならないように端に置いておく。


「お兄ちゃんがこういうの得意だったな」


私の使っていたパソコンも、お兄ちゃんが一から組み立ててくれたタワー型だ。

私もそれを見て、真似しようと思ったけれど.....


「見よう見まねでどうにかなるものじゃなかったんだよね」


今だって、作業機械のアシストなしじゃ組み立てる事すらできない。

アンドロイドの中に残っていた構造維持データを無理やり設計図として読み込み、組んでいる最中なのだ。


「足りないパーツは船のモノでカバーできるしね」


古代遺物のパーツとか、最高技術レベルの兵装の部品だったりと、高価なものもたくさんあるが、どうせ売ってもロクな事にならないので、一気に使っちゃおう。


「~♪」


頭パーツの中身の換装は終わった。

ナノマシンで外装の修復を終え、ボディパーツの修復を始める。

胴体をナノマシンで再構築し、古いパーツをロボットアームで慎重に外していく。


「動力部はイニシオバッテリーなんだ」


本当に古いバッテリーだ。

現行で多くの機器に使われているバッテリーとは全く違う。

とりあえず、倉庫から持ってきたキャパシターバッテリーを積み込んでおく。

ボディの中身は簡略化するとスカスカだったので、アドバイスに従って構造材を入れる。


「よし」


あとは腕と足だが、こっちは新しく作ることにした。

中のパーツはナノマシンにお任せして、強化セラミックを腕と足パーツの形に成形する。

修復の終わったパーツを腕と足の中に組み込み、胴体と繋げた。

首のパーツと胴体を接合し、電源を入れる。


『..........アンドロイドCF-02β、正常に起動しました』

「どう? 気分は」

『ドライバーアップデートを開始.....前の機体性能とは大きく異なるようですね』

「...ただ、今のところはまだ使えないね」

『何故でしょうか?』

「店員用のインターフェースしか入ってないから」


操艦用のインターフェースを使うには、取り寄せをするしかない。

だが、それがまだ届いていないのだ。

今日中には届くはずなんだけどな....


『では、ワタシは何をすればよいのでしょう?』

「とりあえず.....うん、待機で」

『わかりました』


アンドロイドはその場で止まった。

….アンドロイド、アンドロイドって呼ぶのも面倒だな。

ディスプレイが黄色だし....


「それから、これからお前の名前はシトリンね。」

『シトリン.....記憶しました』


こうして、我がアドアステラに新たなメンバーが加わったのであった。




その後、私がとりあえずブリッジに上がろうとした時。

携帯端末に着信があった。

出てみると、


『き....聞こえるか!? アルゴだ! 追われてる!』

「聞こえているぞアルゴ、今どこだ」

『少し先の座標を送る! 急いでワープしてきてくれ! ワープドライブがいかれてて、右の機関の調子が悪い! ……生き残れたら、俺の奢りで何でも飲んでいいから!』


正直、助けてやる義理はない。

だけど......こんなに必死なら、きっとお兄ちゃんも怒らないだろう。


「ブリッジ!」

『はっ、主人!』

「ファイスか.....発艦準備! 5分以内に出発する!」

『御意!』


私はブリッジに指示を出し、自分も急いで艦橋まで向かうのであった。

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