029-『打破者』
「こいつだよ」
店主は私に、古そうな箱を渡してきた。
革やプラスチック製ではない、金属製の重いケースだ。
開けると更に金属製のケースがあり、それを開くと、ようやく銃が姿を見せた。
「これは.....」
見た目は、角ばった真っ黒なリボルバー銃に見える。
でも、変化は握ってみたらわかった。
「....凄いな、どういう技術なんだ?」
「そいつは
「人間に使えるのか?」
「はははは、大丈夫だ。そいつは原型から大分改造されて、整備性と互換性が高められてる。.....まぁ、それでも使いづらいが、あんたなら使いこなせるだろうさ」
起動すると、銃身全体に高速で赤いラインが走った。
すぐにそれは収まって、速度は遅いけれど銃口方面に向かうようになった。
「そいつはリボルバータイプで、一度に六発しか撃てねえ」
「となると、他の銃にだいぶ差をつけられそうだが?」
「威力がダンチなのさ、一発で戦艦の装甲に穴を開けられる」
「.....取り扱いに気を付けないとな」
「気を付けな、人相手に撃ったらまず死ぬぜ」
それは怖い。
この世界の戦艦はシールドがあるので、それすら貫通するとなると人体に撃ったらまず助からないだろう。
「素性のわからない俺に預けていいのか?」
「あんた、女性だろ? 強い武器は持ってて損はねえさ」
「...なんで分かった?」
店主にすら見抜かれるとは。
そもそも無理があったのだろうか。
「単純に姿勢だな、重心の置き方に違和感があった」
「改善するべきだろうか?」
「やめときな、命の奪い合いになったら、格好良さやメンツなんてどうでも良くなる。あんたもそうだろ?」
「......ああ」
店主の言葉は、物凄く重かった。
きっと、過去に誰かを撃ったことがあるのだろう。
「その銃は俺のじゃねぇ。俺のダチのもので、いつでも捨てちまえと言われて預けられた。あんたが使え...少なくとも俺は、あんたにその資質があると思ってる」
「...ああ、分かった」
私は頷く。
そして、店主からホルスター二枚と整備キットを購入し(流石にここはまけてくれなかった)、私は店を出る。
「主人、長かったようですが、何かありましたか?」
「銃をおまけしてくれたんだ」
「そうでしたか...」
ブライトプライムの街並みは、夕陽に赤く照らされ始めていた。
物資を購入して帰ろう。
数十分かけて歩くと、スーパーが見えてきた。
SF世界とはいえ、外見は思ったよりも普通だ。
「意外とスーパーは普通なんだよな」
「主人、自分は外で待機しております」
「頼んだ」
中に入るが、やはり前世のスーパーとはあまり変化がない。
強いて言えば、見知った商品が一切ないということだけだった。
生鮮食品といったものも殆どなく、缶詰や乾燥野菜などが中心だ。
私はトマト系の缶詰を数十個買い物カゴに入れ、トマト風ジュースも購入しておく。
トマトが好きすぎるというのは否めないが、別にこういうのは個人の嗜好だろう。
お兄ちゃんだって、猫好きなのを私にすら隠していたのを知っている。
それをどうこう言うのはおかしな話だ。
『2500MSCです』
「いやに安いな」
店員のアンドロイドは、気を悪くした様子もなく答える。
『これでも値上がりした方なのです、パサイア星系からの食糧供給が過多気味ですから』
「なるほどな」
パサイア星系というのが何なのか分からないけど、穀倉地帯ならぬ穀倉星系なのだろう。
そこからの食糧輸入が多すぎて、食品の単価が爆下がりしているという事だろう。
星間国家ともなると、その辺が大変なんだろうな。
『加えて、最近はプロトタイプの食品生産装置が開発されている最中ですから、仕事がなくなりそうで怖いですね』
「アンドロイドは、仕事が無くなったらどうなる?」
『......破棄ですよ、私たちに人権はありませんから』
「そうか」
結構えぐいんだね、その辺は....
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