011-依頼
「ふー.....」
私はお風呂から上がって、水分を飛ばした後に息を吐く。
お風呂に入っている一時間ほどの間に、服もマスクも殺菌・洗濯済みだ。
たっぷりトレーニングして汗を流して、お風呂に入って。
後は夕食ってところかな。
「結局、コンタクトを追加しちゃったんだよね」
艦内を移動しながら、私は携帯端末を操作する。
アルゴ・ヴェンタス。
変な人だったけれど、多分私を駆け出し傭兵と勘違いしてたんだと思う。
アドアステラを見られると面倒だから、あんまり下手に出入りするのはやめよう。
「信じられる人は選べ、自分が完璧と思う人間はダメだ。だが、人間性がダメだと思うのもやはりダメだ。つまりは......恩を売れ、絆で縛れ。友達が一番だな」
お兄ちゃんの語録を復唱する。
幸い一人でもなんとか動かせるし、補助のアンドロイドでも買ってそれでいい。
仲間は当分要らないかな。
「ん?」
その時、携帯端末が振動と共に音を鳴らす。
着信だ。
私は慌てて缶詰を机に置き、携帯端末に軽く指で触れた。
「何の用...だ?」
『傭兵登録は済んだか?』
「ああ、済ませた」
『日にちが決まった、これから四日後に出航し、同日以内に強襲を仕掛ける......というのが、俺たちの艦隊の作戦だ』
「......俺はどうすれば?」
『察しがいいな』
俺たちの、とわざわざ言うからには、私には別に動いてほしいという事なのだろう。
「わかった、データを」
『もう送ってある。輸送品カーゴに毛布が入ってるだろ、それに入ってる物理メモリに入ってるぜ』
「.......時代遅れだな」
『そうでもしないと、先にバレるんでね』
そういうわけで、TRINITY.の艦隊が出撃する二日前に出航することになった。
近くの惑星にワープしてから、ハイパードライブでデータにある拠点まで飛ぶ。
「報酬は出るんだろうな」
『心配するな、今回の規模はとんでもなくデカいからな。なるべく損害を与えてくれれば、個人報酬も出そう。その後の掃討に加わってくれれば、一般傭兵の相場で依頼報酬も払おう』
「助かる」
とにかくお金は必要だ。
この船の維持費は、当分単艦で賄えるものの、一度は修理をする必要がある。
資材も必要だし。
「それより、本当に身分を保証してくれるんだろうな?」
『勿論、ちゃんと頑張ってくれ』
好き勝手言っちゃって。
まあともかく。
「お仕事、だね」
仕事だ。
しかも、私が一番苦手な連携もある。
お兄ちゃん、私頑張るよ。
「......あ、忘れてた」
その時、私は開けかけの缶詰の存在を思い出した。
今日の晩御飯は鶏肉のトマト煮風だ。
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