043-三人の戦い
アドラスは戦場を睥睨する。
『(大した相手じゃないね!)』
エミド艦が近寄ってくるが、Ve’z艦の射程は元々が超長距離である。
『あの......攻撃してもよろしいですか?』
『エリアス様は君の好きにするといいと言ったのですよ? お構いなくやりなさい』
尋ねると、ケルビスから冷たく言葉が返ってくる。
アドラスはエリアスからのお言葉を期待していたので、舌打ちして意識を戻す。
『(でもこれは、禊って奴だよねっ!)』
自分たちはエリアスを裏切り......といっても、制御を失っただけの話だが、アロウトに二度と戻らなかったのも事実。
『ボクらもいるからね、負けないように』
『誠に不本意だが、助太刀しよう』
その時、ワームホールからポラノルとグレゴルが現れる。
ポラノルはノータイムで敵の渦中へと突撃していく。
砲撃を受けるものの、異常な頻度で次元跳躍を繰り返すポラノルを捉えられない。
『ポラノル....変わらないね』
『そうであるな』
ポラノルの形状は脱出ポッドか何かかと見紛うようなものなのだが、彼は「回避」と「妨害」に特化している。
『さぁ、ぶちかますよ!』
ポラノルは敵中で停止し、全方位に衝撃波を放つ。
衝撃波はエミド艦を守っていたシールドを吹き飛ばす。
『まだまだぁ!!』
直後、ポラノルから放たれた強力な電磁パルスが、エミド艦隊に直撃する。
シールドを張っているVe’z艦には何の影響もないが(そもそも電磁波程度簡単に対策できるが)、シールドのなくなったエミド艦は即座に沈黙した。
中の人間達は自由意思がなく、司令の受け取れない状況では何もできなかった。
『じゃ...行く』
アドラスがその全身から雨あられの如くミサイルとレーザーを放つ。
それらはエミドの前衛艦隊に直撃し、容易く船を残骸にしていく。
その隙にポラノルは戦線を離脱した。
『グレゴル、シールドを頼むよ』
『お前の命令は聞かん』
と言いつつも、グレゴルは相手のシールドのセキュリティシステムにクラッキングをかける。
当然ながら激しい抵抗に遭うが、超高速でアクセス権限を奪還したグレゴルは驚異的な速度でセキュリティノードを書き換え、シールドシステムを完全に掌握した。
『相変わらず速いねぇ』
『そのために設計されたのだからな』
グレゴルはネットワークシステムの維持管理、情報収集のためのハッキングのために特化された機体である。
『宝物殿』の維持管理を任されていたのは、その圧倒的なシステムリソースと、単純に割り振るタスクがないのを考慮されているからであった。
裏切った理由は、自分がいることで宝物殿が危機にさらされると考え、深宇宙に潜んでいたのだ。
『君の武装は、ニューエンド以外何もないからねぇ』
『砲台などいらんよ、システムを乗っ取って同士討ちさせればいいのだから』
グレゴルはそう言うと、くつくつと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます