038-王国軍の力
ザーガイナムへとジャンプしたVe’z艦隊は、即座に索敵を開始する。
そして、星系内に存在するのが王国軍の艦隊七万だけであるという事を認識した。
『全艦、アルカンシエル、ニューエンドのチャージ開始』
Ve’zの持つ超兵器であるアルカンシエルとニューエンドは、惑星間であろうと余裕で届く。
弾速は超光速であり、王国軍に回避など不可能だった――――はずだった。
『何!?』
直後。
オルトス王国の艦隊を、金色の光が包む。
それがアルカンシエルとニューエンドの直撃から王国軍を守った。
「クリストフ殿、これは....!?」
「スリーパーの防衛戦で、カル殿から供与された幾つかの秘密兵器の一つだ」
王国軍は即座にワープの姿勢に入り、Ve’zの艦隊へと一気に接近する。
「.....この艦はもう防御フィールドは張れん! 全艦攻撃開始!!」
王国軍はVe’zの艦隊に対して攻撃を開始するが、シールドに完全に阻まれて通らない。
『人間如きが――――不敬だぞ!』
Ve’zの艦全てから、細い筒状の何かを吐き出す。
筒はアクティブ状態になると黄色く発光し、自動で王国軍に対して攻撃を開始する。
「四隻ロスト!」
「何たる射程距離だ....!」
Ve’zの艦隊が強い理由は、アルカンシエルとニューエンドによる遠距離攻撃だけではない。
恐るべき追跡速度を持つ飛散型タレットであるダウンレイと、可動型のテンタクルレーザーによる超広範囲射程の戦闘である。
「まさか、TRINITY.から譲り受けた武装ですら、歯が立たないとは....」
クリストフはTRINITY.に掛け合い、ブライトプライム星系配属のTRINITY.艦に標準配備されている武装を王国軍に供与してもらっていたのだが、それを使ってもVe’zの艦隊のシールドを破ることすらできなかった。
「何か.....何か奴らに一矢報いる方法は――――」
クリストフは考える。
だが、そもそもそれが間違いだったのだ。
『あの.......死んじゃってください...』
アドラスの船体から夥しい数のレーザーとミサイルが放たれ、艦隊を蹂躙する。
通常のエクスティラノスと違い、前面にアイカメラを持たず、黒く大きなアドラスの艦は、王国軍から見ても異質に映ったようである。
自然とアドラスに砲撃が集中するようになる。
『痛いなあ、もう!』
だが、アドラスはエリガード並みの強固なシールド容量を持つ艦である。
王国軍六万の集中攻撃など、大した痛手でもないのだ。
『では、私めがその苦しみを取り払って差し上げましょう!』
直後、アルカンシエルとニューエンドが同時発射される。
アドラスは超兵器を持たないため、それを静観した。
艦隊は数度の防御フィールドを展開するが、
『成程.....毎度別の船から防護フィールドが展開されているようですね。恐らく使い捨てか、冷却に時間がかかるか......連続発射すれば問題ないでしょう』
王国自慢の秘密兵器も、破壊に特化したVe’zの兵器の前には無意味であった。
だが、ケルビスは同時にあることに気付いていた。
『(我々Ve’zが行った、初めての防衛でしょうか.....?)』
Ve’zは放浪時であったとしても、基本先手に回ることが多かった。
ワームホール内の惑星を潰しまわっていたアドラスがいい例だ。
攻撃の宣告をされてから攻撃に回ったのは、今回がVe’zの歴史上初の事であった。
『記念碑を立てるべきですね』
ケルビスの思考は既にその方向へと向いていた。
そのせいで、気づかなかった。
背後に回られていたことに。
『せめて、俺の命で以て!!』
クリストフの乗艦が、ケルビスに向けて突っ込んできていた。
シールドを前面に収束させ、ケルビスのシールドを破るつもりだ。
『愚かですね』
ケルビスの周囲のセントリーと、テンタクルが一斉に艦を撃つ。
オルトス製の貧弱なシールドは一瞬で崩壊し、クリストフの艦は穴だらけになって爆沈する。
「え、エリスーーーーーーッ!!」
最後まで片思いだった少女の名を叫びながら、クリストフは爆炎に呑まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます