037-王国軍の接近

その頃。

Ve’zのオルトス王国領外縁部、ザーガイナムに、王国軍の艦隊が集結していた。


「そうか....カル殿は来られなかったか」

「ええ、Ve’zの調査に忙しいとのことで」

「.....まあ良い」


その旗艦にて指揮を執るのは、クリストフ・アーリバル。

前回の戦いにおいて、生き残った数人の一人である。


「.....勝敗など関係ない、これは個人的な復讐でもある」

「...そういえば、あなたは....」


副官は、クリストフの当時の状況を思い出す。

ガゼラークⅣの消滅に巻き込まれ、ほぼ壊滅した艦隊だったが、そこに後続のクリストフ艦隊が到着。

そして、不明な敵艦に襲われ、交戦するも全く歯が立たずに壊滅し、艦内の生命反応をわざわざ探ったうえで一人ずつ潰されたのだ。

クリストフを含む数人は、艦内にあったシャトルで何とか離脱したものの、後続の脱出ポッドはワープ阻害なる未知の技術に襲われ、生還できなかった。


「散っていった仲間たち....それに、仕方がなかったとはいえ死んでしまったエリスの為にも! この戦いに負けるわけにはいかんのだ!」

「.....クリストフ殿、しかし...このような何も無い星系で、本当に接敵できるのでしょうか?」


副官が不安そうに問う。

ザーガイナムはもともとVe’zの主張する領土であり、幾度か艦隊が全滅している。

しかし、今では残骸と遺跡だけが残り、それらの遺構の生存しているデータバンクには何も残されていなかった。

ここは放棄された場所なのだ。


「奴らは来る、そのための準備は怠っていない」


クリストフは自信ありげに宣言した。

そしてそれは、確かな真実として彼らの前に君臨するのであった。







『私はエリスを殺した貴様らを許しはしない! もし我々を放置すれば、王国軍は集結し、そちらの首都星系に突撃を仕掛けるぞ!』

「これで脅しのつもりか.....?」


だとすれば、かなり幼稚に見えるが.....

まあ、いいだろう。


「メッティーラ、ケルビス、アドラス、聞こえているな? シュヴァリエ=ノクティラノスをそれぞれ二十騎連れて、周辺宙域に布陣せよ」


まあ、王国程度の技術力であれば、ニューエンドとアルカンシエルの斉射で終わりだろう。

アドラスの隠し機能も使えば、何か仕掛けていたとしても退くのは簡単だ。

今までアドラスがいなかったのは、相当痛かったんだと痛感させられる。


『『分かりました、エリアス様』』

『分かり...ました...』


アロウトは少しだけ騒がしくなる。

キジラ=ノルティノスたちがその機体をシュヴァリエ=ノクティラノスに移し替え、三人の指揮下へと配属される。

ケルビスは義体を農園惑星に置いていたため、急いで戻って来て艦に乗り込む。


「では、頼んだ」

『お任せください』


ケルビスを実質的なウィングリーダーとして、防衛艦隊は出撃していった。

さて、どう転ぶか......

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