006-恐怖の幕開け
「ぶわっはっはっは!!」
惑星C-00221、未開拓の惑星を見下ろし、ヴァンデッタ帝国の将軍ギーレスは下品な高笑いをしていた。
その余裕の理由は単純だ。
今から征服する惑星に、こちらを反撃する戦力はないからであった。
「わしの久々の任務が、こぉんなに楽勝な惑星の攻略とはのう! ぶひゃひゃひゃ!」
将軍は知らなかった。
まさか、ここの攻略を任されたのが、ここが元々Ve‘zの領域であったからであることを。そして、Ve’zの最高指導者のお気に入りの星であることを。
自分たちが星の輝きを妨げる遮蔽物でしかない事を。
「全艦載機を発進させ、地上の主要都市の制圧を行うのだ! ぶわっはっはっは!」
既に将軍の思考は、奴隷とした人間をどう痛めつけるかの一極化となっていた。
男ならば縛って痛めつけ、女ならありとあらゆる屈辱を...
下品な彼は慢心ゆえに、警戒を怠った。
「しょ、将軍閣下! 艦隊後方にワープアウト反応あり!」
「ん? 味方の救援か?」
「い、いいえっ、艦種識別...Ve‘zです!」
しかし、将軍は狼狽えない。
Ve’zとは元来全てに無関心な種族であり、自分には関係ない.........そう思い込んでいるからであった。
だが、既に遅い。
『最重要ターゲットを捕捉、
指揮官、クルセラ=エクスティラノスはそう命じた。
艦隊との距離は大きく離れているが、Ve‘zにとって大したことではない。
ほぼノータイムで、Ve’z艦隊から虹色の光線が全部で5つ放たれる。
通常のビーム兵器とは違い、それは圧倒的な熱量を維持したままヴァンデッタ帝国艦隊を薙ぎ払い、母艦を刺し貫く。
『『『『『エクスターミネーターノクティラノス、【アルカンシェル】再充填まで残り5秒』』』』』
アルカンシェルとは、Ve‘z側の通常兵器である。
人類側からすれば恐るべき量のエネルギーを消費し、あらゆるシールドと装甲を貫通して星系の端から端まで航続距離を自在に設定できる超兵器だが、Ve’z側は多少の差異はあるもののほぼ全艦がこれを標準装備している。
『攻撃続行』
『『『『『了解』』』』』
再び放たれた閃光が、難を逃れたと勘違いする帝国艦隊を今度こそ消し飛ばした。
母艦だけは崩壊を免れたが、それは却って不幸であった。
「ば、ばばばばば、馬鹿な、あり得ん」
人の死に耐えたブリッジで、将軍は先ほどの余裕はどこへやら震え上がっていた。
対処などできるわけがない。
射程外から、しかもワープした直後に攻撃してきたのだ。
こちらもワープで離脱したいのはやまやまだが、再発射まで5秒とかからなかった為、到底間に合うはずもなかった。
一縷の望みの艦載機も、馬鹿げた射程の副砲によって、大気圏へと降りる前にデブリと化した。
「つ、つう、通信を...救いを請わねば...救いを...」
将軍は真っ青になりながら、通信回線を起動しようとして、見た。
母艦に向かう閃光を。
「な、何故ぇえええええっ!」
次の一撃によって、母艦は完全にこの宇宙から消滅し、残骸が漂うばかりとなった。
腐っても帝国の主力艦隊だったそれらは、超兵器を前に5分と持たなかったのであった。
『では、デブリの除去を開始します。』
クルセラは引き続き命令を下す。
次席の権限者であるカサンドラが命じた、「宝石の埃を取っ払え」との指示を完遂するために。
『エリアス様の視界にゴミが写る事がない様、慎重に回収するのです。刻限は三〇〇秒後、迅速に!』
たった五分だが、難しい話ではない。
そのためにVe‘z艦隊は残骸回収用のドローンを積んできたのである。
5分もかからずに残骸は完全に回収され、クルセラの艦隊は撤収した。
これが、何千年もの沈黙を貫いてきたVe’zの、世界に対する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます