160-因果の果てへ

こうして、エミド侵攻は阻止された。

Noa-Tunは再係留され、平和が戻った。

そして――――


「御霊の下へ還った同胞たちに、今一度感謝と、葬送の祈りを」


俺たちは、獣人国の式典に参加していた。

途轍もない数が死んだ。

獣人国は真ん中から引き裂かれ、今もクレーターや割れ目が痛々しく残っている。


「.......」

「意外ですね、あなたが私たちのために祈るなんて」

「.......まあな」


ティファナが、俺にそう言ってくる。


「獣人国がこうなった責任の一端は俺にある。守ると約束したのに、すまない」

「いいえ......星空での戦争は、そこまで激化しているのですね」

「そう...だな」


Noa-Tun自体も修復作業に入っているが、何よりユグドラシル星系にあったあらゆる構造物を失ったのが痛い。

資源採掘を急ぎ行い、他国との戦いに備えなければ。


「すまない、不満も噴出しているだろう」

「いいえ。かつて我々を苦しめた国は、今や我々と同じ状況です。それもあって、過激派は矛を収めました」


今やイルエジータに存在する国々は、エミドによって焼き払われた結果、難民となり、困窮する結果となった。

彼らを積極的に支援することで、味方につける案も出たが.....

結局攻撃してきたので、しょうがないから自然に全滅するのを待つことにした。

どうせインフラはすべて潰れて、森は焼け川は枯れ――――人間が生きていける状況では最早無い。

だが、それより酷いのは――――


「...........」

「悲しいか?」

「.....いいえ」


俺たちはシャトルに乗り、クロトザクの惑星があった場所に来ていた。

エミドは惑星を破壊する技術を持っているらしく、ここにあったアインスとツヴァイトの故郷は既に砕かれてしまった。

地上に息づいていた生命も、また全滅し。

完全に焼いたとはいえ、アインスの統治していた場所も最早どこかすら分からなくなってしまった。


「悲しければ泣いてもいいぞ」

「.....では、少しだけ」

「ああ」


俺はコックピットからカーゴスペースに移り、すすり泣く声を聞いていた。







「それで? お前は何で生きてるんだ?」

「その......残骸に紛れて地表に落ちた後、しゃとる? を使って脱出したんだ」


俺は頭を悩ませていた。

カレンとかいう竜人が戻ってきたのだ。

今はとりあえずドライと呼んでいる。

どうも、教育措置が半端に行われているようで、俺への敵意と命令への忠誠心を同時に持っているようだ。


「し、シン様....あれ? 司令官に指示を仰ごうと思って、戻ってきたんだけど.......」

「よく帰還したな、オーロラ、連れていけ」

『はい』

「ま、待って、待て! わああああっ」


こんな様子では指揮官としては動かせない。

なので、教育措置を最後まで進める事にした。

これは一応、ルルのためでもある。


「.......まあ、これでいいだろ」

『司令官、これからどうなされるおつもりですか?』

「ひとまずは、戦力の回復.....まあ、それはすぐに終わるとして」


俺は目を閉じ、直ぐに開く。


「オルトス王国に攻め込むぞ」

『分かりました』


ビージアイナ帝国と隣接していて、適度に弱そうな国家。

オルトス王国に攻め入り、その領土を獲得して資源を奪取する。

それが次の、目的だ。

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