143-アルテミス
その頃、シエラ星系では。
シエラプライムⅡに建設された海底基地に、三人は潜伏していた。
「何があったんだろう....?」
「とにかく、電力系統は切りました、敵に見つかることはないかと」
「....そもそも、この施設をどうしてツヴァイトさんが...?」
ツヴァイトは、それに苦しげな顔をする。
「.....姫様が教えてくださいましたから」
「そうなんですね!」
「アインスさんとツヴァイトさん、仲良し!」
ツヴァイトはネムの言葉にもっと苦しげにしつつも、解説を続ける。
「ここは、本来であればNoa-Tunの水中哨戒用の基地として運用される筈の場所でしたが、現在は艦が出払っているので、臨時の基地くらいにはなるでしょう。食料も水もある程度は備蓄されています」
「空気は大丈夫なんでしょうか?」
「恐らくは」
ツヴァイトは頷く。
「救助待ちですか.....」
「何か不満が?」
「いいえ、シン様の為に何も出来ないことが、歯痒いんです」
彼女はルルの言葉に、一瞬目を見開く。
そして、どこか懐かしいものを見るように、ルルに優しい目を向けたのであった。
係留が外れたNoa-Tunの下部に、アザトースが出現する。
そして、魚雷発射管から六つのプローブを発射した。
プローブは光を放ち、次元の結節点に干渉した。
プローブ同士が線で結合した直後、その内側に次元断層が発生する。
『トラクタービーム、照射!』
そして、断層の内部から巨大なトラクタービームが放たれ、Noa-Tunを引きずり込む。
最後にアザトースがNoa-Tunと共に沈み、プローブが自爆した。
こうして、Noa-Tunはユグドラシル星系から完全に消失したのであった。
『Noa-Tun、オービタルコア出力消失により慣性制御システムが起動しません!』
『大丈夫だ、アルテミスとの係留システムとリンク!』
『了解!』
断層のはるか下。
そこには、ホールドスターとタメを張れるような巨大な建造物が浮いていた。
バスチオン 『アルテミス』 状態:係留 次元重力流
◇物資倉庫 状態:稼働中
◇修理ベイ 状態:稼働中
◇ドローンベイ 状態:稼働中
◇加工施設 状態:稼働中
◇研究施設 状態:稼働中
◇居住区画 状態:稼働中
◇弾薬庫 状態:稼働中
◇小型艦艇ドック 状態:稼働中
◇中型艦艇ドック 状態:稼働中
◇大型艦艇ドック 状態:稼働中
◇旗艦級ドック 状態:稼働中
◇戦闘指揮所 状態:稼働中
◆シールド 100%
◇シールド発生コア 状態:『稼働』
◆アーマー 100%
◇アーマーリペアシステム 状態:『稼働』
◆HP 100%
◇ディメンション・オービタルコアシステム 状態:『稼働中』
◆非常電源残量:100%
◇セントラルコアシステム 状態:『稼働中』
その名はアルテミス。
次元断層に作られた、潜宙艦の運用専用の建造物である。
しかしながら、主力艦のスペースに困ったシンが、一時的に物資をため込んでいた場所でもある。
ディメンション・オービタルコアと連結し、Noa-Tunも安定する。
『だぁあ....ここを使う事になるとは』
『敵軍はここに侵入する手段を持っていないようですね、今のところは』
二つの巨大な要塞が、お互いに平衡を保つ姿は壮観である。
アザトースに搭乗するシンは、それを見ながら息を吐く。
『アザトースをアルテミスへ着艦させろ、今後の計画を練る!』
『了解』
Noa-Tunを横目に、アザトースはアルテミスへと降りていくのであった。
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