シーズン7-対エミド戦線

141-敗戦

『BR-11SD星系で襲撃が発生』

『DFF-112星系、通信途絶』

『DFF-112星系、領土主張シグナル途絶』

『BR-11SD星系、通信途絶』

『113-4RT星系で襲撃が発生』

『44DR-23星系で襲撃が発生』


同時刻、全てのNoa-Tunの領土で襲撃が起きた。

未知の手段で出現したそれらは、各星系に設置されたアウトポストを破壊して回り、領有権主張ユニットもそれに含まれていた。


「何事だ!」


そして、てんてこ舞いのオーロラの前で叫ぶのはシンだった。

戦闘指揮所は今や、襲撃報告とその処理でスクリーンが埋め尽くされており、誰が見ても異常事態だと明白であった。


『司令官、全領有星系で襲撃が発生! こちらの防衛リソースを遥かに上回っています!』

「防衛戦力のない星系は捨てろ! ハブ星系の死守に努めるんだ!」

『了解!』


そして、その内にネットワークが遮断され始める。

防衛リソースを適切に配置することで、処理の軽減を行ったのだ。


「くそっ、よりによって今か....」


シンは苛立った様子で呟く。

何故か?

それは、ルルとネムの不在である。

彼女らは現在、ツヴァイと共にシエラ星系へとバケーションに出発していた。

長く平穏が続くと踏んでいたシンの計画の一環であったが、それが裏目に出た。


「シエラ星系との接続は!?」

『切断されています! ただし、建造物内の簡易AIからは犠牲者の報告はありません、何らかの手段で生き延びているものかと!』

「それが信じられるか!」


シンは叫ぶ。

だが、悠長に問答をしている暇はなかった。

突如、スクリーン全てが真っ赤に染まり、非常警報が響き始めた。


「何だ!?」

『大質量ワープ警報です! 大艦隊がユグドラシル星系内に存在しています!』

「バカな....」


シンの眼前のモニターには、攻撃されるクロトザクの光景が映し出されていた。

タルタロスが攻撃を受け、未知の熱線でシールドごと切り裂かれている様子が。


「防衛艦隊を出撃させろ! オルタネーター、カリブディス、モルドレッド、スレイプニル、レイピア、カノープス、デヴァスターの構成で行く!」

『了解! 出撃を開始します』


Noa-Tunから艦隊が出撃し、一斉にワープで突入する。

そして、クロトザク宙域へとワープアウト、即座に交戦状態へと入る。


「.....何だ?」

『敵艦のシールドに対して、武装が損傷を与えていません、減衰率、約1%以下。自然接合の範囲内に収まってしまいます』

「そうか」


シンは冷静で居ようとした。

だが、冷静ではいられなかった。


『敵艦隊、プライマリを防衛艦隊に切り替えました』

「近接戦闘準備!」

『攻撃開始』


防衛艦隊は謎の敵に対して近接戦に切り替えて応戦するが、そのシールドを突破することは出来ず、逆に謎の熱線で切り裂かれて爆沈する。

それは、フリゲートであろうと戦艦であろうと同じであった。


『敵の熱的兵器の原理が解析できません』

「シールドから船体まで一撃で....!」


シンは驚愕していた。

シールド防御も、アーマー防御も、船体防御も全く意味がないのだ。

武装は通じず、敵の攻撃は一撃必殺。

「チート」状態であった。


『防衛艦隊、98%を喪失...全滅です』

「.....くっ」


シンはその報告に表情を険しくした。

そうしている間にも、タルタロスは攻撃を受け続け――――そして、


『タルタロス、構造防御に限界....崩壊します』


映像の前で、タルタロスは粉々に爆散したのであった。

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