106-総評

結論から言うと、今回の戦いはあまり良いとは言えない結果で終わった。

最終兵器が相手の主力艦を一撃で撃沈できなかった事もそうだし、その後の乗員の動きも気になった。

主力艦を放棄して逃げようとしたのだ。

これはつまり、主力艦とは帝国にとって幾らでも替えの効く存在であると言う事だ。

少なく見積もっても、10。

多く見積もっても100隻以上は居るはずだ。


「そうなると、最終決戦ではこちらも1000隻以上の主力艦を投入しなければならないか」


間に合うかどうかはわからないが、資材は十分だ。

正直100以上の主力艦を扱う戦闘は、SSCでもやったことが無い...というよりは、資金とプレイヤー数的に不可能だったのだが、今回はそれも視野に入れないと負ける可能性がある。


「オーロラ、もし今から主力艦を1000隻建造するとなると、どれくらい時間が掛かる?」

『すべての製造ラインに向かう資源を回せば、二週間程度で可能です』

「そうか」


それはつまり、主力艦建造に注力する以上は、こちらも手札だけで戦うことになる。

損耗はほぼ無いが、これから増える可能性もあるか。


「ところでオーロラは、同時に何隻までを戦闘行動させることが出来る?」

『理論上は102211隻までですが、場合によってはその80%程に低下する可能性があります』


つまり、あまり侵略の手を広げていくと対処できなくなる可能性があるな。

やはり、ここは指揮官を増やしていくべきだろう。


「とはいえ、ネムのような例はそうそう居ないからな...」


ネムはルルと同じく、族長という特殊な血統のもとに生まれた子供だ。

獣人たちの遺伝子は特殊であり、成長過程での認識によって才能に変化が現れる。

力で...というわけではないが、族長の選抜には過程があり、その過程で遺伝子が変化し特殊なものへと変わるのだ。

族長の直系という遺伝子を持つ以上、これを覆す強い遺伝子は生まれにくい。

ルルは戦闘に、ネムは演算に特化した「覚醒」能力を持つ。

獣人は一時的に自分の身体能力を引き上げられるが、この二人の場合それは更に強大なものとなる。


「よし、ティファナに相談してみるか」


労働力であるドローンを提供し、代わりに国内の覚醒能力...主に知覚能力に長けた獣人を探してもらうとしよう。


「よし、それはそれとして...」


俺は別の問題に目を向ける。

それは、デーヴァがくれた情報。

あまり多くの情報は貰えなかったが、彼女はどうやら上層部と掛け合える身分の人間らしいので、偽情報を伝えておく。

彼女の身が危うくなるのを防ぎたいので、赤いパーソナルカラーの船を囮に使う。

最初から狙ってくれるならそれが一番いいからな。


「主力艦は首都星系に集中か...」


首都星系に攻め込むのは一筋縄ではいかないようだ。

まあ、守りが硬いのは当然のことだ。

主力艦は想定の十倍はいてもおかしくない、念入りな準備が必要になる。


「とはいえ既にアクセラレーションゲートは配置してあるからな」


首都星系に直接乗り込むのは難しい話ではない。

爆撃艦隊を送り込み、主要な建造物を破壊して離脱を繰り返す。

それを行うのは簡単だが...


「敵がこちらを超えるスキャン能力を隠していたら、まずいな...」


俺はより慎重に考えを進めていく。

流石に首都近辺の星系は手強く、オーロラの指揮でも難しい局面が幾つもあった。

だが、少なくともアインスは、俺の持つゲーム知識が無いとはいえ優秀な指揮官であり、船の情報は頭に叩き込んでいる。

素晴らしい程の戦果を上げていて、褒賞も考えていた。

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