079-Noa-Tun艦隊大決戦(中編)

その頃。

ユグドラシル側のゲートでは、艦載機母艦アイアンブラッドが待機していた。

本来の迎撃艦隊にはいない筈だが、オーロラの提案で作戦開始後に配備されたのだ。


「緊張しますなぁ」

「何しろ、神々の戦いですからな...鉄の馬も、まるで魔法のようです」


その内部では、獣人の戦士たちが談笑していた。

シミュレータとルルによる指導によって、新兵並には鍛えられた天空騎士団の面々である。


「我々は、遥かなる世界へ繋がる門を守る仕事を任された。鋼の敵を打ち破り、生きて還る事こそ最重要である」

「お堅いのは相変わらずだな、シュメト」

「黙れ、シッタル」


険しい表情で宣言したものの、仲間に笑われた男。

彼は狼獣人のシュメトであった。

笑った男はシッタル、獅子獣人である。


「何にせよ、我々の武装について確認しなければならんでしょう」

「決まっている、光の連弓と、爆発する筒。筒は全部で4つであろう。」

「おお、そちらは連射出来るのですなぁ、こちらは威力は高いが連射できないのが難点でしてなぁ」


獣人達は、互いに与えられた機体について話し合う。

だがその時、艦全体に警報が響く。


『騎士団に告ぐ。これは星空の帝王の勅命である。鋼の馬へと乗り、星空へと飛び出せ。門が開こうとしている、帝王の星域を侵そうとする愚者共を排除せよ』

「おっ、出撃ですな...胸が高鳴ります」

「勝利は我らにあり!」


獣人達は、廊下へと飛び出す。

既に、廊下には数人の獣人達が駆けており、天空騎士団の総勢30人が揃うのはあと少しのことであった。







「やっぱり来たか」


艦隊が防衛していたゲートから出てきた艦隊二十隻が、ユグドラシルゲートにワープするのを確認した。

既にユグドラシル側ゲートには範囲型インターディクションが展開してあるので、仮にジャンプしたところで逃げられるわけではないが。


『戦闘機隊、全機出撃を確認しました』

「ゲートの周囲を周回するように命じろ」

『了解』


そして、そう遠くない時間を経て、艦隊がゲートにジャンプしてくる。

戦艦8、駆逐艦6、フリゲート艦6ってとこか。


「艦載機、ドローン、全艦船...包囲陣形! 5秒後に総攻撃開始!」

『了解! 総攻撃開始!』


艦隊は恐らく待ち伏せを想定していて、即座にワープで離脱する用意ができていたようだ。

問題は...インターディクションの存在を知らなかった事だろう。


「アンカーレーザーを撃て! ジャミングをかけて足を止めろ!」


フリゲート艦の相手は、艦載機隊に任せる。

俺たちが狙うのは、戦艦だ。


『A02戦艦、撃沈を確認』

「よし」


どうやら、向こうも人間らしい。

ゲートに引き返す選択は取らず、あくまで戦うようだ。


「だが...無駄な事は、無駄な事だぞ?」


俺は嗤う。

斥候も出さずにゲートに飛び込んだ時点で、こいつらの運命は決まったようなもの。

ユグドラシルには通信ジャマーが既に掛かっているので、もうこいつらは互いに通信する事もできない。

指揮が行き渡らず、ただ無為に死んでいく張子の虎である。


「やっぱり、ナージャ達が異常だったのか...」

『ふふん、Ve‘z、高水準』


ナージャ達のドローンは、ジャミングがほぼ通らなかった。

だが、このビージアイナ艦隊は違う。

殆どのジャミングに耐性が無く、せいぜい効きが悪いのはECMくらいのものであった。

よく通るせいで、こちらはまともに反撃を受けていない。


『それから、第二ステーションの攻略が終了しました。現在はこちらの判断で第一ステーション前で、防衛艦隊少数と交戦しながら、ステーションの破壊中です』

『ゲート、封鎖。次に移る』

「...ああ」


順調だな。

だが、油断はできない。

まだ何か...何か...絶対にある筈だからな!

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