015-すれ違い

『それでは、A-0001未探索惑星の管理者候補種族代表との統治手段・管理体制・安全保障に関する会談を開始します』


そんな、オーロラの声と共にモニターが起動し、幼い少女二人が画面に映った。

二人が現在いるのは”防疫区画”。

未知の病原菌を持つ可能性のある二人は一旦隔離されて、別室から会議に参加している。


『..........』

「...........」


回線が繋がった瞬間、俺は硬直した。

相手の少女二人が、お腹を見せた姿勢だったからだ。


「....オーロラ、こういうのは何て言えばいいんだったか」

『平伏の姿勢、です。獣人の文化はより動物に近いようですね』


へそ天ってやつだったか?

いや、あれは油断してる時のポーズだ。

なら、これはリラックスをしているということか?


「.......とりあえず、元の姿勢に戻ってくれないか?」

『『はい』』


声に重なって、日本語での声当て(CV:オーロラ(再現音声))が聞こえてくる。

俺はそれに応じて、椅子に深く座り込んだ。


「俺は君たちと話がしたい」

どのような事でしょうどんな事ですか、星空の王様?』

「君たちは部族の代表イケニエかな?」

『はい、皆が私たちを選びました捧げました


やっぱり代表か。

お姫様みたいなものかもしれない。


「なら話は早い。俺は君たちをこの星の管理者支配者にしたいんだ」

『そんな、私たちには畏れ多いです...』

「人間は信じるに値しない、その点君たちは虐げられていた歴史を持つ。

それに、暴走するようなら君たちを消し飛ばす事も容易だ」


消し飛ばしはしないけど。

バイオマスと鉱石資源の安定供給場所を潰すわけにもいかないしね。


それでしたらだったら一度帰還して村に帰って、皆と相談したいですすればいいよね、お姉ちゃん!


その時、ずっと喋らなかった片方の子が発言した。

もう片方の子がそれを止める。


「オーロラ、二人の名前は?」

『今発言したのが”ネム”、それを止めたのが”ルル”です。』

「発音は?」

『Ne-MuとLu-Luで”日本語”と同様の形式です』

「わかった」


俺は頷く。

苗字のようなものがないのは気になるが、些細な問題だろう。


「次に、安全保障の体制だな」

『そんな、守っていただくなんて...あまりにも星空の王様には、あまりに勿体無い事です...』

「守る必要はない。人間側の兵站を壊滅させる方針でいる」


海水の雨を降らせて塩害を起こさせたり、それとも畑を一個一個潰して回るか、それとも交易路を分断するか。


「人間が兵力を出せないようにすればいい」

『しかし...それはあまりにも無慈悲というか...かわいそうです...

「...お前たちが慈悲をかけるというのなら、攻撃対象にはしない。けれど、あちら側から攻撃するようなら、容赦なく報復攻撃を仕掛ける神の力で罰を与えよう。」


流石に過激すぎたのか、二人はビクッと痙攣して縮こまる。

ドローンだけで管理するのはリソースを割くから嫌なだけで、この代表者二人を経由して獣人を統治して、工場や採掘拠点を守るのはいい。

人間は数も多いしどうせ欲深いので、力ある者が強者らしい獣人の方が御しやすい気がする。


「話は終わりだ」


俺は話を続ける気を失って席を立つ。


『よろしいのですか?』

「代表者は地上での話し合いを経由する必要があると言っている。大体、あの二人には荷が重いように感じる」

『....艦隊総司令、もう少し滞在するように促せますか?』

「なんでだ?」

『検体のデータがもう少し必要です、対象のストレスを増加させない方針でプロセスを進めるには、おおよそ22日を要します』

「わかった」


俺はマイクをオンラインにし、言う。


『........』

「だが、せっかく呼んだのだ、しばらく泊まっていけ」

『『ありがとうございます!』』


翻訳を通さないと会話ができないのも問題だな。


「.....丁度いい、俺も獣人の言語を学ぼう」

『ほ、翻訳を通せばいいのでは.....?』


何やらオーロラが狼狽える様子を見せた。

お前はAIだろう。


「直接会話したくなった」

『わかりました、艦隊総司令』


くだらない動機かもしれないが、趣味は出来たな。

俺はそう思いつつ、通話モニターを消した。

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