書き込まれたノート
アンリ
君の眼に映る夜空は
夜。
それは人間の寝る時間。
住宅からは次々と明かりが消え、地上が暗くなる時間。
そして、闇が濃くなると同時に光るものがある。
それは、星。
次々と暗い空を彩って光り輝く星々。
しかし、最近は田舎のこの町でもあまり見えなくなった。
そもそも、あまり空を見上げなくなった気がする。
子供から大人になり、興味が移り変わってしまった気がする。
あんなに星空が大好きだったのに。
光り輝く星。
まるで、闇夜を照らす希望のしるべたち。
もしくは、自分はここにいると訴えるために必死に叫ぶように光っているのか。
実際は小さく見えるだけでこの星たちはきっと、この地球の外に広がる宇宙のどこかにある、もしかしたらこことは違う世界なのかもしれない。
結局のところ、私は星のことを何にも知らない。
いや、理科の授業で習った範囲ぐらいは知ってる。
けど、それって知ってるうちに入るの?
私が見えてるこの星たちって、この星たちの全体のどのくらいが見えてるんだろう。
……人間と同じだ。
その人を見て、その人と話して、その人と一緒に過ごして。
私は結局その人のことをどの程度理解してるんだろう。
もしも、満天の星空を誰かと一緒に見るとして、その人と同じものを見ることができているのだろうか。
同じものを見ているという証拠も、理解してる根拠もこの世のどこにもない。
だから、だからこそ。
この世界は面白い。
同じものがないってことは、人の数だけの個性があるんだ。
もしかしたらそれは星と同じ数なのかも。
同じになれないことを嘆く必要なんかない。
違うことは間違いなんかじゃない。
そもそも、同じになることなんかできない。
そして、それはおかしいことじゃない。
同じものを見れないのは、寂しくない。
むしろ、お互い見ているものを共有できる楽しさがある。
知らないものを知る、わからないものを発見する。
人生にはそんな楽しみがある。
……こんな話をしたら、あの人はなんていうかな。
相変わらず変わってるね、って笑うのかな。
笑われてもいいけどね、あの人はバカにしてないから。
むしろ、それが私の良さだねって言ってくれる。
よし、今夜電話した時にちょっと言ってみようかな。
一緒に空を見よ、って。
で、見ながら、こう聞いてみよう。
「ねえ、あなたの眼に映る空はどんな空?」
書き込まれたノート アンリ @uraraw
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