再編集  #1 いかさま師vs転校生~大富豪編~

@kokoroyomi

第1話 始まり


桜咲く季節、彼は一人の不思議な少女と戦った

彼の名前は伊藤 大輝(いとう ひろき) 高校1年生

曰く、彼の親がお天道様のように大きく輝くようにとつけた名前だがそれらしい出来事はまだ起きていない


ジリジリジリジリ

朝、眠い目を擦りながらベッドから起き上がる

「眠い」

無意味に発したその呟きは部屋中に反響を繰り返し、やがて彼の耳元へ来た。誰もいない、その事実が彼に恐怖を与え、彼に安心を与える

(ご飯、作らないと)

慣れない手つきで料理を作るその様は、まるで機械を使う老人そのものだ

少し焦げた玉子焼きを米の上に乗せ彼は一人静かに食べる

「行ってきます」

彼は言った。なぜなら、それは彼にとって毎日言っていた『当たり前のこと』なのだから


登校中彼は寄り道をした

「お品ものは以上で宜しいですか」

「はい」

彼は近くのコンビニに寄り、おにぎりを2つ程買った

「お箸は何膳おつけしますか」

「・・・」

彼は機械的に話すこの店員を見て少しイタズラをしようと考えた

「一膳で」

「はい、かしこ...え?」

おにぎりしか買っていない彼が言ったこの言葉は、機械的に動く店員を慌てさせるのに十分な言葉だった。箸を出さないと考えた店員は脳と体がリンクしていないのか可笑しな行動をとっている

その様子を見て、彼は心の中で少し笑みを零した

「嘘です。すみません」

彼が店員に謝ると店員は

「おしぼりは一つでよろしいですね」

と答えた。店員の言葉は先ほどの機械的な言葉とは違い、一人一人に向ける心を持った言葉だった

「はい」

彼はまた心で笑った


「おはよう」

学校に着くと一人の声。反対側を見ると友達と思わしき人が手を振っている。仲良さそうに

教室に着くと話している人、寝ている人、一人で遊んでいる人様々である。彼は一人で座っていた。彼の今住む町に昔の知り合いは居ない

「おはよう伊藤」

伊藤はこのクラスに一人しか居ない。すなわち、この言葉は彼に向けられたものだ

「おはよう遠藤」

彼が後ろを振り向くと、同じクラスで席が後ろの遠藤 雄大(えんどう ゆうだい) が居た。彼と遠藤が知り合ったのは入学式の日、彼が一人で居る所に遠藤が「トランプをやらないか」と誘ってきたのが始まりだ

「朝っぱらから元気だな」

いつもと変わらない遠藤をみて安心した彼

「五月病かも」

彼の通っている高校はかなり偏差値が高く、その疲れが今になって襲ってきたのだ

「何言ってんだ まだ4月だぜ」

彼の発した、意味の無い言葉でさえ遠藤は返してくれる。彼は、ほんの少しの不安と嬉しさを持ちながら答えた

「そう言うことじゃないよ」

「それより聞いてくれよ伊藤、昨日トランプやってたんだけどよ、 またボコボコにされちゃって少し手伝ってくれねえか」

遠藤は彼がトランプ等のゲームが得意なことを知っている。なぜなら彼は遠藤に勝負を挑まれた日、イカサマを使い遠藤に何度も勝利したのだから

そんな遠藤の言葉に彼は

「またか、毎度毎度よく懲りないなこの前は七並べだっけか?」

呆れたように言った。この遠藤と言う青年は彼がイカサマを使ったと正直に話した後も真っ正面から来るそんな真っ直ぐな奴なのだ

「それで 、今回は何のトランプゲームで負けたんだ?」

そう彼が言うと遠藤は間髪入れずに

「昨日やったゲームは大富豪だ!」

と、誇らしげに言った

「はぁ、何で自分の得意な分野で勝負しないんだ?遠藤はスポーツ推薦でこの学校に入れるくらいには運動神経いいんだから、 スピードとかやってみればいいのに、、、」

当たり前のことを遠藤に言った

しかし遠藤は

「 いや、自分の弱い所で戦ってこその本当の勝利じゃないか」

と持論を述べた

「俺が手伝ってもか?」

そう聞くと

「それはそれ、これはこれ」

と言う

(都合のいい言葉だな)

しかし、遠藤の諦めない精神に心打たれ彼は

「分かったよ。放課後協力してやるよ」

と言った

ガラガラ

五月蝿いながらもはっきりと聞こえる音、皆がそちらに視線を向けると担任の教師がいた

「皆、席に着け、、、」

(何か変だな)

彼は人の顔色や行動を観察する癖がある。

(この先生はこんな落ち込んでいる性格ではない、どちらかと言うとThe 熱血教師みたいな性格だ)

「 突然だが みんなに転校生を紹介する」

この言葉にクラス一同唖然としている

(この先生は何を言ってるんだ?俺たちは1年生で、しかもまだ4月だぞ。 もしかして、先生も五月病か)

彼がそう思った時、彼の背後から何処か既視感のある丸められた紙が投げられた。恐怖と不安を抱きながら恐る恐る紙を開くとそこには

[まだ4月だぜ] by遠藤

と一言だけ書いてあった

(怖いよ、なんで分かんだよ)

彼が安心し、遠藤に対する別の恐怖を感じていると

「おいそこ、 静かにしろ」

響く担任の声が聞こえたが、やはり元気がない

早速目をつけられてしまった彼は、遠藤が投げた紙をポケットにしまい、静かに話を聞く

入ってきていいぞ

担任がそう言うと、静まり返った教室の前からガラガラと音を出して入ってきた

「なんだかつまらなそうな学校ですわ」

ざわざわ

驚いた。もちろんこの女の言動もそうだが、それ以上に驚くべき光景がその女の後ろにある。そこには無表情でサングラスを掛けている男がいた。着こなし慣れている黒色のスーツは、少しも汚れがない

「あなたは誰ですか?」

クラスメイトの思いを代弁するように担任が女の後ろに佇む怪しい男に言い放つ。

一応、この学校の校長からは許可を得たのですが

思いもよらない言葉が出てきた

(俺はてっきり犯罪の言い訳を言うのだと思ってたんだが)

その男の横で両手を握りしめ 今にも爆発しそうな怒りを抑えてる男がいた。担任だ。

(あのクソ校長次会ったら、、、)

「 まあそんな些細なことどうでもいいじゃありませんか。 私の名前は 西園寺 奏(さいおんじ かなで) あの西園寺グループの娘ですわ」

(西園寺グループ?)

伊藤が考えていると後ろから遠藤が

「もしかして知らないのか?」ヒソヒソ

「遠藤 知ってるのか?」ヒソヒソ

「知ってるも何も 有名企業じゃないか。 知らないのは伊藤くらいだぞ」ヒソヒソ

しかし、いくら静かに話してようが西園寺の嬢ちゃんには関係無い

「おいそこ、人が喋ってるのに何話してんですか!これだから 一般庶民は。 そうね、 私の偉大さを分からせるために 何か一つ勝負をしましょう! 内容はあなたが考えてちょうだい」

と高圧的な態度をとっていた。そんな態度を見て伊藤は

(まじか、、、)

と思うことしか出来なかった

それから数秒経過した。ようやく理解出来た伊藤は、人間の適応能力の恐ろしさ思いながら遠藤に質問した

「トランプ持ってるか?」

まるで質問を知っていたかのようにトランプの箱を親指と人差し指で持ちながら

「昨日壊しちまってな、ちょうど朝買ったから持ってるよ」

流石と恐怖の感情を同時に抑えて

「使っていいか?」

「いいぜ」

「サンキュー。 じゃあ 大富豪でもやるか」

二人の会話を聞いた西園寺は

「大富豪って 3が一番弱く、2が 一番強いゲームかしら?」

自分の考えるゲームか質問した

「ああ、そうだ。なんだ 別のにするか?」

やや挑発気味に言うとそれに反抗するように

「 ばっかじゃないの。 この 西園寺 奏 一度言ったことを変える気はないわ。 それに生まれながらに 大富豪である私がそのようなゲームに負けるとでも」

確認の取れた彼は最後に

「オッケー」

と言いながらトランプを遠藤から借りた


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この作品の続きは

「#1 いかさま師vs転校生~大富豪編~」

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