killer passion

快魅琥珀

第1話 不意なる出会い

少し寒さもおさまってきた春。


桜も少し遅めに咲くようで、未だ道は味気ない。


そんな道を、同じ制服を着た、高校生達が歩いていく。まだ入学式は行われていないが、高校2年、3年は登校日である。


新学期のクラス分けに意識を取られた彼らは、浮き足立って学校に向かう。


そんな中、黒髪を揺らす切れ目な少女はため息をついた。


「もう、始まるの……?」


春休みが終わり、始まってしまった新学期を憂鬱に思う彼女は、重い足取りで通学路を往く。


そんな彼女──黒峰白亜くろみねはくあは、慣れてきた高校生活にうんざりした様子だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~


「お前何組!?俺6組!!」


「マジかー俺5組!!」


昇降口でそんなけたたましい会話を聞き流し、自分のクラスを確認した白亜は階段を上る。


クラスは最上階。そこは学年内で成績上位に位置する生徒達が暮らす、特進コースのクラスだ。


白亜は頭がいいのだ。なので、彼女は2組になった。


「白亜ちゃん」


「おはよう、瑞希みずき。同じクラスなのね」


教室に着くと、もう友達が先にいた。短い黒髪にタレ目の愛らしい彼女の名前は上水戸瑞希かみみとみずき


しばらく会話で盛り上がり、ぞろぞろと他のクラスメイトが教室にやってくる。


見た事ある者もない者もどうでもよく、白亜は瑞希とずっと話していた。


「お前ら、席に着けー」


いつの間にか時刻は8時半。ホームルームの時間だ。


「ホームルームの時間だぁ!!」


廊下をそんなふうに叫びながら走っていく輩がいる。下の階にドタバタ駆けていく彼らを白い目で白亜は見流した。


「いてっ、ごめんっ!!」


何かにぶつかった事がしたが、どうせすれ違う誰かにぶつかっただけだろう。そう考えて、白亜は気にしていなかった。


「さて、全員いるな」


担任がそう言うと、何人かの生徒が周りを見渡した。そして、まだ誰も座っていない廊下側の1番後ろの席を指さして、


「まだ来てない人がいます」


「あぁ、そいつは今から来るから大丈夫だ。」


その言葉の意味を、生徒達はすぐには理解出来なかった。


が、それは不意に開けられた扉から入ってきた生徒によって示される。


「呼んでから来いと言わなかったか?」


「変わりませんよ、入る時間なんて」


ぶっきらぼうに担任にそう言って、教室に入ってきた生徒を見て皆ギョッとした。


茶色い髪の毛、宝石のような輝きを放つ、大きな耳飾り、そして金色の指輪をしていたからだ。


「趣味悪」


思わず呟いた白亜の近くの人達が吹き出す。その言葉に、入ってきた男子生徒は一瞬白亜を見た。


視線があった時、男子生徒はすぐに目を逸らしたが、白亜には違和感があった。


「どこかで……?」


会ったような気がする。そんな事を考えている間に、男子生徒は黒板に自分の名前を綺麗な時で書いた。


縦に書かれたその名前を見て、ほとんどの生徒は何も思わなかっただろう。


だが、白亜だけは違った。


「……は?」


その名前を見て唖然とする白亜。そんな彼女にもう一度男子生徒は視線を向け、小さく嘆息したあとに、


天野快斗あまのかいとです。転校してきました。よろしくお願いします。」


と、簡潔に挨拶したのだった。


それは、白亜が知る限り、死んだはずの男だった。

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