第23話 伊吹さんの悩み
学校には慣れてきてある程度安心してきたが最近は別の悩みがある。
ココ最近の伊吹さんが非常に疲れている。
理由は何となく分かっているが俺が軽くジャブのように「最近どう?」と聞いても「特に何も」と返されてしまう。
俺は女の子の悩みも上手く聞き出せる事が出来ない。
だが今日こそは伊吹さんから少しでも話も聞こうと心に決めていた。
「ご飯出来たよ。運ぶの手伝って」
キッチンから伊吹さんに呼ばれ俺は「おっけー」と返事をしてキッチンに向かう。
キッチンに向かうと美味しそうな料理が出来上がっている。うん。ご飯食べてから伊吹さんに話を聞こう。
ご飯を食べ終わると俺は速攻で洗い物を終えて伊吹さんのいるリビングに戻る。
俺がリビングに戻ると伊吹さんはペンを持ち勉強をしている。
俺はソファーに座りながら伊吹に聞く。
「伊吹さん?最近疲れてない?」
俺が唐突にそう聞くと伊吹さんは少し笑いながら「いきなりどうしたの?熱でもある?」と言ってくる。
「いや熱なんて無いけど」
「じゃあ変な物でも食べたの?」
「いや?食べてないけど」
俺は心当たりが無くそう言うと、伊吹さんは小声で「あれ?おかしいな?」と呟く。
「...変な物入れたのか?」
「......」
伊吹さんは何も言わずに黙る。え?怖い怖い。
「え?本当に入れたの???」
「入れないわよ。変な物何て。冗談よ冗談」
「ビビらせやがって。てかそんなのどうでも良くて、最近の伊吹さん目に見えて疲れてない?」
俺がそう言うと「私そんなに顔に出てた?」と少し驚きながら伊吹さんは反応する。
「めっちゃ分かりやすい」
「あはは。そんな分かりやすいかな私」
伊吹さんはそう言って少し黙った後持っていたペンを置き、ソファーに深く座り込む。
そして少しの間をあけて伊吹さんが話始める。
「最近学校で色々な人声かけられてるじゃん。それで色々な人と話してたら少し疲れっちゃった」
伊吹さんは正直に今の気持ちを話す。
「私結構大人数が苦手だから。少し参っちゃったのかも」
俺は相槌をしながら伊吹さんの話を聞く。
「でも大丈夫。みんな良い人だし、もう少しでも落ち着くでしょ」
伊吹さんはそう言うけど顔が辛そうだ。
「それとも何かいい方法あるの?」
伊吹さんは俺の目を見て冗談めかして言ってくる。
俺は少しだけ考えていた事を伊吹に言う。
「良い方法かはやってるみるまで分からないけど、なくはない」
「え?本当?」
「今伊吹さん学校では菜々美とは友達だけど、それ以外だと、どこかグループみたいのに入ってるわけじゃないからみんな伊吹さんと仲良くなりたくて必死になってるんだよ」
「うん」
「だからどこかのグループ入っちゃえば諦めて伊吹さんが席から動けなくなるような事は少なくなると思う」
「でも私、いきなり言われてもグループ何て入れないよ」
伊吹さんならどこでも入れるだろ!と言いたくなる気持ちを抑えて俺は続ける
「それなら綾川と仲良くなれれば俺とか細川、桜井も仲良いし、菜々美とも綾川と仲良いから何とかなりそうではある。俺も手伝うから」
「うん。分かった」
次の日になっても伊吹さんの周りには多くの人が居る。
だが俺は昨日の菜々美に連絡を入れておいた。
あいつは無敵だから伊吹さんを囲んでいる人から引っ張り出してくるなんて余裕だ。
「陽菜子ちゃーん!こっち来て!!」
菜々美が教室全体に聞こえる大きな声で伊吹さんを連れ出す。
伊吹さんを連れてきた菜々美が俺たちがいる方に来る。
「何何?どうした?」
細川が伊吹さんを引っ張て来た菜々美に驚きながら聞く。
「え?陽菜子ちゃん大変そうだから」
「いや確かにそうだったけど。まぁ桜しかそんな荒技使えねえか」
伊吹さんは菜々美に引っ張り出されて驚いている。
「まぁ伊吹も大変そうだったしな。よくやった桜!」
「任せなさい!」
そして直ぐに綾川さんがこっちに来る。
「え!伊吹さんじゃん!何何?どういうメンツこれ!?」
ここまでテンションの高い綾川を見るのは初めてだ。
「綾川いきなりテンション無茶上がるじゃん」
俺がそう言うと綾川は「池田くんよりは伊吹さんの方がテンション上がるでしょ」などと言ってくる。
「何だと。俺も綾川より伊吹さんの方がテンション上がるわー」
「何それ失礼じゃない」
「こっちのセリフだ」
「伊吹さんはどっちの方がうれいし?」
綾川さんが伊吹さんにそう質問する。
「いきなり答えづらい質問するな...」
細川が綾川さんを止めようとするが伊吹さんは考えるポーズをしている。
「えっとね」
「考えるのかよ」
伊吹さんはわざとらしく首を横に曲げながら「綾川さんの方が嬉しいかな?」と言った。
綾川さんはその答えを聞いて、私の勝ち!みたいな視線を送ってくる。
「でも!池田くんも嬉しいよ?」
「伊吹さんお世辞は大丈夫大丈夫」
「綾川お前覚えとけよ」
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