第13話 外食

カラオケで予想以上に歌わせれて結構な疲労が溜まって帰宅した。

声がガラガラだ。

伊吹さんとは席が遠くて、歌についての感想は言われなかったが、上がったハードルくらいのクオリティではあったと思う。多分。


 

帰宅したのは17時前で、予約した店が19時なので1時間弱の余裕がある。

なので少しゴロゴロして体力回復しようとしていたら、すぐに時間が経過してしまった。

やべぇ。

  


俺は慌てて今日着る服を決める。

服装は出来るだけオシャレをしないといけないと思ったので、持っている服を何着も着て合わせる。

やっぱりシンプルがいいよな。

何着も着て迷った結果、ハイネック気味の黒のインナーにその上から白のカーディガン。

パンツは黒で少しだけオーバーサイズのトレンドを意識したものを選択した。

結果として白黒のモノトーンコーデになった。

そんな大きく失敗しないよな。

髪型は軽くワックスで整えて家を出る準備をした。



少し時間が経つと伊吹さんから連絡がきた。


『準備出来た?家出れる時教えて』

 

「行けるよー」


『じゃあ、家出る』


そう伊吹さんから返信が来ると、携帯をポケットにしまい家を出た。

少しだけドアの前で待つと伊吹さんの部屋の扉が開いた。

部屋から出てくる伊吹さんに、一瞬見とれそうになったが、何とか耐えて伊吹さんに話しかける。

 

「おつかれ。疲れてない?」


「うん。大丈夫だよ。てか池田くんの方が歌い疲れてないの?」

 

疲れてはいるけど、今から外でご飯を食べに行くので「いつもこんなもんだから大丈夫」と言ってエレベーターの方へ向かう。


伊吹さんのコーデは、カラーレスベストにストレートパンツの合わせコーデだった。

ベストとパンツはヌードカラー。

クリーム色のような感じだ。

ベストの下には白色のインナーで綺麗目の大人コーデ。制服やいつも家に来る時の部屋着とは違う雰囲気で新鮮味がある。



エレベーターで下に降りると駅まで向かう。

3月下旬だがもう空は薄暗くなっている。


「池田くんって結構服のセンスあるんだ」

 

「何?無いとでも思ってた?」


「いやーそんなことないけど」


「まぁセンスなんて皆無で、ほぼネットのマネキン参考にしてるだけだけど。てか伊吹さんは服装似合ってるね」

 

「ありがとう。少しは悩んであげたんたがらね」



そんな会話をしながら、薄暗い住宅街を歩き、電車に乗って繁華街に出ると、より一層の視線を感じる。

毎日のように会ってるから少しだけ特別感が無くなっていたが、伊吹さんってモデルレベルの美少女だった。

 

 


 

こんな視線を毎回浴びるなんて大変だなと、他人事のような感想を持ちながら予約した店に向かう。

駅を出て15分くらい歩いたところにその店はあった。

あまり大きくなくこじんまりとした店だが、オシャレなオーラが出ているので、入るのに躊躇してしまいそうにもなるかもしれない。

実際初めて来た時は引き返そうか迷ったが、勇気を振り絞り中に入って料理を食べると、あまりの美味しさに結構な頻度で通うようになった店である。

なので今回絶対安心出来ると言う理由で伊吹さんを連れてきた。



 

店の中に入ると白を基調とした内装で、オシャレな人が多く、心地よいBGMもかかっている


「池田くんこんないい感じのお店知ってたの?」


「ここ俺のおすすめ店なんだよ。マジで美味しいから」



定員さんに案内されて席に座る。

少しソワソワしている感じの伊吹さんを見ていると、俺が初めて此処に来た時見たいだなと、少し緊張感が和らぐ。



少し待つと定員さんがお水とメニュー表を持ってきた。

この店は洋食を中心としたお店で多くのメニューがある。

密かに俺は全制覇しようとしているがあまりにも長い道のりである。



「メニューの量多いわね。何にしようかな♪」



伊吹さんのテンションが高く、楽しそうでホットする。

やっぱり可愛いよな。伊吹さん。

軽くメイクもしているようで正面の伊吹さんに見とれてしまう。

そして結構悩んで伊吹さんがメニューを決めた。

 

「私はこれにしようかな」


伊吹さんはメニュー表に指をさしながら言う。

伊吹さんが頼むのはハンバーグプレートだ。


「池田くんは決まった?」

 

「うーんと、俺はオムライスにしようかな」


「おー。私もオムライスにしようかなとも思ってた」


俺が定員さんに声を掛けて注文を伝える。

注文を伝えるとキッチンの方へ向かって行った。


「てか池田くんの歌上手すぎだよ」


定員さんが離れると唐突に言ってくる。


「昨日散々ハードル上げてくれたから本気で歌ったんだよ」


「私の予想の5倍くらい上手で聴き入っちゃった」


「それはどうも」

 

「勉強も歌くらい出来たら苦労しないんだけどなー」

  

「それは人間には得意、不得意というものがございまして」


「言い訳ですよー。でも途中から池田くんのワンマンショー見たいだったのに、クオリティ下がらなくて本当に凄いと思ったけど…喉とか大丈夫?」


「問題無いと言いたいけど、明日とか声死んでるかもしれん」 


「馬鹿ね。やっぱり歌いすぎよ」


「すぐ治るよ」


「なら良いけど」


 

今日の振り返りのような会話をしていると先に俺のオムライスが届く。

綺麗な卵がチキンライスの上に乗ってあり真ん中のラインをナイフで切ると中のトロトロの卵が出てくるとやつだ。


 

「美味しそう。こんなのどうやって作るの」


「伊吹さんも流石に作れないんだ」


「無理無理。挑戦しても多分空気が卵に入ってこんな綺麗にならない。しかも表面を綺麗にして中を全て半熟なんて火の加減が難しいよ」

 

やっぱりプロって凄いんだなと思うと伊吹さんのハンバーグプレートが届いた。

伊吹さんのハンバーグプレートは、何回か食べたことあるが、ハンバーグから溢れんばかりの肉汁が出できて、もう本当に美味しい。



「「いただきます」」



いつもより少し小さい声で言って食べ始めた。

俺が卵を切ってトロトロの部分を出して、卵とチキンライスを合わせて食べる。

美味すぎる。

初めてこの店のオムライスを食べたが、卵のトロトロ感、そしてバターと塩コショウで味付けされたチキンライスと卵とケチャップが絶妙なバランスで、味覚をこれでもかってくらい刺激される。

 

「美味しい」


口からつい出てしまったようなシンプルな感想が出てる伊吹さん。

伊吹さんは、こんなに美味しいハンバーグ食べたこと無いみたいな顔をしている。


「良かった。俺のおすすめの店だったから口に合って」


「これは学ぶ事が多くありそうね」


「何か俺と視点が違う」


「ねぇー私もオムライス食べてみたい」


「え?別にいいけど?はい」


俺がオムライスをスプーンに乗せて渡す。

だが伊吹さんは口の前のスプーンに手をつけない。


「食べないのか」


俺がそう急かすと「貴方ねぇ」と言い少しだけ顔を赤らめてパクっと食べる。


「……美味しい。何この卵の感覚」


赤らめた顔も、オムライスを食べた瞬間元に戻って、オムライスに夢中になっている。

何だったんだよ。

その後俺もハンバーグを1口貰い、次はハンバーグにようかなと全メニュー制覇が遠のくのであった。





2人とも食べ終わりコーヒーを飲んで店を出ると、外は暗く肌寒くなっていた。



「本当に美味しいかった。ご馳走様」


「いつものお礼だから俺もありがとうな」


「でも池田くんがこんなお店知ってるなんて、他にも良いお店ないの?」


「いや、そんな外でご飯食べてなかったから後2つくらいしか」


「じゃあ今度教えて」


「また機会があればな」


そう言って駅まで歩く。、

マンションに着くともう21時になろうとしていた。



「じゃあまた明日」


「おやすみ」



2人は自分たちの部屋に帰って行った。







 

 

 

 



 

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