自分が創作を志すならば
ここからの話は本来は19世紀以降の勉強をする際に書くべきだが、そんなのいつになるか分からないので、一旦、ここに書き残しておく。
前項で書いた日本人に染みついた社会優先的な気質は、2000年の時を越えて昭和後期の資本主義の発達に貢献した。
資本主義とは、資本によって強弱が決まる、資本家のためのシステムである。資本家にとって重要なのは、勤勉で権利意識の低い労働者の確保である。
かつては戦争などで獲得した奴隷を力による支配で強制的に隷属させていたのだが、欧州が中世を経て多数の国に分裂した事、奴隷の補充元が減少した事により、完全な奴隷化が不可能になった。
中世の荘園制は農奴という奴隷に近い存在がいたが、貨幣の発達と容易に新たな奴隷を補充する事ができない世界へと変わったゆえに、その縛りは緩く、次第に自由民の割合が増加し、荘園制は崩壊していく。(ちなみに筆者としては、この制度を維持するためには、農奴に一夫多妻を推奨し、農奴の繁殖を加速すれば、制度の維持も可能であったのではないかと考えてはいる)
こうして荘園制という奴隷制度の名残りは崩壊し、貴族の力が弱まった。その後、フランス革命や産業革命などを経験しながら、資本家と労働者の時代に入る。
同時期のアメリカ独立は明らかに「資本家の為の国」を作ろうとした思惑が見てとれる。今までの欧州は「貴族による貴族の為の国」であり、言ってしまえば、王とはそのシステムの一つに過ぎず、民衆は貴族の為の奴隷でしかなかった。
しかし、貴族達が没落し、資本家の時代に変わっていく中、自分の未来を欧州に重ねない資本家も出てくる。それがユダヤ系大富豪たちである。
彼らにとって欧州とは一時的な所在地に過ぎない。ユダ王国滅亡以後、自らの国がない彼らは欧州に結構な数いたものの、キリスト教徒たちから差別される存在だった。彼らにしてみれば、イギリスやフランスがどうなろうと別に構わない。彼らの意識としては、個々人の生まれた場所は関係なく、神が与えたもうた地こそが故郷であり、常に移民である自分達は欧州でなくとも他の国で生きていけばいいのだ。
そして、イギリスの植民地の一つであったアメリカで独立への機運が高まると、彼らはそこに目をつけた。貴族が支配する血筋最優先の古い国ではなく、金が支配する資本最優先の新たな国を新大陸に作るために金を出したのである。
ユダヤ陰謀論とか言われるものがあるが、これは正確には「ユダヤによるユダヤのための陰謀」ではなく、「大金持ちによる大金持ちのための陰謀」であり、その大金持ちがユダヤ人という属性を持っている者だった、という話だと見ている。もっとも、彼がユダヤ人という欧州では弱い立場だったからこそ、新大陸に新たな国を求めたわけであるし、そういった特殊な立場の富豪がいなければ、アメリカ独立は成らなかっただろう。
戦争に必要なものは第一に金である。武田信玄は人、物、金と言っていたようだが、封建制という血筋によって固定化された社会が崩壊して以降は、金があれば人材を確保できる。(物、つまり資源は国土に左右されるので、これは金さえあればというものではない)
金があれば、兵隊と食糧を確保する事ができ、これが戦争の勝敗を左右する。
ナポレオン戦争、アメリカ独立戦争といったあたりにユダヤ系大富豪が関わっていたのは有名な話だが、日本の明治維新にも関わっている。異教徒として差別され、生きづらいヨーロッパではなく、他の地域に国を作る事で自分達の居場所を確保しようとしていたのがこの時代であり、「卑しい商人」から「新時代の貴族」へとジョブチェンジしようとしていたのである。
逆に利権を失わないように独立を妨害をする事もある。日本の金融、保険、海洋資源開発の妨害は有名で、未だに日本は独立国としての尊厳を取り戻せていないわけだが、石油利権に直結する中東でも中東戦争や「アラブの春」の妨害によって、石油利権の圧倒的優位を失わないようにしている。
(こういった一部のユダヤ人を悪だと糾弾するつもりはない。彼らとしても生存権を懸けた戦いの一環だろう。どちらが悪いかといえば、負ける側が悪い。ただし、そのやり方は正当化されるものではない)
脱線しまくったので話を戻す。北アフリカ、南ヨーロッパで生まれ、発展した西洋式社会システム、つまり奴隷制度は、支配者vs奴隷という構図であった。これは古代ローマの崩壊を経てもしばらくは同様のものが続いていたものの、やがて資本家vs労働者という構図に変わってゆく。
日本においても弥生時代後半には奴隷と同義の存在がおり、奴婢と呼ばれるようになっていくのだが、日本の土地、縄文以前から植え付けられた組織や社会を優先するしがちな性質によって、西洋ほど奴隷に対して非人道的な扱いをする事は少なかった。(少なかっただけであって、もちろんあった。ただし、日本の場合は当人に残虐であるという認識がある場合が多いが、西洋におけるそれはその感覚がない事が多い)
資本主義、上述したように「資本家の、資本家のためのシステム」は、突き詰めて言えば、労働者からいかに搾取するか、というものである。
人口増加期や新分野の開拓期以外の時期が終わると、いずれ過当競争期に向かっていく。競争に勝ち抜くためには、他社に真似のできない独自技術を持つか、でなければ他社と同程度の商品を他社より安く提供するほかない。
つまり経営の効率化が求められるわけであるが、これは端的に言えば、いかに安い労働力を確保するかが重要になる。労働者の給料を上げれば経営は圧迫され、労働者から搾取するほど会社の利益へと繋がる。アメリカのように戦争を起こし続ける事で活性化する以外にはこのジレンマから逃れるすべはないのではないだろうか。
日本は明治維新以後、自由資本主義を採り入れた。同時に日本列島の外にも市場や資源開発地を求め、開拓期に突入した。この頃から昭和に向かって日本は成長を続け、日本の資本主義が加速していく。
転機となるのが大東亜戦争である。大東亜戦争は中国大陸における米との利害対立が契機としてあるが、それだけではなく、欧州列強が作り上げた支配体制との対立でもあった。
欧州の植民地と化していたアジア各地を取り込み、大東亜共栄圏を樹立し、欧米と覇を競うというのが、当時の大日本帝国の思惑であるが、これを良しとしない欧米との対決は当然、避けられない。
結果、敗戦し、日本が成長を続けるための新しい市場の確保などが困難になった。
しかし、皮肉な事に敗戦によって日本には復興需要があった事、朝鮮戦争特需などのおかげで、戦後しばらくは経済成長ができる状況ではあった。
日本人の持っていた社会、組織への貢献意識が作用したのはこの時である。長時間の労働力を安く提供する労働者が多数生まれ、これが高度経済成長と呼ばれる急激な発展を生んだ。
また、労働者だけでなく、資本家の側も労働者を奴隷化するのではなく、事業の参加者だとみなし、その待遇をできるだけ改善しようとしていた結果、世界的にも非常にまれな社会主義的資本主義が形成された。これは資本家、労働者どちらもが資本主義の本質を理解しておらず、日本的な価値感を持ったまま採り入れた結果といえよう。
しかし、これが上手く行ったのは経済成長の余地が列島内に残されていたからである。
国土開発が終わり、多くの分野が成熟期に入ると、日本社会全体の成長が止まる。彼らは今まで同様成長しようと、労働力を安く抑える事に尽力する。日本人の強すぎる貢献意識は、デフレスパイラルを招き、その結果、とんでもなく強固なデフレ経済に陥り、30年以上に及ぶ日本の停滞を招くことになった。
陰謀論的な要素を付加するならば、アメリカの影響というのはもちろんある。戦争で勝った側の選択肢は二択である。完全に滅亡させるか、属国化するか。アメリカは皇室を廃止して滅亡させるという選択肢を採らず、属国化することにした。
というか、人口数万~数十万程度の小国ばかりだった古代ならいざ知らず、現代においては滅亡させるという事は不可能なので、属国化戦略が基本になる。
まずは軍を解体する。治安維持と国土防衛の名目で日本国内に米軍を置き、反乱が起こせない状況にする。岸信介と取引して自民党を創立し、讀賣新聞をはじめとするメディアを抑え、地検特捜部という政治犯罪専門捜査組織を設立して政治のコントロールを図る。そうしておいて、外務省、大蔵省といった主要省庁を掌握しておくことで、属国化が完了する。
高度成長した日本に脅威を感じたアメリカが日本より有利な貿易条件を結ぶ、輸入赤字解消のために円高に振れさせたなど、よく言われる。
では、日本の現状はアメリカが悪いのか?
筆者の考えでは違う。日本の停滞の真の原因はアメリカではなく、日本人の側にある。いかに無惨に敗戦したとはいえ、既に数十年が経過している。未だに自主憲法の制定すらできない現状はだらしがないとしか言いようがない。
もちろん、一部の者達は戦おうとし、潰されてきた。それは田中角栄であったり、中川昭一であったり、安倍晋三であった。安倍晋三に関してはまだ事実が判明していないが、ロシアと橋渡しができ、機に乗じて独立をしようと狙っている人間など邪魔でしかない。あれが単なる逆恨み殺人なのか、それとも裏で蠢いた何かがあるのかは知らないが、その後の岸田文雄の媚米ぶりを見れば、疑惑を持たざるを得ない。
これを陰謀論だと言うかどうかは人の自由だが、陰謀などというものは古来からいくらでもあり、この世にそんなものは無いと考えるのは単なるお人よしの間抜けである。ある事柄が陰謀によるものであるかどうかというのは、後世にならないと分からない。可能性が高いか低いか、で自分なりに判断するしかない。
日本の自立主義を唱える政治家は過去にもいた。しかし、彼らは最大の武器であるはずの数の力を使おうとはせず、あくまでも個人レベルの戦いに終始し、敗北した。多数対個人の戦いというのは、いわばテロのようなものであり、簡単に鎮圧される。田中や安倍は金を武器にしようともしたが、この戦略も失敗である。
金を武器にする場合は、自らの財布の金を武器に変えるのではなく、他人の財布にある金を武器にしなくてはならない。そういう発想ができない世代だったからかもしれないが、彼らはこれを分かっていなかった。
支配者が真に恐れるものは、民衆の結束である。だからこそ、それをさせないための分断統治であり、日本や韓国が陥っているのはこれである。
ただし、米の属国化戦略は巧妙ではあったが、完璧だったとは思わない。トルーマンの3S政策(スポーツ、スクリーン、セックスによる衆愚化戦略)は弱体化を狙った策であったものの、逆に日本はこれらを強みに変えている部分もある。
日本人はスポーツによって愛国心を強めているし、アニメによって価値観を共有している。セックスに関しては罠に嵌っているかもしれない。殆どの日本人って依存症になるほどセックスしてないんじゃないだろうかとも思うが、よく分からない。ただし、巨大化した風俗産業は少子化の一因になっているので、手を付けるべき問題ではあると思う。
日本人に政治的無力感を植え付けているのは、官僚主義とそれが貴族主義に変貌しつつある現状だと思っている。つまり、アメリカではなく、日本人によるものである。
日本の官僚制は政治家の無能化、行政の硬直化を生み出す元凶となっている。ロバート・マートンの提唱した「官僚制の逆機能」が実に効率よく発揮されており、さらには強い学歴主義、学閥主義によって、官僚の貴族化を生み出している。
また、同時に世襲政治、世襲による事業承継によって日本社会は貴族化が進んでおり、近年は親ガチャなどと揶揄されるような硬直化した社会になっている。
創作を志すならば、我々の社会が抱えているこれらの問題、現状を寓話として取り込まなければならない。『灼竜国のケヤク』では、このあたりを取り込もうとしては挫折し……、ということを何度も繰り返したので、ここに書く事で戒めとする。
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